IRS(米国内国歳入庁)のスキャンダルその後(続く・・・)

IRS(米国内国歳入庁)のスキャンダルその後

 

.スキャンダルと呼ばれた理由と問題の背景

ご存じの人も多いと思いますが、昨年の5月にCNNやニューヨーク・タイムズ等が連日報道したことが、オバマ政権のスキャンダルと騒がれたことも否定できないでしょう。ポリティカルアポインティ―としての長官を、オバマ大統領が怒って更迭したと報じられましたが、先のIRSの長官、ダグラス·シュルマンは、任期満了の201211月に退任し、代理長官に就任していたスティーブン·ミラー前次長がティーパーティー·グループの扱いについて謝罪した後の5月に辞任することを、大統領が認めたにすぎないのです。

IRSは、ティパーティまたはペイトリオット(愛国者)の名称を利用して税控除を申請したグループに対して、他のグループより多くの時間をかけ、様々な質問をするなどの不愉快な対応をしたと言われています。15日の『ニューヨーク.タイムス』によると、IRSは、数年前、税控除申請を受け付ける176のグループのリストを公表していたという。その過程には様々な角度からの検査や質問などが条件であり、主にオハイオ州のシンシナティの事務所で行われていて、ティパーティ運動が台頭した2010年から開始したようである。その背景には、20101月「 Citizen United v. Federal Election Commission」(市民連合対連邦選挙委員会)の裁判で最高裁は、憲法第一条の言論の自由に照らし、企業、組合も人であるため、議会が選挙資金献金の限度を定めることは違憲であるとする判定を下しました。この判決後、501C−4)コードに属する社会福祉団体の税控除申請は急激に増えたため、莫大な量の申請書に対処しなくてはならなくなったという。なぜ、この類いの申請が増えたのか?それは、501C−4)に属するグループの申請には政治献金者の氏名を公開する必要がないからである。そのIRS事務所で、職員は税控除申請を提出したティパーティのグループに対して、将来の寄付者名など不必要な質問も含めて、他の組織のグループより多くの質問を浴びせたという。『ロイター通信』によると、申請のプロセスが選挙後まで遅れたケースもあれば、干渉的な質問が多かったとの苦情もあり、税控除が受けられる状況になるまで3年間待たされたケースもあったとティパーティの複数のリーダーが語っていたというのです。

このような報告に、保守派の議員、特にティパーティ議員と呼ばれる複数の共和党議員は穏やかではない。関与したIRSの職員の正確な人数を含め、虚偽の声明があったかどうか、また自由権の侵害はなかったかどうかを追求する用意があると言われている。更には、オバマ氏を弾劾したい共和党議員らは、この情報が昨年(2012年)11月の大統領選挙前にオバマ氏に通達されていたかどうかも明らかにしたかったようです。もし、通達されていたのであれば、一昨年は選挙年であったため、意図的に表面化させなかったのかどうかを知りたいと意気込んでいたようでした。ミラー代理長官の辞任とともに、2013年の5月以降、IRS有給休暇に置かれていた非課税団体の元ディレクターのロイス·ラーナー女史を含む少なくとも4人の幹部を、解雇しています。特に、ロイス・ラ―ナーさんは何度も議会の委員会の公開の聴聞を受け、最終的には、自己に不利な証言は拒否できるとの憲法上の権利に基づいて、証言を拒否していました。

 

2.委員会の公聴会での争点

 昨年517日の『ワシントン.ポスト』によると、ミラー代理長官は、政治的な動機があったかどうかに関する質問で、彼自身は、政治的任命は受けていないため、政治的グループの税控除申請を許可するべきかどうかを判断するための適切な方法について、議会からの明確な指導を受けることには利点があるはずだと述べ、超党派の立場であることを明白にした。また、IRSは政治的には中道であるはずだとし、関与した職員は政治的な意図に基づいて対処したものではないと信じると述べた。更に、アメリカ国民や議会を欺くようなことはしていないと主張しました。

オバマ政権は、2010年からIRSが政治団体の税控除申請の監察を行っていることを知っていたかという点については、財務省監察官のラッセル.ジョージが証言しました。17日の『ニューヨーク.タイム』によると、ジョージは政治的活動を展開している組織の税控除申請を監察していることを古参の財務省の弁護士に201264日に語り、その後すぐ、副財務長官ニール.ウォーリンに語ったと告白しました。オバマ政権の一部の当局者は大統領選挙期間中、このことには気付いていたと初めて公表した。また、ミラー長官も複数の共和党議員に、保守的なグループを標的にしていることがIRS以外のオバマ政権当局者に漏洩した可能性があるかどうかを聞かれたとき、「それは法律違反だ」と反応し、「それが起これば、私はショックを受けていた」と述べたという。

NYタイムス紙は、IRSが、特に保守的はグループを選定し余分な監察を実施していたことをオバマ政権の一部の当局者は知っていたが、大統領選挙のキャンペーン中は明らかにしなかったことを暗示するようなジョージの証言は、共和党議員に火をつける可能性があるとし、2012年の大統領選挙で共和党の副大統領候補であったポール.ライアンは「それは大きな問題を発生させる」とコメントしていると報告しています。

ご承知の通り、米国議会の下院では共和党の方が多数党で、共和党の若手は、反オバマの社会運動ともなった、保守派「テイパーテイ」の強力な支援を受けています。そのため、共和党としては、あげた手を下すこともできず、昨年5月には、ホルダー米司法長官は14日、保守系政治団体「ティーパーティー(茶会党)」などを狙い撃ちにした内国歳入庁(IRS)の審査について、司法省が犯罪捜査を開始したと述べていたが、2014 1 14 15:23 JSTに記事にその後の動きがわかりました。

 米法執行当局者らによると、免税を求める保守系団体の税務審査を内国歳入庁(IRS)が厳格化していたことについて、連邦捜査局(FBI)は刑事訴追を予定していない。これにより、政治的な動機によるスキャンダルとされたこの問題をめぐる論議がかえって激化する公算が大きいとの報道です。スキャンダルの発覚以降、共和党はオバマ政権が自らの官庁の不祥事を適切に捜査できるのかどうか疑念を表明していた。下院監視・政府改革委員会の委員長を務めるダレル・アイサ議員(共和、カリフォルニア州)は先週、本件を扱う司法省の検察担当者の公平性が疑われると異議を唱(とな)えた。この検察担当者がオバマ陣営に献金を行っていたためだという。

 これに対し民主党は、IRS職員側に犯罪行為がなかったとの見方を維持してきた。IRSには保守系団体を不当に扱ったり弱体化させたりする意図はなかったと主張し、その理由としてリベラル系の団体も同じような審査を受けていたことを指摘してきた。

同当局者らによれば、捜査当局はこの件で、刑法違反に相当する「敵狩り」ないし一種の政治的バイアスの証拠を見つけられなかった。その代わり、免税申請に関するルールが理解されておらず、審査の規則施行の管理が間違っていた証拠が出てきたという。捜査に詳しい当局者によると、捜査は続いており、今後何カ月も続く可能性があるものの、結果として刑事訴追が行われる可能性は一段と低くなっている。ただし、予期しない証拠が見つかり、当局の考えが変われば、それも変わる可能性があると同当局者は警告しています。

 

3.オバマ大統領の対応とその後

 昨年5月の政治的騒動では、大統領は バラク·オバマ大統領はIRSの代理長官、スティーブン·ミラーを更迭しましたが、それ以来、オバマ大統領はIRSの執行行為への継続的な共和党の集中砲火を、「インチキな」スキャンダルと呼んでいるそうです。そのため、オバマ大統領は、2013年の8月に、新しい長官に、百戦錬磨のビル·クリントン大統領の下で行政管理予算局の元副ディレクターであり、2000年のコンピュータシステムを変換するための準備をリードしたジョン•コスキネンを指名し、13年の12月に任命されたのでした。

 本年6月、ジョン·コスキネン、内国歳入庁長官は、ティーパーティーの政治団体に対する税務機関の精査に熱くなっている下院の税制の歳入委員会の公聴会で、消滅している電子メールのやり取りで議員と衝突しました。長官の証言に対し、「ここで聞いていて、あなたの証言は信じられません。誰もあなたを信じていません。」ウィスコンシン州の共和党代表ポール·D·ライアンは強力に批判し、歳入庁が免税を求めている保守的な政治団体を虐待していると多くの共和党員の感情を代弁しました。コスキネン長官は、コンピュータのクラッシュについての調査官への通知の遅れ、および課税当局が財務省に週間前に通知しているという事実は、隠ぺい工作を示していたとする委員会でライアン氏らによる追求に反論しました。また、コスキネン長官は、歳入庁の技術スタッフとロイスラーナー女史が彼女のメッセージを復元しようと努めているやりとり、中央の元IRSの公式の2011年からのメール交換を証拠として提出しました。ラーナーさんのコンピュータがクラッシュし、彼女の失われたe-メールを復活するための努力をすることを約束しました。

その間、現場責任者の中心人物のロイスラーナー女史の議会侮辱罪については、米下院で、ティーパーティーグループ精査中の彼女の役割に関する質問に答えることを拒否したために、今年の58日、議会侮辱罪で確保することが、賛成多数で可決され、潜在的訴追のためのワシトンの国の弁護士に委ねられることになります。また、IRSを調査する特別検察官の任命を司法長官エリックホルダーに求めることも同日可決されました。

 なお、201475付けニューヨークタイムズ編集委員会の記事によれば、『内国歳入庁で起こっているスキャンダルはあるが、それはロイスラーナーまたは彼女の行方不明のメールとは何の関係もありません下院の共和党は、彼らはオバマ政権内で広範囲に政治腐敗であるとイメージを当てるものをラーナーさんと結びつけるための彼らの騒々しい十字軍をあきらめていないが、彼らが証明しているすべてが、IRSは他のほとんどの政府機関よりは、そのコンピュータのファイルのバックアップでよくはないということぐらいです。いや、本当のスキャンダルは、共和党が事実上誰も気がつかないうちに、IRSを不自由にしたことである。2010年の幅広いティーパーティー主導の歳出削減以降、当局の予算はインフレを考慮に入れた後でも14%カットされ、急激な職員の減少、税法の貧弱な執行及び納税者サービスの低下をもたらしています。・・・』

   といったような、ティ―パーティ中心のあまりにも政治的な圧力が、本来政治への中立を旨としている税務当局に向けられ、税務執行の本来の役割の邪魔をしているのではとの新聞論調が増えてきている様ですが、嫌われ者の代表であるIRSの真の味方は少ないんでしょうね。

 非課税団体の基準をもっと明確にした新規則をIRSが作り、施行したいようなのですが、恐らく下院の反対により、次の中間選挙が終わるまでは、現行のままで行かざるを得ないようです。アメリカの税務行政の、中立、公正、効率等の古き良き伝統に対する、政治的な圧力が強くなっているのを見るにつけ、政治家の大臣を長とする財務省の直轄下ではなく、政治による圧力がかからないように、外局として存在しているわが国税庁の伝統だけは是非維持してほしいものだと、このトピックスを通じてつくづく感じた次第です。

なお、この騒動のその後の動きについては、引き続きフォロ―することとしておりますので、(続く・・・)にしておきます。

 

 

 

 

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