ギリシャの財政再建物語(続く)

(3月11日掲載分)

 

3月9日付ニューヨーク•タイムズ紙によれば、 ギリシャは資金不足分を埋めるために税スパイとして観光客を使用することを提案した模様です。

 

ギリシャへの金融のライフラインを延長することでの欧州の先月の合意にもかかわらず、アテネは急速に現金が不足しています。

そのため、疑わしい脱税者をスパイする市民や観光客を募集する提案を含む、不足分を埋めるために新しい、過激な方法を見つけるためにあわただしく行動しています。

アレクシス・ツィプラス首相は、ギリシャがデフォルトしないことを債権者に安心させることを試みています。 しかし、ギリシャが如何にお金を必要としているかのしるしとして、彼の政府は、すぐに援助を開始することを期待して、月曜日にブリュッセルの欧州財務相へ救命いかだの対策を提示することを計画しています。

ギリシャの財務大臣、ヤニスVaroufakisが、イェルーンDijsselbloem、ユーロ圏財務相のユーログループのトップに先週送信した提案に伴う手紙によると、それは、“音声と映像のが組み込まれた、いくつかの基本的なトレーニングの後に、税務当局に味方する役人としての姿勢をとる” – 観光客、学生、主婦、その他のノンプロ検査官を – “臨時の”税のスパイに志願させる提案を含んでいます。

 

 €760億ユーロのギリシャの税金滞納で、その提案は、税金逃れの者たちを怖がらせ、「新しい納税道義の文化を生み出すことを意図していますと手紙は述べていました。

デフォルトを回避するために、IMFに対しギリシャが負っている15.3億ユーロを含む今月の請求書への支払い方法を3月20日までに見つけました。その金額についての最初の支払、約3億ユーロは、金曜日に行われました。

しかし今月、ギリシャはさらに、財務省債券の償還で46億ユーロと、政府の給与と年金債務で少なくとも10億ユーロ払う必要があります。

 

事態は必ずしもその後に容易になることはありません。4月から8月の間に、ギリシャが財務省証券の償還に追加の102億ユーロの資金調達やIMFへの31.7億ユーロ、欧州中央銀行に65億ユーロ返済する必要があります。

それらの負担を考えると、何人かの欧州の当局者は、ギリシャが2010年以来の第三の救済が必要な場合があるかもしれないと言ってます。

先週、スペインの財務大臣は、欧州の債権者が300億から500ユーロの新たなギリシャのライフラインを議論したと述べた。 アテネ、ブリュッセルの当局者は交渉が進行中であったことを否定したが、多くのアナリストは、それは、ギリシャが新たな救済策を必要とするまでの、時間の問題であると考えています。

しかし、今のところ、ギリシャは独自の支払う方法を見つけ出す選択肢を持っていませんと、ディミトリスMardas、ギリシャの副財務相は、インタビューで語った。

 「私たちは私たちの債務を支払うことになるでしょう。」とミスターMardasは述べました。

                                                      小休止

 

 

 

 

 

 

ギリシャの財政再建物語 (続く)

 

はじめに

 ギリシャの財政破たんが明るみに出た2009年に戻っておさらいしてみましょう。その救済のため、2010年春以来、IMFEUが、二度にわたって2260億ユーロもの支援をしています。そのうえ2012年には、ギリシャが外国の銀行などから受けていた融資の半分以上を返済免除にしています。その総額は1000億ユーロに達したようです。この措置で、ドイツでは、ギリシャの国債を持ちすぎていた銀行が倒産し、その救済にドイツ国民の税金が使われたのです。しかし、支援を受けるための緊縮財政により、ギリシャの経済は停滞し、国民生活はとりわけ弱者にとって厳しいものとなっていたようです。そのため、国民による政権交代の要求は、半分あきらめの中での、投票行動を余儀なくされているようです。2009年の中道右派から中道左派への政権交代し、最新の選挙では、急進左派連合(SYRIZA)が躍進しました。それは緊縮財政下の4年間で困窮してきた国民の生活だ。その、4年間で平均賃金は40%も下降し、09年に9%だった失業率は25%に。若年層の失業率は約50%だ。多岐に渡る増税が実施され、医療予算や年金など社会保障は削減された。長期間の失業によるうつ病発症者や自殺者も増加。貧困層は拡大し、栄養失調の児童も増え、幼児死亡率も上昇している。生活に困窮する国民が、超富裕層で特権階級意識の強いNDPASOKの政治家より、左派の急進左派連合(SYRIZA)や右派の「黄金の夜明け」といった野党は、救済協定を再交渉したり、場合によっては単一通貨を捨てるという公約の方にかけたようなのです。

そこで、ギリシャでのここ5年間の動きを、ネットの公開記事等によりたどってみましたので、物語などのタイトルをつけるのは失礼なのですが、あまり形式ばらない内容となるよう努めましたので、ユーロ圏のGDP2%程度しか占めない小国ギリシャが、ユーロの価値を揺るがしていることや、その国の借金の大きさにおいては、同国をはるかに上回っているわが国の、国民、選挙民、納税者として、「他山の石」ならぬ「他国の苦労」を学ぶ必要があるのかもしれません。「他人事」としてでなく・・・。

 

2010年~2011年)

200910月、中道右派の新民主主義党(NDから中道左派の全ギリシャ社会主義運動(PASOKへの政権交代で、長年の財政赤字が発覚したギリシャは2010423日、欧州連合(EU)と国際通貨基金(IMF)に対して、ついに金融支援を正式要請した。20105月からPASOKのパパンドレウ政権(当時)の下で、国際通貨基金(IMF)、欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)からの融資と引き換えの緊縮財政が開始した。

 一方、はるかかなたの我が国の2009年の12月時点での鳩山内閣の2010年度予算では、財政赤字のGDP費は、9.3%で、ギリシャ議会が24日に可決した同国の2010年度予算(対象期間は暦年と一致)における財政赤字の名目GDP9.1%と、ほぼ同じ数字である。との報道が思い出される。さらに当時の報道によると、このギリシャの予算は、歳入が前年度比+9%で、歳出(除く債務返済費用)が同▲3.8%。2009年度に名目GDP12.7%に膨らんだ財政赤字を、通貨統合参加国の縛りである3%以内へと削減していくための第一歩として、赤字を80億ユーロ削減する内容でしたが、公的部門の賃金カットといった施策には踏み込まず、大型の不動産課税や公務員の福利厚生削減、脱税取り締まりの強化といった、持続性に欠ける財源確保策が中心になった。このため、格付け会社は予算の可決成立前から、相次いでギリシャ国債の格付け引き下げられました。フィッチは128日にBBB+に1ノッチ引き下げ(アウトルックはネガティブ)。16日にはSPBBB+に引き下げた(クレジットウォッチを継続)。さらに、ムーディーズは22日、A2へと1ノッチ引き下げた(アウトルックはネガティブ)のでした。

何よりも重要なのは、そのギリシャ支援策実行が、欧州通貨統合がはらんでいる制度的欠陥、すなわち金融政策はECBの下で単一だが、財政政策は各国の主権を尊重する形になっているという統合の不十分さ・弱点を解決するものではなく、単に当面の危機を乗り切るための方策にすぎないということでした。金融支援側でのユーロ圏で最大の経済規模を有するドイツのメルケル政権は、国内世論で反対意見が多数を占めるギリシャ支援策の実行を、何とか5月中旬以降に先延ばししたかったものと推測される。それは、連立与党が敗北すれば州代表で構成される連邦参議院(上院)の過半数を失うことになる重要な政治イベント、ノルトライン・ウェストファーレン州議会選が59日に控えていたからでした。

メルケル独首相は、今回ギリシャに対する支援に動くにあたって、「通貨ユーロの信認を守ることは、ドイツ政府だけでなく、すべてのユーロ加盟国にとって最も重要なことだ」と、その理由を説明した。しかし皮肉なことに、そのドイツがギリシャ問題で国内事情を優先してきたことも手伝って、市場はユーロに対する信認を大きく低下させているのである。

ギリシャの財政危機が、最大450億ユーロの金融支援策実行によって、本当に沈静に向かうかどうかについては、市場は、いったん収まるのではということにさえ、懐疑的であるように見ていました。

 当時のFT誌紙の記事では、現実味が増してきたギリシャのユーロ圏離脱の見出しで、ユーロ圏のGDP2%程度しか占めない小国ギリシャが単一通貨を大きく揺るがしている〔AFPBB News〕 ここに来て、ギリシャの離脱は決して考えられない話ではなくなっている。 シティグループのチーフエコノミストで、ユーロプロジェクトの熱心な支持者でもあるウィレム・ブイター氏は先週発表した共同執筆リポートの中で、ギリシャが向こう1年半以内にユーロ圏から離脱する可能性は50%にまで高まったと述べている。と報じていました。執筆者たちは「そう判断される主な理由は、ギリシャが救済プログラムの条件を順守しなくてもさらに支援を続けようとする(ユーロ圏の)債権者の意欲が著しく低下したと考えられるためだ」と付け加えている。

金融支援の条件であった緊縮財政の結果とはいえ、ギリシャは前進を遂げ、同国のプライマリーバランス(利払い前の基礎的財政収支)の赤字は、2009年のGDP10.6%から、

2011年には、深刻な不況にもかかわらず、政府債務の利払い前の経常赤字はまだGDP4.6%に上っていた。景気後退の規模を考えると、これはかなり大幅な赤字削減であり、ギリシャ政府は今や、債務を借り換え、元利返済を賄うためだけに借り入れを行えばいい段階に近づいていました。しかし、これでも十分ではありません。政府債務にかかる対外金利支払いを無視したとしても、ギリシャは経常赤字を埋めるために、かなりの規模の外貨流入が必要になるのです。

 

20112012

ギリシャは、20123月に、民間投資家の自発的な債権放棄と、これに応じない投資家に対しての集団行動条項発動による強制的な債務カットを併用した事実上のデフォルトを余儀なくされた。しかしながら、その後も同国の経済・財政運営は計画を大幅に下回り、春先に合意したばかりの債務返済計画の実現可能性が、早々に疑問視されるという深刻な事態に陥った。ギリシャ国民は、5月と6月に続けて実施された総選挙において、「厳しい財政緊縮継続・ユーロ圏残留」か、「緊縮策の棚上げ、再デフォルト、ユーロ圏離脱」か、というギリギリの二者択一を迫られた結果、民意はかろうじて前者を選んだのである。

他方、ギリシャに対する債権者であるユーロ圏他国、ECB、IMFという「トロイカ」側は、ギリシャ国民のこのような判断を受け、同国経済をそのままユーロ圏内にとどめたうえで、経済再生・財政再建を実現することが本当に可能であるのかどうか、201212月のEU首脳会議までの約半年間という長い時間をかけて、熟考することとなった。

換言すれば、ユーロ圏各国は、経済・財政状況が著しく悪化し、通貨圏内にとどまることが困難視される国、という限界的な事例が現実のものとなるなかで、①当該国にどれほどの財政緊縮努力を求めるか、②通貨圏内の他国はどこまで当該国を支援するか、③当該国は引き続き通貨圏内にとどまったうえで、中長期的な経済再生と安定的な財政運営を回復することが可能か、④ユーロ圏全体としても、当該国を引き続き通貨圏内にとどめながら、同時に経済・財政統合のさらなる強化を図ることが可能か、という点でのギリギリの決断を迫られたのが2012年であったとみることができよう。

 

そして、2012年の年末に、トロイカ側と当事者であるギリシャがようやく出した答えは、次のようなものでした。

①ギリシャは123月合意ベースよりも、13年の財政緊縮幅をさらに上積みするなど、前例がないほどの厳しい歳出カットや増税・増収(徴税率の向上)の強化を約束する。

②ユーロ圏他国側は、ギリシャの現実を目の当たりにして、各国の世論がやや軟化したこともあり、13年以降、同国へのさらなる支援を検討する。

③ギリシャは引き続きユーロ圏内にとどまりつつ、1212月に、事実上の再デフォルト(1)を秩序立って実施することにより、債務負担を軽減し、経済再生・財政再建を図る。

④(ユーロ圏首脳が明言していることではないが)ユーロ圏の統合は、当面、財政資金を要しない「銀行同盟 (2)の強化を中心に進める。ギリシャが残留する以上、ユーロ圏全体としての政治・財政統合は、少なくとも当面の間、棚上げする。

というものでした。

 ギリシャに対するユーロ圏等からの支援融資は、同国にギリギリの線まで財政緊縮努力を強いるため、半年以上の間先延ばしされていたが、この決定を受けた12月、ようやく実行された。また、123月以降、ギリシャ国債をオペの適格担保から除外していたECBも同じく12月、適格性の回復を認め、ギリシャの民間銀行は、ようやく、無担保・高利の特融(「緊急流動性支援」)ではなく、有担保オペにより、ユーロ圏他国の民間銀行と同様、ECBから低利で資金調達することが可能となったのである。

(1) ギリシャ政府は201212月、ESM(欧州安定メカニズム*:出資元はユーロ圏)やIMF等からの支援112.9億ユーロを得て、3月に旧国債との交換で発行したばかりのギリシャ新国債の元本319億ユーロ相当分を、額面を大幅に下回る市場価格(平均価格は額面の33.8%)で投資家から買い戻し、債務残高をほぼ予定通り大幅に削減することに成功した。

*(欧州の債務危機への対応として、ユーロ圏が設立した恒久的な金融支援機関、欧州安定メカニズム(European Stability Mechanism; ESM)

参考;ESM加盟国の資本金負担割合

オーストリア

ベルギー

キプロス

エストニア

フィンランド

フランス

ドイツ

ギリシャ

アイルランド

負担割合

2.783

3.477

0.196

0.186

1.797

20.386

27.146

2.817

1.592

資本金

194.8

243.4

13.7

13.0

125.8

1,427.0

1,900.2

197.2

111.4

うち払込金

22.2

27.7

1.6

1.5

14.3

163.1

217.2

22.5

12.7

 

イタリア

ルクセンブルク

マルタ

オランダ

ポルトガル

スロバキア

スロベニア

スペイン

合計

負担割合

17.914

0.250

0.073

5.717

2.509

0.824

0.428

11.904

100

資本金

1,253.9

17.5

5.1

400.2

175.6

57.7

29.9

833.2

7,000

うち払込金

143.3

2.0

0.6

45.7

20.0

6.6

3.4

95.2

800

1)負担割合は%、資本金と払込金は億ユーロ

2)負担割合はESM Keyと呼ばれ、ECB contribution keyに基づいて算出。ECB contribution keyはEU全体に 対する各国の人口とGDPの割合によって算出される(人口とGDPのウエイトは同じ)

 

  (2)「銀行同盟」とは、欧州債務危機が、各国の政府自身の信用と民間銀行の信用が連鎖的に悪化して深刻化していった2011年末~2012年夏の時期にかけて、この両者間の「負の連鎖」を断ち切るための方策として、切迫した必要に迫られて考え出された政治的なビジョン。具体的には、ユーロ圏ないしEUとしての、金融面でのフレームワークをより統合させようとするもので、①単一の金融監督メカニズム(SSM)、②単一の破たん処理メカニズム、③単一の預金保険制度の3つの側面から構成される。このうち①のSSMを確立することは、ESMから各国の民間銀行に直接、資本注入を行い得るようにするうえでの前提条件ともされている。

 

(2013年~2014年)

2013年の展開を読むポイントは、

(1)市場の緊迫感が一服したということです。

トロイカ側が2012年中、このような決定に至るまでの間は、ギリシャの国際収支上の資金ショートやデフォルトを回避し、周辺諸国の資金調達環境が悪化することを防ぐために、もっぱらECBが、異例のオペによって時間稼ぎを行ってきた。

 201112月と122月の二度にわたり、期間3年という異例の長期間オペであるLTROを実施したほか(図表1)、ギリシャをはじめ、自国の国債を適格担保として使えない国々の民間銀行向けには、いわば「最後の貸し手」機能を発揮して、緊急流動性支援(図表1の「ユーロ圏金融機関向けその他債権」に含まれる)も発動するに至っている。

ECBによるこうした異例の資金供給は、例えばギリシャの民間銀行向けの場合、それが万が一焦げ付いた場合の潜在的な負担は、ギリシャ中銀やギリシャ政府のみが負うのにとどまらず、欧州中央銀行制度の決済システムTARGET2を通じて、ユーロ圏他国、とりわけ健全国の中銀、ひいてはそれらの政府が負担しているのが現実である。これは、ユーロ圏加盟各国が、単一通貨ユーロ、そして単一の中央銀行制度を共有していることから当然ともいえよう。

足許にかけての状況は、ユーロ圏各国等が最終的に上述のような判断に至ったことから、12年夏をピークに、収支幅の悪化傾向にいったん歯止めがかかり、小康状態となっている。

(2)ユーロ圏が直面する3つの課題

かといって、13年の欧州債務問題の行方について楽観は禁物であろう。ユーロ圏各国は13年に、ギリシャ等の重債務国側のみならず、ドイツをはじめとする健全国側も含めて、以下のような3つの課題に取り組まなければならない。取り組みの方向性そのものは12年末に定まったものの、実現に向けては各国の最終的な民意の確認など、大きなハードルが残されている。

課題1:財政再建と成長(緊縮に伴う国民生活の痛み)のバランスをどうとるか

    ギリシャの問題は、1212月の首脳会議による決定で一件落着では決してない。13年は厳しい財政緊縮策の実行段階に移る。同国のストゥルナラス財務相自らが12月のFinancial Times紙によるインタビュー()で明言しているように、ギリシャのユーロ離脱の可能性はゼロになったわけではなく、仮に同国民が13年、厳しい緊縮策に耐えられなくなった場合には、問題が再燃する可能性がある。

    また、22425日に総選挙が予定されているイタリアも同様の問題を抱える。モンティ暫定政権が過去1年余りの間、断行してきた財政緊縮・経済構造改革路線を継続できるかどうか、同国の政治情勢は予断を許さない。万が一、過去1年間の改革路線が後退するような事態に至れば、イタリア、ひいてはユーロ圏全体にとって、11年秋のような危機の再来となる可能性もゼロではなかろう。

() 20121220日付Financial Times記事(“Minister warns 2013 is make or breakfor Greece in the euro”)。

課題2:健全国側は、重債務国支援のためのさらなる支援の負担に耐えられるか

 ギリシャはユーロ圏に残留することとなったものの、123月のデフォルト、12月の国債買戻しによってもなお、同国が抱える債務残高は過大であると考えられている。これをさらに削減するには、ドイツ等の健全国を中心とするユーロ圏他国側のさらなる支援が不可欠とみられる。ドイツでは13910月頃に総選挙を控えており、同国の今後のユーロ圏へのかかわり方について、度重なる問題国への支援に不満も根強いドイツ国民が、いかなる判断を示すかが試金石となろう。

課題3:「銀行同盟」の実現に向け、前進できるか

「銀行同盟」の強化は、ドラギECB総裁が就任後提唱したもので、その後、「各国の財政負担を重くすることなく、経済統合を強化できる手段」、「金融危機とソブリン危機の負の連鎖反応を断ち切ることができる手段」として、ユーロ圏各国の首脳間で支持されるに至ったものである。

    スペインが典型例であるが、財政運営そのものよりも、自国の金融システムに大きな問題を抱える国の危機対応策として注目される。12月の首脳会議においては、単一の金融監督メカニズム(SSM)の大枠については合意されたものの、肝心の預金保険制度をどうするのか、ギリシャをはじめとする重債務国の銀行を同列に扱えるのか、といった点等は今後の課題として残されている。

    このように、欧州債務問題の13年の展開を考えれば、足許は小康状態となっているものの、今後の主な課題について、それぞれ高いハードルが待ち構えており、いわば「危機と背中合わせ」の状態が継続するものとみられる。13年中、統合強化のいかなる枠組みや方策が講じられるのか、そしてそれが期待通りの結果につながるのか、引き続き事態を注意深く見守っていく必要があろう。

 

   ギリシャのプライマリーバランス(利払い前の基礎的財政収支)がじわじわと黒字に近づいているため、政府は以前より強いカードを持っていると感じている。ギリシャ議会は128日、欧州連合(EU)の規則で求められている通りにIMFや欧州委員会に見せることなく、2014年の予算案を可決した。ギリシャのアントニス・サマラス首相が力を誇示する必要性を感じていることは、理解できる。サマラス首相率いる連立政権は議会の過半数を握っているが、造反者が追加緊縮策に賛成票を投じるのを拒んだ後、今ではギリギリの過半数になっている。一方、左派の急進左派連合(SYRIZA)や右派の「黄金の夜明け」といった野党は、救済協定を再交渉したり、場合によっては単一通貨を捨てるという公約のおかげで、勢力を伸ばしていた。

 

 今回の左派の急進左派連合(SYRIZA)の躍進の最大の理由、それは緊縮財政下の4年間で困窮してきた国民の生活だ。その、4年間で平均賃金は40%も下降し、09年に9%だった失業率は25%に。若年層の失業率は約50%だ。多岐に渡る増税が実施され、医療予算や年金など社会保障は削減された。長期間の失業によるうつ病発症者や自殺者も増加。貧困層は拡大し、栄養失調の児童も増え、幼児死亡率も上昇している。生活に困窮する国民が、超富裕層で特権階級意識の強いNDPASOKの政治家より、彼に期待するのは共感できる部分もある。

 126日、右派だが反緊縮や富裕層からの増税を掲げる「独立ギリシャ人」党(13議席獲得)との連立が決定し、合わせて162議席となった。同日、YRIZAのアレクシス・チプラス党首が首相に就任した。27日には組閣が行われ、アテネ大学経済学教授のヤニス・ヴァルファキス氏が財務相に就任。独立ギリシャ人党首のカメノス氏は国防相に就任した。

 

欧州連合(EU)主導の緊縮策に反発し、債務削減を求めるギリシャのチプラス首相は2日、キプロスを皮切りに就任後初となる欧州訪問を開始した。反緊縮の方針に理解を求めて、ギリシャの味方を増やすことを狙う。チプラス氏は、新聞各紙のインタビューなどでは、冷静に緊縮の緩和、債務再編を訴えている。EUとの協議に困難が伴うことは明らかだが、国外からもSYRIZAの主張に耳を傾けるべきだという意見もある。その間に、フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏は総選挙翌日の1月26日にラジオ出演し、「ギリシャに課された過度な緊縮財政は悲惨な状況を招いた」と語り、SYRIZAへの支持を表明した。

 

EUは今、新しい作戦を練り直す必要に迫られている。交渉が暗礁に乗り上げれば、金融市場に不安が広がる。それは、あっという間にEUを超えて世界へ広がっていくだろう。EUはどうにかして、ユーロという通貨の信用を守らなければならない。

しかし更に深刻な問題は、ギリシャだけでなく、フランスやイタリア、スペインといった南欧の赤字国が同じ問題を抱えていることだ。しかも、彼らは本当は財政規律よりも、金融緩和をしたがっている。彼らが挙げてギリシャの見方に付くなら、ユーロ移行での冥利を一番多く授かったドイツでさえやる気をなくすだろう。

 

   欧州は、ドイツを筆頭に緊縮の徹底を求める「北」と、緊縮への反発が強い「南」に分かれがち。自らも低成長に苦しむフランスは「苦 難を乗り越える手助けをしたい」(サパン氏)と改めて表明した。閣内には、支払期限の見直しの協議は容認するとの声も出ている。ただし、ギリシャが求める債務の削減には否定的だ。ユーロ圏で反緊縮を掲げる政党が政権を獲得したのはギリシャが初めてだ。スペインで反緊縮を掲げて勢力を伸ばしている政党「PODEMOS」は、SYRIZAの選挙応援のためにギリシャにかけつけていた。フランスでは昨年11月に30都市で約10万人に達する反緊縮デモが起きている。今年はスペインやポルトガル、フィンランド、英国でも総選挙が行われる。ギリシャ新政権の動向は、他の欧州各国にも影響していくことは間違いないだろう。

しばらくは同国の動きから目が離せません。

                                                  小休止

  (2月25日掲載分)  

   ギリシャ政府とEUは、220日の財務相会合で、今の金融支援の4カ月延長で合意し、ギリシャ側が財政構造改革の具体案を示し、EU側が承認することが条件とされていました。EUは24日、ユーロ圏の財務相らによる電話協議で、ギリシャ政府が提出した金融支援延長の前提となる財政構造改革案承認することで合意しました。これを受け、ドイツやエストニアなど議会の承認が必要な国は、4か月の支援延長に向けた手続きに入ります。

ギリシャが提出した改革案のポイントは、以下のものと報じられています。

  ① 汚職や脱税、密輸対策の強化

  ② 滞納税の徴収強化

  ③ 国営企業の民営化計画を推進

  ④ 年金制度会改革と歳出の聖域なき見直し

  ⑤ 最低賃金引き上げはEUなどと協議

 ユーロ圏の財務相会合の24日の声明によると、「ギリシャ当局に対して、より発展し、広範囲な改革リストの検討を求める。」とされた模様です。

ギリシャのバルファキス財務相が送付した全7ページの書簡には、改革プログラムの全体的な方針の概説と、税制改革と政府歳出に関する方針の詳細が一部示された模様。だが、改革の実施にかかわる費用や効果、経済効果についての推定値は一切盛り込まれていないようで、改革プログラムの金銭的な詳細は、4月末に予定されている債権団との協議で打ち出されることとなる。

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