マイナンバー導入物語(続く・・・)
2015年5月31日
マイナンバー導入物語(続く・・・)
目次 Ⅰ.導入の経緯 はじめに、国民の抵抗、導入された理由、今後のスケヂュール、結び Ⅱ.制度の広報(関係省庁別) Ⅲ.よくある質問
参考資料: 1.わが国税制の現状と課題-21世紀に向けた国民の参加と選択-答 申 2.諸外国における税務面で利用されている番号制度の概要
Ⅳ.続く
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Ⅰ.導入の経緯
はじめに
2015年10月より、マイナンバー制度(番号制度)が導入され、国民一人一人にマイナンバーが通知され、施行されていくことになります。マイナンバー制度の導入により私たちの生活はどう変わるのでしょうか。また、企業は想像以上に大変な対策を行う必要があります。マイナンバー制度に関するあれこれ、吾輩ができるだけ分かりやすくまとめてみました。マイナンバーをつけられる庶民の観点からの対応、利活用上の観点から書いてみました。できるだけ多くの皆さんが、クールに前向きにマイナンバーを考えられることを期待します。
導入がなぜこんなに遅れたの?
構想の始まりは半世紀以上前にさかのぼります。
通称「国民総背番号制」として、1968年に佐藤栄作内閣が導入をめざしました。当初の目的は、個人の所得を正確に把握し、特に高所得者からきっちりと税を集めることでした。しかし、締め付けの強化という発想には反対論が根強く実現しませんでした。
グリーンカード制度での失敗
80年代には、「マル優」と称される300万円以下の非課税貯蓄制度があり、この制度を悪用して利子・配当課税を逃れるための「仮名口座」が横行しました。この課税逃れを防ぐため、「少額貯蓄等利用者カード(グリーンカード)」制度を盛り込んだ「所得税法改正案」は1980年3月にいったん成立しましたが、施行される段になって実施反対論が噴出、1985年には議員立法で廃案になってしまいました。
住民基本台帳での抵抗
2002年からは住民の情報を自治体間で共有する住民基本台帳ネットワークが稼働しましたが、プライバシー保護の観点で問題
視され十分に活用されているとはいえません。税から切り離された制度であってさえ、市民の抵抗は大きかったのです。
このように、日本の歴史上、庶民の国家(行政、お上)への不信感が、根底にあり、すべてを把握されたくないとの気持ちが強いのを反映して、市民の国民背番号への抵抗感には根強いものがあったのでした。たとえお金持ちでなくても、貧乏であることさえ知られたくない気持ち。また行政のいわゆるセクショナリズム、自分の役所にかかわる個人情報を他の役所に提供したくないことからの抵抗も背景にあったようなので、この市民、行政双方からの抵抗が、我が国の国民背番号制の導入を遅くした背景のようでした。
マイナンバー制度が受け入れられた最大の理由
少子高齢化社会の進展、社会保障の充実が急務、消費税率の引き上げ等による、社会保障制度と税制の一体改革が急務となりました。言いかえれば、『税を取り立てるため』から『市民へのよりよいサービスを提供するため』へと制度の趣旨が変わったことが、制度が成立した理由と考えられます。マイナンバーは、民主党が政権を握っていた2012年に制度を設計し、法案(その2参照)が提出されたが、解散で廃案となり、政権交代後の自民党なども賛成して成立した法律(その1参照)に基づくものです。菅政権がつけた愛称「マイナンバー」を使い続け、法案そのものも一部の修正にとどまりました。
個人情報を把握されない代わりに便利な公共サービスを受けることを放棄することが正しいのか、便利さと怖さは裏表の関係です。制度への評価は、そのまま政府への信頼の度合いを示します。行政が信じられない社会であり続けることは、結局は行政の非効率と好ましくない結果をもたらすことに国民が気付き始めたと、政治が先取りした結果であったと言ってよいでしょう。もっとわかり易く言えば、「世界で最先端の少子高齢化社会に突入している我が国において、健全な福祉国家を作るためには、『社会保障給付に必要な『国民の正確な所得把握』 のために、番号の導入が必要になったのです。
政府への信頼が増せば番号の利用範囲も広がっていくはずです。米国の社会保障番号は銀行で口座を開くのにも必要ですし、スウェーデンの住民登録番号に至っては商業利用も認められていて、クレジットカードで買い物をするときにも番号の入ったIDカードの提示を求められるそうです。何となく抵抗してきた国民に対して、その疑いを打ち砕くマイナンバー制度を政治が導入してくれたのです。やっと他の先進国並みにです。この制度を成功に導くのは、我々国民であり、成功させないことによる不利益は、最終的に自分たちにかかってくることを認識しなければなりません。
よく番号制度のメリット、デイメリットが報じられています。吾輩に言わせれば、その答えは極めて明快です。正直で、正しい行動をしている人にとっては、メリットが目立ち、そうでない人にはデメリットが目立つと言ってよいでしょう。敢えて全員にとってのデイメリットとなる可能性を挙げれば、この制度が、乱用や我々の権利の制限に利用されることでしょう。しかしこのようなデイメリットが無い制度なんて想像することは困難です。制御できないデイメリットでない限り、必ず監視、予防できるはずです。しかもそれは制度の運用の中に盛り込まれているのです。罰則規定等がその一例です。
マイナンバーをめぐるスケジュール
1. 2015年10月・・・マイナンバーの個別通知が『通知カード』で始まる
・平成27年10月から、住民票を有する国民の皆様一人一人に12桁のマイナンバー(個人番号)が通知されます。また、マイナンバーは中長期在留者や特別永住者などの外国人の方にも通知されます。
2. 2016年1月・・・・マイナンバーの利用開始(当面は社会保障、税、防災の3分野のみ)
・ 行政コストが削減できるほか、個人の所得状況や社会保障の受給実態を正確に把握しやすくなり、公平で効率的な社会保障給付につながる
・ 災害時要援護者リストの作成/更新や災害時の本人確認等に活用ができます。また、生活再建への効果的な支援も行えるようになると期待できます
3. 2017年1月・・・・情報ネットワークシステムの運用開始(自治体との連携は7月から)
4. 同上 ・・・・・マイ・ポータルの運用開始
5. 2018年~19年・・民間事業者を含めた利用範囲の拡大の例
・ 運転免許証、健康保険証、キャッスカード、クレジットカード等の機能
・ 引っ越し等での住所変更等の自動化
・ 医療サービス等での情報の共有化
(注) 民間利用については、法律施行後3年をめどに、その段階での法律の施行状況等をみながら、検討を加えたうえで必要がある場合には、所要の措置を講じることにしている。
結び
社会保障と税の共通番号(マイナンバー)は、 国や自治体が社会保障と税の情報を効率よく管理するため、一人ひとりに割り当てる12桁の番号。番号を記載したマイナンバーカードが配布され、児童手当の申請などの行政手続きがカードの提示のみで済むようになる。ネット上に番号の付いた個人の専用ページ「マイナポータル」ができ、税や保険料の記録の確認や、自治体からの通知を受け取る「電子私書箱」も利用できるようになる。
役所の窓口で番号を伝えれば他の身分証明書の提示は不要になる。個人がインターネット上で自分の番号の付いた専用ページ「マイナポータル」を開き、保険料や税の収納記録を確認できる。
第2段階として、18年から銀行口座を持つ人に番号を任意で登録してもらう方針も決まっている。これは通常国会で関連法案を審議中だ。
政府が今回まとめるのは第3段階の改革案だ。18年にも戸籍などの関連法を改正して順次、実施する。
証券会社が顧客の税務処理を簡単にできるよう個人が証券会社に自分の番号を通知することは決まっている。新たに投資家自身の税務手続きも簡単にする。個人が証券会社からの配当や売却益の支払通知書をネット上で受け取って自分の「マイナポータル」に取り込み、ネットで税務申告できるようにする。今は個人が通知書などをもとに申告書を書き、税務署に提出しなければならない。
戸籍や旅券、自動車登録などの手続きにもマイナンバーを使えるようにする。番号で本人確認できるため年金受給や相続の時の必要書類が減り、手続きも簡単になる。旅券の申請も現在は住民票や戸籍謄本を提出しなくてはならないが、番号を使えば書類提出は不要になる。
海外にいる日本人もマイナンバーを使えるようにする。現在は番号を住民票に基づいて割り振っているため、海外では利用できなくなる。住民票のない海外居住者にも番号を割り振り、在留届け出などの手続きに使えるようにする。
マイナンバーカードの利用範囲を行政手続き以外にも広げる。カードと健康保険証を兼用したり、たばこの自動販売機で年齢確認に使えたりするようにする。将来は医師や弁護士などの資格の確認などに使うことも検討する。
自民党ではさらなる活用策を検討している。しかしながら、マイナンバーを使いこなすのは、最終的には番号の所有者である我々国民であることを肝に銘じておきましょう。
参考;
(1) マイナンバ―法案「その1」
第183回 通常国会
行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案(番号法案) |
H25.03.01 |
社会保障改革担当室 |
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行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案 |
H25.03.01 |
社会保障改革担当室 |
*番号法案概要:http://www.cas.go.jp/jp/houan/130301bangou/gaiyou.pdf
*整備法案:概要http://www.cas.go.jp/jp/houan/130301bangou/seibi_gaiyou.pdf
(2) マイナンバー法案「その2」
第180回 通常国会
*マイナンバー法案の概要:http://www.cas.go.jp/jp/houan/120214number/gaiyou.pdf
(3) 社会保障改革の推進について
平成22年12月14日
閣議決定
社会保障改革については、以下に掲げる基本方針に沿って行うものとする。
ⅰ.社会保障改革に係る基本方針
(省略)
ⅱ.社会保障・税に関わる番号制度について
○社会保障・税に関わる番号制度については、幅広く国民運動を展開し、国民にとって利便性の高い社会が実現できるように、国民の理解を得ながら推進することが重要である。
○このための基本的方向については、社会保障・税に関わる番号制度に関する実務検討会「中間整理」において示されており、今後、来年1月を目途に基本方針をとりまとめ、さらに国民的な議論を経て、来秋以降、可能な限り早期に関連法案を国会に提出できるよう取り組むものとする。
Ⅱ.マイナンバー(社会保障・税番号)制度の広報について
広報・普及啓発媒体について(平成27年4月時点)
(1)マイナンバーホームページ
内閣府(内閣官房)として、マイナンバー(社会保障・税番号)制度のホームページを開設し、広報・普及啓発媒体やよくある質問(FAQ)などを掲載しています。また、関係省庁の特設サイトへのリンクも掲載しています。
さらに、平成27年3月から、政府広報オンラインとYahoo! JAPAN PR企画のマイナンバー特集ページが開設されました。
◆マイナンバーホームページ:http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/
(「マイナンバー」で検索してください。)
◆関係省庁のマイナンバー特設サイト
・特定個人情報保護委員会:http://www.ppc.go.jp
・総務省
地方税:http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/56538.html
個人番号を活用した今後の行政サービスのあり方に関する研究会:
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/kenkyu/mynumber/index.html
・国税庁(マイナンバー特設サイト)
http://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/mynumberinfo/index.htm
・厚生労働省(マイナンバー特設サイト)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000062603.html
◆政府広報オンラインマイナンバー特集ページ
(「政府広報」で検索してください。)
http://www.gov-online.go.jp/tokusyu/mynumber/index.html
◆Yahoo! JAPAN PR企画マイナンバー特集ページ
http://promotion.yahoo.co.jp/mynumber/
(2)マイナンバー公式ツイッター
マイナンバー公式ツイッターで情報発信を行っており、内閣府(内閣官房)の情報に加え、関係省庁のホームページの更新情報の紹介などを行っています。
◆公式twitter:https://twitter.com/MyNumber_PR
(3)マイナンバーコールセンター
内閣府(内閣官房)において、平成26年10月1日よりコールセンターの運営を開始しています。国民や事業者からのご質問に回答するとともに、必要に応じ、関係省庁につなぐことにより、ワンストップでの対応を行っています。
◆電話番号:日本語0570-20-0178(マイナンバー)
※一部IP電話等でつながらない場合は050-3816-9405まで
外国語0570-20-0291(英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語)
◆受付時間:平日9時30分~17時30分(土日祝日・年末年始除く)
(4)マイナンバー啓発用ポスター
マイナンバー啓発用ポスターを平成26年10月に、地方公共団体、税務署、年金事務所、ハローワーク等に配布しました。マイナンバーホームページにも、ポスターの電子データを掲載していますので、印刷してチラシ等にご活用ください。
◆ポスター:http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/kouhou.html
(5)民間事業者向け資料
関係省庁のホームページで、以下のような資料が公表されています。(随時、最新情報に更新される予定)
ア内閣府(内閣官房)
・事業者向け動画(制度概要、民間事業者の対応)
http://www.gov-online.go.jp/tokusyu/mynumber/ad/
・事業者向けマイナンバー広報資料(説明文付)
・FAQ(よくある質問)
・民間団体等の対応事例等
イ特定個人情報保護委員会
・民間事業者向けガイドライン・Q&A・ガイドライン説明資料等
http://www.ppc.go.jp/legal/policy/
ウ総務省
・地方税関係資料
エ国税庁
・国税関係資料
・法人番号関係資料
オ厚生労働省
・医療保険者向け資料
・民間事業者向け資料(社会保障関係)
(6)政府広報
第1弾の集中的な広報として、平成27年3月に、テレビCM(3月第2週から3週間)、新聞記事下広告(3/15(日)、16(月))、新聞折込広告(3/29(日))、ラジオ、雑誌、WEB、動画、トレインチャンネル、デジタルサイネージ等、多様なメディアを活用した広報を実施しました。政府広報オンラインで各種広報物を始め、様々な情報を発信しています。
http://www.gov-online.go.jp/tokusyu/mynumber/index.html
(7)外国人向け広報
内閣官房の特設ホームページ内で、英語、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語、ポルトガル語、スペイン語の制度概要資料やFAQ(よくある質問)の情報提供を始めています。(トップページの右側に各国語へのリンクを設置)
コールセンターも平成27年4月から外国語は5か国語で対応しています。
(8)障がい者向け広報
視覚障がい者向けの広報媒体の作成・配布、聴覚障がい者向けの相談対応
(9)今後の予定
マイナンバーの周知・広報に活用可能な媒体等はホームページで広く情報提供するほか、随時お知らせする予定です。
2マイナンバー広報用ロゴマークの使用について
内閣府(内閣官房)では、マイナンバーの広報・啓発を促すためのロゴマーク(マイナちゃん)を作成しました。
本ロゴマークにつきましては、地方公共団体や個人番号利用事務実施者である健康保険組合、当室から広報の協力依頼文書を発出した団体等は、使用許可を経ずにマイナンバーの広報に使用することが可能です。なお、民間企業・団体等については、当室の利用承認を受けていただいた上で使用していただいております。
ホームページや広報紙、独自のチラシ等の作成に当たり、積極的にご活用ください。
なお、民間企業等によるロゴマークの使用の詳細については、マイナンバーホームページに掲載している「マイナンバーロゴマーク使用規約」及び「マイナンバーロゴマーク利用ガイドライン」をご確認ください。
*ロゴマークの詳細:http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/logo.html
3マイナンバーホームページのバナー画像について
マイナンバーホームページのリンク用バナー画像をホームページで公開しています。
ホームページ右上の「リンク設定について」をご覧いただき、積極的にご活用ください。
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/link/
Ⅲ.よくある質問(FAQ)
よくある質問(FAQ)目次
※Q&Aは随時追加していきます。
(1)総論
Q1-1 マイナンバー(個人番号)とは、どのようなものですか?
Q1-2 自分のマイナンバー(個人番号)が何番なのかを確認するにはどうしたらいいですか?
Q1-3 メリットはなんですか?
Q1-4 マイナンバー(個人番号)は、誰がどのような場面で使うのですか?
Q1-5 マイナンバー(個人番号)を様々な場面で利用することになりますが、マイナンバーは誰にでも提供していいものですか?
Q1-6 マイナンバー(個人番号)が導入されると添付書類が不要になると言われていますが、住民票の写しや戸籍の添付が全て不要になるのですか?
Q1-8 地方公共団体情報システム機構とは、どのような法人ですか?
(2)個人番号に関する質問
Q2-1 マイナンバー(個人番号)はいつどのように通知され、いつから使うのですか?
Q2-2 住民票を有していない人にもマイナンバー(個人番号)は指定されますか?
Q2-3 マイナンバー(個人番号)は何桁ですか?また、マイナンバーにはアルファベットも含まれますか?
Q2-4 マイナンバー(個人番号)は希望すれば自由に変更することができますか?
Q2-5 国外へ転出した後に日本に再入国した場合でも、国外転出前と同じマイナンバーを引き続き利用できるのですか。それとも新しいマイナンバーが指定されるのですか?
Q2-6 マイナンバー(個人番号)が通知される平成27年10月以降に国外に滞在し、日本国内に住民票がない場合、マイナンバーはいつどのように指定されるのですか?
Q2-7 番号法に規定されている「個人番号利用事務実施者」や「個人番号関係事務実施者」とは何ですか?
(3)カードに関する質問
Q3-1 個人番号カードは、いつから交付を受けられるのですか?
Q3-2 個人番号カードは、何に使えるのですか? 通知カードとどう違うのですか。
Q3-3 行政手続ではなく、レンタル店やスポーツクラブに入会する場合などにも個人番号カードを身分証明書として使って良いのですか?
Q3-4 個人番号カードに搭載される公的個人認証サービスの電子証明書とは何ですか?
Q3-5 個人番号カードのICチップから情報が筒抜けになってしまいませんか?
Q3-7 番号制度が導入されると、住基カードはどうなるのですか?
Q3-8 個人番号カードに有効期限はありますか?
Q3-9 個人番号カードの交付を受ける際の本人確認はどのように行うのですか?
Q3-10 通知カードや個人番号カードの記載内容に変更があったときは、どうすればよいですか?
(4)民間事業者における取扱いに関する質問
○4-1 総論
Q4-1-1 民間事業者もマイナンバー(個人番号)を取り扱うのですか?
Q4-1-2 マイナンバー(個人番号)を記載する必要のある帳票(調書・届出書類)は、いつ頃決まりますか?
Q4-1-3 マイナンバー(個人番号)を使って、従業員や顧客の情報を管理することはできますか?
Q4-1-4 マイナンバー(個人番号)を取り扱う業務の委託や再委託はできますか?
Q4-1-5 小規模な事業者でもマイナンバーを取り扱い、特定個人情報の保護措置を講じなければならないのですか?
○4-2 マイナンバーの取得
Q4-2-1 従業員などのマイナンバー(個人番号)は、いつまでに取得する必要がありますか?
Q4-2-2 従業員や金融機関の顧客などからマイナンバー(個人番号)を取得する際は、どのような手続きが必要ですか?
Q4-2-3 従業員などのマイナンバー(個人番号)を取得する際は、利用目的を明示しなければならないのですか。番号法のどこに規定されていますか?
Q4-2-5 従業員や金融機関の顧客などがマイナンバー(個人番号)の提供を拒んだ場合、どうすればよいですか?
○4-3 本人確認
Q4-3-2 代理人から本人のマイナンバー(個人番号)の提供を受ける場合は、どのように本人確認を行うのですか?
Q4-3-3 退職した年金受給者についても、本人確認を行わなければなりませんか?
Q4-3-4 本人確認は、マイナンバー(個人番号)の提供を受ける度に行わなければならないのですか?
Q4-3-5 マイナンバー(個人番号)を取得し、本人確認を行う事務を委託することはできますか?
Q4-3-6 従業員の扶養家族のマイナンバー(個人番号)を取得するときは、事業者が扶養家族の本人確認も行わなければならないのでしょうか?
○4-4 利用・安全管理
Q4-4-1 民間事業者がマイナンバー(個人番号)を取り扱うにあたって、注意すべきことはありますか?
Q4-4-2 民間事業者も特定個人情報保護評価を行う必要がありますか?
Q4-4-4 マイナンバー(個人番号)が漏えいして不正に用いられるおそれがあるときは、マイナンバーの変更が認められますが、事業者は、従業員などのマイナンバーが変更されたことをどのように知ることができますか?
○4-5 マイナンバーの提供
Q4-5-1 子会社などに出向・転籍する場合、従業員の特定個人情報(マイナンバー(個人番号)を含む個人情報)を出向・転籍先に提供することに問題はありますか?
Q4-5-2 合併などによる事業の承継があったときは、マイナンバー(個人番号)を事業の承継先に提供しても良いのですか?
Q4-5-3 事業者が取得した従業員やその扶養家族のマイナンバー(個人番号)を当該従業員などが加入している健康保険組合に提供してもよいですか?
(5)個人情報の保護に関する質問
Q5-1 医療(病歴、投薬等)情報まで筒抜けになってしまうのではないですか?
Q5-2 よく「個人情報を一元管理する」と言われますが、本当ですか?
Q5-3 アメリカや韓国のように、成りすましが多発することはないのですか?
Q5-4 番号法の「特定個人情報」、「特定個人情報ファイル」とは何ですか?
Q5-5 番号法と個人情報保護法は、どのような関係になるのですか?
Q5-6 自分のマイナンバー(個人番号)を取り扱う際に気を付けることは何ですか?
Q5-7 他人のマイナンバー(個人番号)を収集してはいけないのですか?
Q5-8 番号法にはどのような罰則がありますか?
(6)マイナポータルに関する質問
Q6-1 マイナポータルってなんですか?
Q6-3 高齢者・障がい者の方々や家にパソコンが無い人はマイナポータルをどのように利用すればいいですか?
Q6-4 個人番号カードを持っていないと、マイナポータルを利用できないのですか?
(7)今後のスケジュール等
Q7-2 システム構築はうまくいくのですか?
Q7-3 マイナンバーのコールセンターが出来ると聞きましたが、いつできるのですか?
Q7-4 平成26年度にマイナンバーのポスターを作る予定があるそうですが、完成したポスターを希望者に個別に送ってもらうことはできますか?
Q7-5 マイナンバーのロゴマークを広報に使用しても良いのでしょうか?
Q7-6 マイナンバーに関する各種資料や最新の情報はどのように入手したらいいですか?
(8)法人番号に関する質問
Q8-1 法人番号は何桁ですか?
Q8-5 法人番号はどこへ通知されるのですか?
Q8-6 法人番号はどのように公表されるのですか?また、どのような情報が公表されるのですか?
Q8-7 全ての法人番号の指定を受けた者の基本3情報が公表されるのですか?
参考資料1:
2000年7月14日・わが国税制の現状と課題-21世紀に向けた国民の参加と選択-税制調査会の答 申より
出典:http://www.cao.go.jp/zeicho/tosin/zeichof.html (わが国税制の現状と課題-21世紀に向けた国民の参加と選択-答 申 [PDF形式])の(六 その他の諸課題)平成12年7月14日
http://www.cao.go.jp/zeicho/tosin/pdf/zeichof14.pdf より
1.納税者番号制度
(1) 納税者番号制度の意義
納税者番号制度については、従来から当調査会において検討を重ねてきていますが、その意義を改めて整理すると、次のとおりです。
現在、税務当局は、納税者が行う取引等の相手方から利子・配当等の支払調書、給与の源泉徴収票をはじめとする資料情報の提出を受けており、それを手掛かりに納税者の申告内容を審査しています(情報申告制度、法定資料制度などと呼ばれます。)。
この仕組みが有効に成り立つためには、これらの資料に記載された納税者の名義が真正なものであることが確保された上、資料が個々の納税者ごとに整理(名寄せ)されていなければなりません。仮に、個々の納税者を識別できる納税者番号があれば、以下のような機能を果たすことになります。
(資料1)納税者番号制度の仕組み
① 納税者番号を取引の場において相手方に告知することを義務付けることによって、真正な名義の使用を担保できるようになります。
② 税務当局が収集する資料情報の数量は膨大なものとなっており、かつ、今後も増加することが見込まれます。これらの資料情報に納税者番号の記載を義務付けることにより、その整理を機械的・効率的に行うことが可能になります。
納税者番号制度は、こうした取引等の場における真正な名義の使用を担保すること、各種資料情報の突合・名寄せを効率化することにより、適正・公平な課税に資するものであり、また同時に税務行政の効率化・高度化にも寄与するものです。これらの結果、納税者の税務行政への信頼を高めることが期待できます。
(2) 納税者番号制度の検討の必要性
適正・公平な課税を実現するためには、税務当局が個人や企業の所得等を的確に捉えることが必要となります。申告納税制度が導入されているわが国では、所得等は、まず納税者自身の申告によって税務当局に明らかにされることが原則であり、さらに、申告が真正であることを担保するためには、税務当局が調査・確認を行うことが不可欠です。こうした調査・確認を行っていく上で、アメリカなどの諸外国において導入されている納税者番号制度が役立つという観点から、検討が行われてきました。
(資料2) 主要国における納税者番号制度の概要(未定稿)
国 名 |
番号の種類 |
適用業務 |
付番者(数) |
人 口 (1998年 現在) |
付番維持 管理機関 |
付番の根拠法 |
実施年 |
アメリカ |
社会保障番号 (9桁) |
税務、社会保険、年金等 |
約3億8,100万人 (累積数) (1997年現在) |
2億7,056 万人 |
社会保障庁 |
社会保障法 |
1962年 |
カナダ |
社会保険番号 (9桁) |
税務、失業保険、年金等 |
約3,153万人 (累積数) (1997年現在) |
3,030万人 |
人的資源 開発省 |
失業保険法 |
1967年 |
デンマーク |
統一コード (10桁) |
税務、年金、住民管理、諸統計、教育等 |
全住民 |
530万人 |
内務省中央 個人登録局 |
個人登録に関する法律 |
1968年 |
スウェーデン |
統一コード (10桁) |
税務、社会保険、住民管理、諸統計、教育等 |
全住民 |
885万人 |
国税庁 |
人口登録制度に関する勅令・政令 |
1968年 |
ノルウェー |
統一コード (11桁) |
税務、社会保険、諸統計、教育、選挙等 |
全住民 |
443万人 |
登 録 庁 |
人口登録制度に関する法律 |
1970年 |
韓国 |
住民登録番号 (13桁) |
税務、社会保障、旅券の発給等 |
全住民 |
4,643万人 |
内務 部 |
住民登録法 |
1993年 |
シンガポール |
統一コード (1文字8数字) |
税務、年金、車両登録等 |
全住民 |
387万人 |
内 務 省 国家登録局 |
国家登録法 |
1995年 |
イタリア |
統一コード (文字及び数 字の組合せ) |
税務、諸許認可等 |
約5,000万人 (1997年現在) |
5,852万人 |
財 政 省 |
納税者登録及び納税義務者の納税番号に関する大統領令 |
1977年 |
オーストラリア |
統一コード (9桁) |
税務、所得保障等 |
約1,250万人 (1996年現在) |
1,875万人 |
国 税 庁 |
1988年度税制改正法 |
1989年 |
具体的には、以下に述べるように、総合課税・分離課税の課税方式をめぐる議論との関係や、資料情報の増加の下での税務行政の効率化・高度化との関係から、納税者番号制度について検討されてきています。
(1) 課税方式の議論との関係
納税者番号制度の検討の必要性は、まず、個人所得課税の課税方式をめぐる議論との関係で指摘されてきました。現在の個人所得課税は、総合課税を基本としつつ、利子所得等については源泉分離課税を行っています。個人所得課税については、各種の所得をすべて合算・総合した上で累進税率を適用する総合課税が優れているという議論があります。
仮に、利子所得等も含めた総合課税化を行う場合には、まず、膨大な数の預金口座からの利子所得について資料情報の提出を求めることとなり、さらに、利子所得以外の各種の金融商品に係る所得についても同様に資料情報の提出が求められることとなります。また、現在、給与所得者の多くは年末調整によって納税が完結していますが、総合課税化に伴い、ほとんどの納税者が確定申告書を提出することとなります。
こうした結果、利子所得等を含めた総合課税化を行う場合、大量かつ多様な資料情報等を突合・名寄せし、申告書と照合していく必要があります。このような突合・名寄せを正確・迅速に行うためには、納税者番号制度が不可欠となります。
(2) 税務行政の効率化・高度化との関係
一方、総合課税の議論とは別に、税務行政の効率化・高度化との関係でも、納税者番号制度の検討の必要性が指摘されています。近年、所得税の確定申告や還付申告の件数は、緩やかな上昇傾向で推移しており、今後もこの傾向は続くものと考えられます。また、近年の金融商品の多様化、経済取引の国際化や電子商取引の発展の下、適正・公平な課税を確保するためには、資料情報制度の一層の拡充が必要であると考えられます。
今後増加していくことが見込まれる資料情報を適切に収集・整理し、活用を行うことによって税務行政の更なる効率化・高度化を図っていくことが求められており、近年、税務行政においても、こうした観点から機械化・電子化が進められています。
こうした状況を踏まえると、大量の資料情報を機械的・電子的に突合・整理し、活用を図っていく上で、納税者番号制度のような統一番号は、税務行政の効率化・高度化に資するものと考えられます。
(注)税務行政の分野で現在検討が進められている電子申告(納税申告書に記載される情報を電子データの形で送信する方法)においては、本人確認のためのパスワードや電算処理を行うための電子申告整理番号等が必要とされています。これらの番号等は、使用が納税者と課税当局との間の税務情報の伝達の局面に限られており民間の経済取引の場において広く用いられるものではないこと、電子申告を希望する納税者のみを対象として付与されるものであることなどの点で、基本的には納税者番号制度と異なるものと考えられます。
しかし、電子申告をめぐる論点の中には、例えば、盗み見や漏えい、侵入に対するセキュリティの確保の問題など、今後の納税者番号制度の検討において参考となり得るものもあると考えられます。
(3)タックス・コンプライアンスの向上-納税者の立場からの論点-
近年、タックス・コンプライアンス(税制への信頼と納税過程における法令遵守)という納税者の立場に着目した観点が、重要になっています。
現行税制は申告納税制度を基本としており、納税者一人一人が、納税者全員がルールを遵守しているという安心感を持てることが、税制への信頼につながります。こうした信頼を更に高めるためには、資料情報制度、記帳・帳簿保存、源泉徴収制度、罰則、加算税などの納税を支えている多くの制度のあり方を検討していかなければなりません。これら諸制度は、それぞれが、適正な納税を促す「納税環境」を構成している重要な要素です。納税者番号制度はこれらの「納税環境」の更なる整備につながり、国民の税制への信頼を高めていく方策として、一つの柱となり得るのではないかと考えられます。
(注)納税者番号制度の議論に関連して、納税者番号制度が導入されれば源泉徴収制度は不必要となるのではないかといった意見があります。源泉徴収制度は、円滑で確実な税の徴収を確保するとともに、納税者の納税の便宜を図るという観点からも、重要な役割を果たしています。例えば、給与所得について諸外国の例を見ても、アメリカ、オーストラリア、カナダ、イタリア、スウェーデン、ノルウェー、デンマークといった納税者番号制度が存在するすべての国において、源泉徴収が行われています。
(4) 納税者番号制度をめぐる諸状況の変化
1) 番号利用の一般化
私たちの日常生活においては各種のカードが普及し、これに伴い番号の利用が一般的なものとなっています。情報化・電子化の進展もこれらの変化を後押ししており、こうした結果、国民一人一人への番号付与が国による管理につながるといった抵抗感は、以前に比べるとはるかに少なくなっているものと考えられます。
ただ、現状は、個別の取引等に対応した個別のカード・番号の利用が一般的となっているにとどまり、納税者番号のような単一の番号が広く日常的に活用されている状況には至っていないことにも留意しなければなりません。
(注)納税者番号制度が定着しているアメリカの例を見ると、第二次大戦前に導入された社会保障番号が、その後納税者番号として利用されるようになり、現在では、この番号が銀行口座の開設、運転免許証の取得、大学入学資格試験の出願など、日常の様々な場面において広く利用されています。
2) 行政による全国一連の番号の整備
近年、わが国の行政において、国民の利便の増進や行政の合理化に資することを目的として、全国一連の番号の整備が進んできています。基礎年金番号は、公的年金番号の一本化に伴い平成9年1月から実施されています。また、住民票コードについても、平成11年8月に「住民基本台帳法の一部を改正する法律」が成立し、その後3年以内に番号及びそれを用いたネットワークシステムが導入されることとなっています。ただし、後に述べるように、これらの一連番号は、そのまま直ちに納税者番号として利用することはできないことに留意しなければなりません。
(資料3) 個人付番方式の比較
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「基礎年金番号」 |
「住民票コード」 |
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根拠規定 |
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・住民基本台帳法 |
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付番機関 |
・社会保険庁 |
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付番対象者 |
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・居住者(外国人を除く) |
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保有情報 |
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他の行政機関に提供される情報 |
・なし |
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番号カード |
・なし |
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目的 |
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プライバシー保護規定 |
・個人情報保護法 |
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民間での利用 |
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・民間による利用を禁止 |
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検討・実施状況 |
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3) 国際化、電子化の進展
経済取引の国際化や電子商取引の発展の結果、より多くの資金がより素早く移動することが可能となり、取引の範囲も広域にわたるようになってきています。既に、金融システム改革の結果、金融商品の多様化、複雑化が進んでいますが、国際化、電子化の進展により、個人や企業の金融取引に係る所得等を的確に捉えることが一層困難となるおそれがあります。さらに、租税回避のための取引(タックス・シェルター)が増加することも考えられます。
こうした状況に対応し、所得等の捕捉を行って適正・公平な課税を確保するためには、これらの金融商品に対し広く資料情報の提出を求めていかなければなりません。資料情報制度を大幅に拡充していく場合には、大量の資料情報を突合・整理し、活用を図っていく上で、納税者番号制度の導入の検討が必要であると考えられます。
(5) 納税者番号制度をめぐる主な論点
当調査会は、これまで広範な論点について納税者番号制度の検討を行ってきましたが、前述した近年の状況変化も踏まえ、改めて主な論点について整理すると、以下のとおりです。
1) 番号付与の方式(付番方式)
納税者番号制度の検討においては、納税者番号として利用する場合に必要とされる番号付与(付番)のあり方をどのように考えるかという問題があります。これについては、これまでの当調査会の検討において、二重付番がないこと、全国一連の番号で生涯変わらないものであること、番号を付与した後の住所、氏名等の異動を管理できる体制になっていること、大多数の個人及び法人を網羅していることなどが必要であると指摘されています。
こうした点や諸外国における納税者番号制度の例を踏まえ、当調査会においては、個人に対する付番方式の類型として、公的年金番号を利用する「年金番号方式」と住民基本台帳を利用する「住民基本台帳方式」の2類型を検討の対象としてきました。前述のとおり、近年、2種類の全国一連の番号が整備されてきていますが、このうち基礎年金番号は「年金番号方式」に、住民票コードは「住民基本台帳方式」に、ほぼ該当していると考えられます。
基礎年金番号、住民票コードの2つについては、そのいずれについても、制度上又は性質上、現行の番号をそのまま納税者番号制度に用いることはできません。仮に、現時点においてこれらの番号を個人に付される納税者番号として検討するという視点に立った場合、様々なメリット・デメリットが考えられます。その中で、主要な点のみについて整理すると、以下のようになります。
【納税者番号として検討する場合の個人付番方式の比較】
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年金番号方式(基礎年金番号) |
住民基本台帳方式(住民票コード) |
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メ リ ッ ト |
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デ メ リ ッ ト |
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(注 )基礎年金番号は、公的年金加入者等(外国人も含む)が対象であり、住所の変更は本人の届出による。
住民票コードについては、正確性の面で相対的なメリットはありますが、前述のとおり、制度の実施はこれからであり、基礎年金番号とともに、今後の整備及び定着・活用の状況等を踏まえつつ、引き続き、必要とされる付番のあり方等について検討を進めていかなければなりません。
(注)住民票コードの導入等が定められた「住民基本台帳法」においては、番号による本人確認情報の利用について、民間機関は対象外であり、また、利用し得る公的部門も限定されて税務当局は対象外となっているため、住民票コードが実際に導入された後も、これをそのまま納税者番号制度に用いることはできません。したがって、仮に住民票コードを納税者番号に用いる場合には、同法の改正を含めた法令上の措置が必要となります。
また、住民票コードの導入等を措置する改正法の国会審議が行われた際には、「この法律の施行に当たっては、政府は、個人情報の保護に万全を期するため、速やかに、所要の措置を講ずるものとする」との一項が附則に追加されるとともに、プライバシー保護やシステムの利用範囲に関して附帯決議もなされています。なお、個人情報の保護については、政府において、個人情報保護システムの中核となる基本的な法制の確立に向け、現在具体的な検討が進められています。
法人は、個人とともに経済取引における主要な取引主体であり、仮に、法人の取引を納税者番号制度の対象としない場合には、個人の取引を法人名義で行うことにより把握を免れることが可能となってしまうため、法人にも番号を付与しなければなりません。
法人に対する番号付与の方式としては、税務データ方式(税務当局の管理データに基づく方法)と登記簿方式(法人登記簿のデータに基づく方法)が考えられますが、税務データ方式については公益法人のデータがないなどの問題、登記簿方式については休眠会社の整理などの問題が指摘されています。
こうした問題については、行政の電算化の進捗状況等についても留意しつつ、更に検討を進めていくことが求められます。
2) 納税者番号制度のメリット
納税者番号制度の導入によって課税の公平・適正化が図られることとなれば、税制全体に対する国民の信頼の向上につながるものと考えられます。近年、当調査会において、納税者番号制度について納税者の立場に着目した観点からの検討の重要性を指摘していますが、こうしたタックス・コンプライアンス(税制への信頼と納税過程における法令遵守)の向上に寄与することが、納税者番号制度の導入によって期待される最も重要なメリットの一つであると考えられます。
また、先に述べたとおり、納税者番号制度は、利子所得等を含めた総合課税化を行う場合の前提条件となりますので、納税者番号制度の導入は、個人所得課税の課税方式の選択の幅を広げることになります。
なお、納税者番号制度が導入されれば、すべての所得等の把握が可能となるといった見方が一部に見受けられますが、すべての経済取引を納税者番号制度の対象範囲とすることは不可能です。例えば、事業者の売上げや仕入れに関するすべての取引を把握することは困難であるなど、おのずから一定の限界が存在することにも留意しなければなりません。
3) 納税者番号制度の導入時のコスト
納税者番号制度は大掛かりな仕組みであるため、その導入時のコストは、民間・行政の双方において、相当の規模となります。具体的なコストは、納税者番号制度の対象となる資料情報の範囲等をどのように設定するかによって大きく異なってきますが、民間において生じるコストとしては、例えば、以下のようなものが考えられます。
イ.金融取引については、最近、預金口座開設時における本人確認の強化が図られており、既に一定の事務的コストがありますが、納税者番号制度が導入される場合には、預金口座等を管理するソフトウェアの更新、顧客への利子支払額等の通知等を、新たに行わなければならなくなります。
ロ.一般の経済取引のうちで資料情報の提出義務が課される経済取引に関しては、個々の取引において、納税者番号を新たに追加した資料情報を提出しなければならなくなります。
ハ.また、給与等の支払に関しては、雇用主が従業員の給与等の管理に用いる個々の従業員の整理番号について一対一で納税者番号を新たに対応させる必要が生じ、コンピューターのソフトウェア等について変更・更新等を行わなければならなくなります。
以上に述べたようなコストは、広範な法人や個人に発生すること等から、納税者番号制度の導入時の民間におけるコストは、行政におけるコストよりも相当程度大きくなることが予想されます。
また、個々の取引等の場において、納税者番号の告知を求めて本人確認をいちいち行わねばならない「わずらわしさ」についても、定量化されないものですが、制度の導入に係る負担の一つとして無視できないと考えられます。
納税者番号制度は、適正・公平な課税を実現に資するとともに、税制への信頼の向上にも役立つものですが、制度の導入時には、以上のようなコストが避けられないことに留意しなければなりません。
4) プライバシーの保護
納税者番号制度に関連してプライバシーの保護の問題が生じ得る局面は、納税者と税務当局、税務当局と他の行政当局、納税者と資料情報の提出義務者の3つの局面に整理することができます。
まず、第一に納税者と税務当局間のプライバシーの問題については、現在においても、税務当局は適正な税務執行のために納税者の経済取引等に係る情報を収集することが求められており、その限りでプライバシーの権利は制限されざるを得ません。 税務行政においては、一般の公務員の守秘義務に加え、税務職員についてより重い守秘義務が税法により課されているところです。したがって、納税者番号制度が導入された場合においても、基本的には、納税者と税務当局間にプライバシーの問題が新たに生じることはないと考えられます。
第二に、税務当局が納税者番号を用いて収集した税務データへの他の行政当局からのアクセスの問題があります。この問題については、公務員の守秘義務のほか、個人情報保護法による行政機関の保有する個人情報ファイルの目的外使用に関する規制がなされています。また、そもそも他の行政当局が税務データにアクセスできるような仕組みを構築すること自体、基本的に税務職員の守秘義務違反に当たると考えられます。いずれにしても、税務データへの不正アクセス防止の問題については、今後、技術的な方策を含め検討を行っていくことが求められます。
第三に、資料情報の提出義務者は、取引等の際に納税者番号により本人確認を行うこととなりますが、この場合、例えば、資料情報の提出義務者が知り得た個人情報を無断で第三者に売買するといった危険性が生じます。このような問題に対処するためには、現在、個人情報保護の基本法制の検討を含めた取組みがなされているところであり、今後の検討の推移を見守っていく必要があります。納税者番号制度のような個人情報に関連する大掛かりな制度においては、プライバシー保護に関してごくわずかでも問題が生じると、制度全体の信頼を著しく損ねるおそれがあり、プライバシーの保護については、引き続き十分な検討を重ねていかなければなりません。
5) 資金シフト等の経済取引への影響
納税者番号制度が導入される場合、同種の取引についてはできる限り広く納税者番号制度の対象にしないと、納税者番号制度の対象取引から対象外の取引へと資金シフトが起こるなど、経済取引へ影響を与えるおそれがあります。国際化・電子化の進展を踏まえれば、納税者番号制度の対象となる取引範囲については、経済取引への中立性の観点から、できる限り広くすることが求められます。また、国際的な資金シフトに対応するためには、国際的な取引についても資料情報の対象とすることや、情報交換をはじめとした税務執行の国際協力を一層推進することについて、検討する必要があります。
資金シフト等の経済取引への影響を踏まえれば、以上のように、納税者番号制度の対象範囲はできる限り広くすることが求められますが、その分、納税者番号制度の導入時のコストは引き上げられることに留意しなければなりません。
(6) 今後の検討の方向
納税者番号制度は、真正な名義の使用の担保及び資料情報の突合・名寄せの効率化によって、所得等の的確な把握を可能とすることを通じて、適正・公平な課税の実現及び税務行政の効率化・高度化に資するものであり、さらに、納税者の税制への信頼の向上にも寄与するものです。
納税者番号制度については、これまで当調査会において、まず総合課税との関連から検討が行われてきました。納税者番号制度の導入は、利子所得等も含めた個人所得税の総合課税を行う場合の不可欠な前提条件となります。したがって、納税者番号制度については、この総合課税化の問題と併せて検討されることが求められます。
また、タックス・コンプライアンスの向上という観点からは、納税者番号制度は、番号によって申告書と各種の資料情報とが有機的に結び付き、適正・公平な課税の実現に役立つものでなくてはなりません。このような視点から、今後、納税者番号制度については、資料情報制度のあり方など納税を支える他の諸制度のあり方とも併せて検討を行っていかなければなりません。
さらに、納税者番号制度については、適正・公平な課税の実現に資する一方、付番方式のあり方、導入に伴うコストと効果、プライバシー保護の問題など、引き続き検討すべき課題が残されています。
納税者番号制度は、国民生活全般に大きな影響を及ぼすものであり、その導入については、国民の理解と協力が不可欠です。したがって、制度の意義、先に述べたような様々な論点について、今後、国民の間で更に議論が深まることを期待するとともに、全国一連の番号の整備をはじめとした諸状況の進展を踏まえながら、その導入について検討を進めていく必要があります。
出典: https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/tins/n06.htm
諸外国における税務面で利用されている番号制度の概要
(2014年1月現在)
番号の種類 |
適用業務 |
付番者(数)(注2) |
人 口(注5) (2012年現在) |
付番維持 管理機関 |
現行の 付番根拠法 |
税務目的 利用開始年 |
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社 会 保 障 番 号 を 活 用 |
イギリス |
国民保険番号 (9桁) |
税務(一部)(注1)、社会保険、年金等 |
非公表 |
6,324万人 |
雇用年金省 歳入関税庁 |
社会保障法 |
1961年 |
||
アメリカ |
社会保障番号 (9桁) |
税務、社会保険、年金、選挙等 |
約4億5,370万人 (累計数) |
3億1,391万人 |
社会保障庁 |
社会保障法 |
1962年 |
|||
カナダ |
社会保険番号 (9桁) |
税務、失業保険、年金等 |
約4,188万人 (累計数) |
3,488万人 |
雇用・社会開発省 |
雇用保険法 |
1967年 |
|||
住 民 登 録 番 号 を 活 用 |
スウェーデン |
住民登録番号 (10桁) |
税務、社会保険、住民登録、選挙、兵役、諸統計、教育等 |
全住民 |
952万人 |
国税庁 |
個人登録に関する法律 |
1967年 |
||
デンマーク |
住民登録番号 (10桁) |
税務、年金、住民登録、選挙、兵役、諸統計、教育等 |
全住民 |
559万人 |
内務省 中央個人登録局 |
個人登録に関する法律 |
1968年 |
|||
韓国 |
住民登録番号 (13桁)(注3) |
税務、社会保険、年金、住民登録、選挙、兵役、諸統計、教育等 |
全住民 |
5,035万人 |
行政安全部 |
住民登録法 |
1968年 |
|||
フィンランド |
住民登録番号 (10桁) |
税務、社会保険、住民登録等 |
全住民 |
540万人 |
財務省 住民登録局 |
住民情報法 |
1960年代 |
|||
ノルウェー |
住民登録番号 (11桁) |
税務、社会保険、住民登録、選挙、兵役、諸統計、教育等 |
全住民 |
499万人 |
国税庁登録局 |
人口登録制度に関する法律 |
1971年 |
|||
シンガポール |
住民登録番号 (1文字+8桁) |
税務、年金、住民登録、選挙、兵役、車両登録等 |
全住民 |
531万人 |
内務省 国家登録局 |
国家登録法 |
1995年 |
|
||
オ ラ ンダ |
市民サービス番号 (9桁) |
税務、社会保険、年金、住民登録等 |
全住民 |
1,673万人 |
内務省 |
市民サービス番号法 |
2007年(注6) |
|||
税 務 番 号 |
イタリア |
納税者番号 (6文字+10桁) |
税務、住民登録、選挙、兵役、許認可等 |
約6,323万人 |
6,085万人 |
経済財政省 |
納税者登録及び納税義務者の納税番号に関する大統領令 |
1977年 |
||
オーストラリア |
納税者番号 (9桁) |
税務、所得保障等 |
約3,099万人 (累計数)(注4) |
2,268万人 |
国税庁 |
1988年度税制改正法 |
1989年 |
|||
ドイツ |
税務識別番号 (11桁) |
税務 |
約8,100万人 |
8,193万人 |
連邦中央税務庁 |
租税通則法 |
2009年 |
|||
(参考)フランスには、納税者番号制度はない。
(注1)イギリスでは、給与源泉徴収や個人非課税貯蓄など一部の税務で国民保険番号が利用されている。
(注2)付番者数は、アメリカは2012年、ドイツは2008年、他の国は2007年の値。
(注3)韓国では、個人情報保護法の改正により、2014年8月7日より、原則としてすべての公共機関及び民間事業者により法的根拠なく住民登録番号を収集する行為が禁止される。
(注4)オーストラリアでは、個人及び法人に同一体系の納税者番号が適用されている。
(注5)人口は“Monthly Bulletin of Statistics”(国際連合)による。
(注6)オランダでは、もともと1986年に税務番号が導入され、1988年以後は、税務・社会保障番号として、税務・社会保障目的で利用されていた(財務省所管)。