日本のシンクタンクの世界ランクは?

日本のシンクタンクの世界でのランクは?

 

1.日本のシンクタンクの伸び悩みの理由

例年発表されている米ペンシルバニア大学による「世界有力シンクタンク評価報告書」が、本年も1月に発表されているが、それによると、世界のシンクタンク数は6618に上り、「日本国際問題研究所」(JIIA)が「世界のトップ・シンクタンク(米国を含む)」で13位にランキングされ、アジアで最高位となった。28位にはアジア開発銀行研究所(ADBI)が入ったが、ベスト100にランクされた日本のシンクタンクはこの2つだけだった。

日本のシンクタンクが米欧諸国に比べ、社会的な役割や影響力が小さい理由は、財界や企業主導で設立されてきたものが多く、より広い視点から政治、経済、外交、文化などに影響を及ぼすよりは、個々の組織に対する貢献度が重視されたことが大きい。その背景には、日本の官僚機構が政策形成、制度設計、アジェンダセッティングなどを長く独占していたこともある。また、日本のシンクタンクは、組織設立、資金、税制などの面で多くの社会的制約を抱えている事情もあったといえる。

しかし、ペンシルバニア大の「評価報告書」は、シンクタンクが世界的な現象と化し、その業務範囲と影響力が拡大していることについて、「知識と権力の橋渡しを務めることで、世界の政府と市民社会に不可欠な役割を果たしている」からだとしている。

また、同報告書は、21世紀にシンクタンクが成長する理由について、①IT革命②政府による情報独占の終焉③政策課題の複雑性・専門性の拡大④政府規模の拡大⑤政府職員・政治家への不信感⑥グローバル化、国家・非国家アクターの成長―などを挙げている。

 

2.シンクタンクの定義

そもそも、シンクタンク(think tank)とは、政策立案や政策提言を業務とする公共政策研究機関をさす。1910年米国ワシントンに設立されたカーネギー国際平和基金が始まりとわれている。直訳すれば、頭脳集団に当たるが、米軍の「作戦を練る部屋」を意味する「think tank」に由来するといわれる。多くの政策集団が非営利団体という形態をとっている。

同評価報告書では、シンクタンクについて「公共政策の研究分野及び同政策への関与を行う機関であり、国内外の課題に対する政策志向の研究・分析・助言の実施を通じて、政策立案者と一般市民が公共政策に関する意思決定を行えるよう支援する」と定義している。

 

3.世界のトップランクは―双璧は米ブルッキングス研究所と英チャタムハウス―

世界の5大シンクタンクは、①ブルッキングス研究所(ワシントン)②王立国際問題研究所(チャタムハウス、ロンドン)③カーネギー国際平和基金(ワシントン)④戦略国際問題研究所(CSIS,ワシントン)⑤ブリューゲル(Bruegel、ベルギー・ブリュッセル)の順となっている。これまで、5番目だったストックホルム国際平和研究所(スウェーデン・ストックホルム)は2014年ランクでは6番目となった。

ブルッキングス研究所は、全米1830のシンクタンクのトップに君臨する機関で、1916年に「政府活動研究所」として創設され、その後経済研究所や公共政策大学院を統合して1927年に現在の体制となった。中道・リベラル系のシンクタンクで、民主党政権には政策的な影響を及ぼしている。

王立国際問題研究所(RIIA)は、研究所の建物名からチャタムハウス(Chatham House)とも呼ばれており、1920年創設。最近注目を集めているのは、5位にランクされた「ブリューゲル」(Bruegel)で、「ブリュッセル欧州世界経済研究所(Brussels European and Global Economic Laboratory)」の頭文字をつなげたもので、設立は2004年。 

また、世界各国のシンクタンク状況を見ると、トップは当然、米国(1830)だが、中国の台頭が著しく429で2位を占めている。以下、英国(287)、ドイツ(194)、インド(192)の順。日本は108で9位。 アジア地域では、中国、インド、日本に次ぐのは台湾(52)、韓国(35)、香港(30)、インドネシア(27)の順。

 世界のトップ・シンクタンク

1

ブルッキングス研究所

米国・ワシントン

2

王立国際問題研究所(チャタムハウス)

英国・ロンドン

3

カーネギー国際平和基金

米国・ワシントン

4

戦略国際問題研究所(CSIS

米国・ワシントン

5

ブリューゲル(Bruegel

ベルギー・ブリュッセル

6

ストックホルム国際平和研究所

スウェーデン・ストックホルム

7

ランド研究所

米国・サンタモニカ

8

外交問題評議会(CFR

米国・ニューヨーク

9

国際戦略研究所 (IISS)

英国・ロンドン

10

ウッドロー・ウィルソン国際学術センター

米国・ワシントン

11

アムネスティ・インターナショナル(AI

英国・ロンドン

12

トランスペアレンシー・インターナショナル(TI

ドイツ・ベルリン

13

日本国際問題研究所(JIIA

日本・東京

14

ドイツ国際安全保障研究所(SWP

ドイツ・ベルリン

15

ピーターソン国際経済研究所(PIIE

米国・ワシントン

(2014年ペンシルバニア大「世界有力シンクタンク評価報告書」による)

 

4.「JIIA」設立は吉田元首相が主導

アジアで最高の13位にランクされた「日本国際問題研究所」は、吉田茂元首相の強い意向で1959年12月に設立され、吉田自らが初代会長に就任した。英国のチャタムハウスに倣い、国際問題の研究・知識普及、海外交流の活発化を目的としている。1960年9月からは外務省所管の財団法人(現在は公益財団法人)となり、さらに2014年には一般財団法人世界経済調査会を併合した。

しかし、アジア地域では2000年以降、シンクタンクが劇的に増加しているのに対して、日本のシンクタンクの活動は縮小傾向で、資金力も大幅に減少している。JIIAにしても、主目的は外交政策であるが、評価報告書の分野別「外交政策・国際問題」ランキングでは50位にとどまっている。“アジアで最高位”と喜んでいられる状況ではない。

また、日本の主要シンクタンクは、JIIAのほか、日本国際交流センター(JCIE)、平和・安全保障研究所(RIPS),世界平和研究所(IIPS)、国際文化会館(I-HOUSE)などが海外でよく知られているが、JIIAを除くと世界的なランクはいずれも低い。

今回28位にランクされたアジア開発銀行研究所(ADBI)は、アジア開発銀行のシンクタンクで、アジア太平洋地域の開発戦略の策定や開発運営の支援を行なっている。1997年に設立され、日本政府が運営基金を拠出している。

 

5.日本の沿革―1970年の“シンクタンク元年”からの推移―

日本でシンクタンクのニーズが高まったのは、1970年代前後で、高度経済成長に伴い、行政中心ではない観点からの社会開発、研究の必要性が高まったからだ。1965年に設立された野村総合研究所が(NRI)を皮切りに、社会工学研究所(69年)、三菱総合研究所(70年)、未来工学研究所(71年)などが創立された。1970年は“シンクタンク元年”といわれている。

1980年後半には、笹川平和財団(86年)などが発足したが、金融や生保、地方銀行系のシンクタンクが乱立し、バブル崩壊とともにブームは去った。1990年代後半には、民間の非営利独立系シンクタンクが設立される。「21世紀政策構想フォーラム」(96年)、「東京財団」(97年)、「21世紀政策研究所」(97年、経団連)などが誕生した。

最近では、「国際公共政策研究センター」(2007年)、「キヤノングローバル戦略研究所」(08年)、リコー経済社会研究所(10年)などが誕生している。また、ユニークなシンクタンクとしては、本格的な民間非営利独立型シンクタンクを目指している「国際研究奨学財団」(1990年)や、市民が自ら政策や法律の提案を目指す「市民立法機構」(97年)などがある。

 

6.アメリカのシンクタンク

アメリカでは、政策研究や提言などを目的とするシンクタンクが高度に発達しています。現在、約400ものシンクタンクが活動し、政府や議会に一定の影響力を行使する存在となっています。近年のアメリカのシンクタンク業界の特徴としては、保守系、リベラル系といった特定のイデオロギーを掲げるイデオロギー系シンクタンクが台頭しており、今日、数の上ではイデオロギー系シンクタンクが同業界の中心となっているようです。

アメリカのシンクタンクを歴史的に振り返ると、その起源となる20世紀初頭から1960年代ごろまでは非イデオロギー系シンクタンクが中心。20世紀初頭以来の「偏りのない客観的な知識の生産こそが社会を豊かにする」との精神に影響されたようだ。しかし、1970年代頃を境にイデオロギー系シンクタンクが急増し始め、現在では保守系シンクタンク(「小さな政府」や「自由市場」、「強固な国防」、「伝統的価値」を標榜)やリベラル系シンクタンク(「プログレッシブな政策」や環境保護、消費者保護、低所得者層の利益を標榜)が、非イデオロギー系シンクタンクを圧倒している。

イデオロギー系シンクタンクは、次の二つの役割を通してアメリカ政治のイデオロギー的分極化、すなわち、政策次元におけるイデオロギー対立を助長した。第一の役割は、強固な「政治的ネットワーク」を形成し、正に「アドボカシー・タンク(advocacy tanks)」として立場を共にする政治家との関係を強化しました。

第二の役割は、「人材育成」です。第一の役割が短期的な影響であるとすれば、第二の役割は中長期的な影響のものです。イデオロギー系シンクタンクは、インターンシップ・プログラムだけでなく、無名に近い若手(修士号や博士号を取得していない者も少なくない)も研究員として積極的に採用しています。

人材育成の成果の一例は、ポール・ライアン(Paul Ryan)下院予算委員長(共・ウィスコンシン)。今日、下院共和党のリーダー格であるライアン委員長は20代前半に、ジャック・ケンプ(Jack Kemp)元住宅都市開発長官のエンパワー・アメリカ(Empower America)という保守系シンクタンクにおいて修行したようだ。保守、リベラルともに右役割を通してイデオロギー的な専門家を育成している可能性が高い。

 一方、ブルッキングス研究所など古くから存在する、大手の非イデオロギー系シンクタンクはアメリカ政治において依然として大きな存在感があり、これらシンクタンクは各方面から高い信頼をえているようです。1997年に議会スタッフやジャーナリストを対象に行われた調査によると、「信頼性」の順位では、①ブルッキングス研究所、②ランド研究所、③AEI、④外交問題評議会、⑤カーネギー国際平和財団でした。こうした信頼性の故に、その研究成果が政策論議の大きな流れを変えることに貢献することも(課題設定)多く、また研究員が民主・共和両政権の重要ポストに引き抜かれる事例も決して少なくない。

 大手非イデオロギー系シンクタンクの重要な資金源は、フォード財団(Ford Foundation)やロックフェラー財団(Rockefeller Foundation)といった、アメリカを代表する大型財団であるが、これら大型財団は新たな非イデオロギー系シンクタンクの創設にはほとんど関心がないようです。

 

以上の主な情報源:

  1.  http://www.us-jpri.org/en/reports/seminar/miyata20110721_2.pdf

 ⓶   http://www.nippon.com/ja/features/h00099/

 

 

 

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