「ゆく年くる年」

                                                                    2015年12月28日サイト納め

ゆく年くる年

 

往く年;

 2015年の最初のトピックスで、名門スタンフォード大学で政治学の博士号を取得し、世界で名高い政治リスク分析会社「ユーラシア・グループ」を率いている「天才政治学者」イアン・ブレマー氏による2015年の世界のリスクのトップ10の記事を紹介しました。

それによる、世界の2015年のリスクのトップ10は以下の通りでした。

1 ヨーロッパ政治の弱体化

2 欧米と対立深めるロシア

3 中国経済減速の波及

4 アメリカの金融制裁を兵器として利用

5 広がるイスラム国の脅威

6 新興国指導者の求心力低下

7 政府の企業への影響力拡大

8 サウジアラビアとイランの対立

9 中国と台湾の関係悪化

10 トルコ 失政で混迷

 

吾輩が独断で選んだ2015年(ゆく年)の世界および日本の10大ニュースは、以下の通りです。

 

世界の10大ニュース

日本の10大ニュース

①    中国、3年ぶりに経済成長率目標引き下げ。経済減速が鮮明に

②   南太平洋バヌアツに大型サイクロン

③   英総選挙で与党・保守党が勝利

④   アジアインフラ投資銀行が設立協定調印

⑤   米国とキューバが54年ぶり国交回復

⑥   独フォルクスワーゲンが排ガス規制不正

⑦   欧州でシリアなどからの難民が急増

⑧   中国と台湾が分断後、初の首脳会談

⑨   「イスラム国」の犯行とされるパリで同時テロ

⑩   パリでCOP21

①   日経平均株価、15年ぶりに2万円台回復

②   新たな日米防衛協力指針に合意世界

③   安倍首相、米議会で初演説

④   列島各地で火山活動活発化

⑤   18歳選挙権、来夏参院選から

⑥   安全保障関連法が成立

⑦   TPP、日米など12か国で大筋合意

⑧   マイナンバー制度がスタート

⑨   辺野古移設巡り、国と沖縄県の対立激化

⑩   国産初のジェット旅客機、初飛行成功

 

 ブレマー氏のリスクで1つ予測を外れた感のあるのが、分断後初の中国と台湾の首脳会議が行われたことでした。しかし、これは、支持率10%台しかなくなり、退任寸前の馬英九総統が、全世界に向かってアピールしたものであるとされ、すでに会談の前に、台湾では、プラカードに「馬は台湾を中国に売るのか」「恥を知れ」と書かれた抗議デモが起こっていることが報道されている。特に関係が改善されたものではありません。「ヨーロッパの政治の弱体化」と「欧米と対立深めるロシア」においては、リスクに対するカンフルもしくはリスクを和らげる効果のある、パリでの同時テロ、シリア難民の急増、COP21での一応の成果等により、ヨーロッパの結束を高める等の喜ばしい外れ気味の結果が見られました。中国経済の減速の波及は、残念ながらその通りとなり、世界経済全体への影響も否めませんでした。しかし、「アジアインフラ投資銀行が設立協定調印」や、中国通貨元の国際通貨への仲間入り等が中国の存在感の向上に貢献したのが救いと言えます。

 「COP21」でのパリ協定採択には、196カ国・地域が参加 し、18年ぶりに地球温暖化1.5度以内へ努力が、アメリカ、中国の汚染40%以上を占める大国の参加が大きな成果でした。それには、「南太平洋バヌアツに大型サイクロン」や「中国における大気汚染」が文字通り、災い転じて福となす結果になったようです。しかし今後の具体的な動きは、そのスタート台に並んだにすぎないと言えるのが現状のようですが、史上初めて温暖化防止にともに努めると約束した。地球温暖化の阻止へ歴史的な一歩を踏み出したことはたしかなようです。世界の10大ニュースに敢えて入れなかった、アメリアのゼロ金利の終了の幕が切って下ろされました。年内に行われると市場が織り込み済みであったために、短期的な市場の影響は大きなものではありませんでしたが、来る年の影響は十分注意する必要があるでしょう。

  一方我が国の2015年は、アベノミクスの第一ステージにおける旧三本の矢が「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「投資を喚起する成長戦略」だったのに対して、アベノミクスの第二ステージでは新三本の矢として「希望を生み出す強い経済」「夢を紡ぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」が打ち出されました。その結果、2015年の税収は増えており、雇用情勢の改善を反映して雇用保険特別会計にお金がだいぶ余っているので、それを使うこともできます。また、高齢者に偏り過ぎている社会保障給付をより子育て層に向けて行くことも必要です。アベノミクスの「新三本の矢」の特徴は、おおむねこのようになっていますが、とりわけ二本目の矢、三本目の矢について、安倍内閣は「一億総活躍大臣」というポストを新設し、マクロ的な視点から包括的に取り組んでいこうという姿勢を見せています。女性、非正規の若者、働きたい高齢者などの潜在的な労働ニーズは、今の日本にたくさん眠っています。それを引き出して労働力を強化し、供給面を強化する。そして彼らの所得を増やせば需要面にもよい波及効果が出てくる。新三本の矢は、経済成長と分配の好循環をつくるために、お互いが連動するように設計されているのです。

 

来る年;

来る年(2016年)に予想される我が国でのリスクに対しては、さしあたり次の5つの備えが必要となりそうです。

 第1は、中国への備え:経済成長の減速で、人民元の相場は下振れし、南シナ海など、安全保障面での中国のリスクは大きい。経済は勃興期を超えて、過剰投資や過剰融資、公害などの問題が表面化している。又、世界の一流国への仲間入りしたものの、経済の行き詰まりにより対外膨張策に活路を求めている。経済の停滞、自然災害、格差の拡大等による政情不安のはけ口を隣国等に向けることにも要注意でしょう。

  第2は、不安定な金融システムへの備え:金融が世界の実体経済を揺るがす度合いが極めて高くなっています。米国が利上げをすれば、これまでの緩和マネーが逆流して、デフレ気味のアジアなど新興国の経済が振り回されるでしょう。米国は産業国家というよりは金融国家となっている。米国の資金の出入りやドル相場から目が離せない。経済を混乱させる要因としてはユーロの動きも気になります。短期決戦の陣立て一定の成果を上げてきた日銀の政策も、今や手詰まり状態だ。米国の利上げで、逆に動くのか追随するのか?イアン・ブレマーが指摘する金融制裁を兵器として利用しているアメリカの少なくとの獲(えじき)にだけはならないように注意しなければなりません。

  第3は、自然災害等の天変地異への備え:南関東や東海での巨大地震はいつ起こっても不思議ではないといわれています。国の安全保障のためには、地方への機能分散が強く求められていた小説が事実となる恐れさえ現実味を帯びているのです。火山の噴火や天候不順による風水害も増加しています。

 第4の備えは、家庭内危機への対応:高齢化による要介護者の急増等での家庭の崩壊には、自助もさることながら、コミュ二ティ―、職場等幅広い取り組みが急務であります。リスクへの備え、逆境からの復興、それらに前向きに、積極的に取り組める地域住民の自治力の復活も急務である。

  第5の備えは、外からのリスクへの対応:昨今はテロへの備えでも、我が国も例外ではないことに留意することも必要となった。円安による海外からの旅行者の急増による、疾病、犯罪等への予防、監視体制の強化は、オリンピックの開催の準備としても必須であります。

 

結び;

 構造改革は先進国共通の課題であり、IMFでも研究が行われています。自由主義経済である限り、構造改革が政府の取り組みだけでは実現できないものであることは確かです。これだけ内部留保が溜まっているにもかかわらず、それが十分に賃金や投資に回っていない現状を見ても、現在の日本企業の経営観は、ある意味近視眼的になっているのではないかとの指摘もなされています。しかしそれも、企業経営者だけの責任でもないのでしょう。株式会社であれば経営者は、株主の意向を尊重せざるを得ません。構造改革は、企業経営者だけでなしうるものではなく、全ての利害関係者の協力があって初めて可能なのでしょう。資本主義の競争原理の最大のメリットは、生産性の向上、成長等であったはずなのに、ある程度成長すると、保身が優先になりがちなのは、全ての組織に共通の傾向であります。いかに限りなき成長を目指し努力するのかが先進国共通の課題なのです。優れたスポーツマンがいう言葉に『競争相手に勝つというより、自分との競争に勝つことが大事だ。』という言葉が吾輩は好きです。日本が追い付き追い越せの状態であった時、海外との競争での勝利の方程式は、国内での厳しい競争の方程式で十分でした。常に勝つ勝利の方程式は、自らとの競争に勝つこと、即ちリスクへの挑戦なのでしょう。それができる構造改革こそが答えであることは確かなのでしょうが、それを実行する方程式が難しいのです。また振り出しに戻ってしまいました。生産性の向上の要素の中に、数値化が難しい、地球環境、幸福感等が新たな要素として加わって来ているので、更に方程式が複雑になっているのです。しかし、その方程式を解く能力を最も備えているのがこの日本であるという人たちがいるのを忘れてはなりません。自然と共生し、新し物好きな日本人が本気になれば、日本国がノーベル賞を独占する時が近いのかもしれません。というような初夢でも見たいものです。

 

年明けの休日は、三箇日だけで、御用はじめは4日と短い年末年始の休暇なので、有意義に過ごしましょうね。

飲みすぎ、食べ過ぎにご用心を・・・。

どうぞよい年をお迎えください。           呵呵

 

追伸;

世界的政情不安の中で、比較的大過なく終わりそうな我が国の、2015年の年末にかけての主な出来事等は以下の通りです。

目 次

Ⅰ.平成28年度税制改正大綱

Ⅱ.平成27年度経済動向および平成28年度政府経済見通しの概要;

参考1:日本経済団体連合会審議員会における黒田日銀総裁の講演転換点を迎えて─

Ⅲ.COP21で「パリ協定」採択

Ⅳ.平成28年度予算政府案

Ⅴ.米FRB、利上げを決定

参考2:日本は蘇るか?経営者が知っておくべき「経済の新潮流」

Ⅰ.平成28年度税制改正大綱

28年度税制改正大綱が決定、軽減税率は外食等を除く飲食料品と一部新聞が対象に

 自民、公明の与党は16日、平成28年度税制改正大綱を決定した。10日に両党が了承していた消費税の軽減税率制度を除く、同大綱案(12月14日号1面参照)に軽減税率関連を含む項目が追加されたもの。最大の焦点となっていた軽減税率の対象品目は、29年4月に予定される消費税率の10%への引き上げ後も、酒類と外食を除く飲食料品と一定の新聞を軽減税率(税率は8%)の対象とすることで決着。一方、軽減税率導入に要する年間約1兆円に上る財源については議論を先送りした。

 大綱で軽減税率の対象とされたものは、①酒類と外食を除く飲食料品と②定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞の購読料の二つ。
 ①は具体的に、食品表示法に規定する食品から酒税法に規定する酒類と外食サービスとして提供を受けたものを除いたものを指す。食品表示法は幅広い食品を規定しているが、植物や水産物でも同法に規定されないものは軽減税率の対象とはならない。また、「本みりん」は酒税法で酒類に該当し、10%の標準税率の対象となるものの、「みりん風調味料」は酒類に当たらないので軽減税率の対象となるなど代替品の間で取扱いに差が生じる。
 最も複雑なのは外食に当たるか、当たらないかの線引き。財務省の資料によると、「食品衛生法上の飲食店営業その他のその場で飲食させるサービスの提供を行う事業を営む者が、テーブル、椅子、その他のその場で飲食させるための設備を設置した場合で行う食事の提供その他これに類するもの」を外食と定義。「その他これに類するもの」とはケータリングや出張料理のように相手方の注文に応じて指定された場所で調理等を行うことを指す。これらは外食に該当する一方、テイクアウトや出前などは外食には当たらないこととされた。
 こうした考え方をまとめると表の通りとなるが、例えば、同一の店舗で提供される同一のメニューであっても店内で飲食すれば消費税率が10%、テイクアウトなら8%となることに消費者が納得するのか? 客がテイクアウトで注文したものの、店内で飲食した場合、事業者はどのように対応すればよいのか? といった疑問等は尽きない。
 ②の新聞については、「定期購読」と「週2回以上発行」の二つの要件を満たしているものであれば、軽減税率の対象とする。定期購読が条件なので、コンビニや駅、自販機で購入するものなどは対象とならない。「週2回以上発行」の条件により、定期購読であっても、例えば本紙のような週1回発行の週刊紙は対象外となる。書籍や雑誌を軽減税率の対象とするか否かは引き続き検討することとした。
 政府は、こうした内容を盛り込んだ消費税法等の改正法を来年1月4日に開会予定の通常国会に提出する。なお、15日の自民税調で宮沢洋一会長は同法案が国会で審議されるころまでに対象品目の詳細な線引きを盛り込んだ政省令、通達等を国民に示すよう財務省に要請した。

 

Ⅱ.平成27年度経済動向および平成28年度政府経済見通し

(1)平成27年度の経済動向

平成27年度の我が国経済をみると、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を柱とする経済財政政策の推進により、雇用・所得環境が改善し、原油価格の低下等により交易条件が改善する中で、緩やかな回復基調が続いている。ただし、年度前半には中国を始めとする新興国経済の景気減速の影響等もあり、輸出が弱含み、個人消費及び民間設備投資の回復に遅れがみられた。

政府は、「希望を生み出す強い経済」、「夢をつむぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」の実現に向け、平成27年11月26日に「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策」(以下「緊急対策」という。)1を取りまとめた。雇用・所得環境が改善する中、緊急対策等の効果もあって、景気は緩やかな回復に向かうことが見込まれる。

物価の動向をみると、原油価格等の下落の影響があるものの、経済の好循環が進展する中で、物価の基調は緩やかに上昇している。

この結果、平成27年度の実質国内総生産(実質GDP)成長率は1.2%程度、名目国内総生産(名目GDP)成長率は交易条件の改善もあって2.7%程度と見込まれる。また、消費者物価(総合)は0.4%程度の上昇と見込まれる。

 

(2)平成28年度の経済見通し

平成28年度の我が国経済は、「緊急対策」など、「2.平成28年度の経済財政運営の基本的態度」に示された政策の推進等により、雇用・所得環境

が引き続き改善し、経済の好循環が更に進展するとともに、交易条件が緩やかに改善する中で、堅調な民需に支えられた景気回復が見込まれる。

物価については、経済の好循環の進展により、需給が引き締まっていく中で上昇し、デフレ脱却に向け更なる前進が見込まれる。

この結果、平成28年度の実質GDP成長率は1.7%程度、名目GDP成長率は3.1%程度と見込まれる。また、消費者物価(総合)は1.2%程度の上昇と見込まれる。

なお、先行きのリスクとしては、アメリカの金融政策の正常化が進む中、中国を始めとする新興国等の景気の下振れ、金融資本・商品市場の動向、地政学的な不確実性等に留意する必要がある。

 

参考1日本経済団体連合会審議員会における黒田日銀総裁の講演

出典:http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2015/data/ko151224a1.pdf

                                                                         2015 年12月24日

                                                                                日本銀行

転換点を迎えて

── 日本経済団体連合会審議員会における講演 ──

 

                                           日本銀行総裁 黒田 東彦

1.はじめに

日本銀行の黒田でございます。本日は、我が国の経済界を代表する皆様の 前でお話し申し上げる機会を賜り、誠に光栄に存じます。

早いもので、今年も残すところ1週間となりました。本席では、1年の締めくくりに当たって、今年の日本経済を振り返るとともに、やや長期的な視点に立って、「量的・質的金融緩和」のもとで日本経済がどのような変化を遂げたのか、そして、新たな成長のステージに向けて、この先どのような課題が残されているのかについて、お話ししたいと思います。

 

2.今年の日本経済

まず、今年の日本経済を簡単に振り返ります。景気の面では、比較的堅調 な国内需要を背景に、緩やかな回復が続きました。個人消費については、雇 用・所得環境の着実な改善が続くもとで、底堅く推移しました。労働需給の 逼迫は続いており、現在の3%台前半という失業率は、求人と求職のミスマッチに起因した失業のみが残るという「完全雇用」の水準にほぼ対応しています(図表1)。企業部門については、堅調な国内需要、原油価格下落、そして円高修正という良好な経営環境を活かしながら、過去最高水準の収益を実 現しています。企業収益の拡大は、大企業だけでなく、中堅・中小企業にもみられています。こうしたもとで、幅広い業種で前向きな設備投資スタンスが維持されています。一方、外需については、米欧向けは概ね堅調に推移しましたが、本年後半にかけて、中国をはじめとする新興国経済減速の影響がみられました。もっとも、最近では全体として持ち直しています。また、夏場には中国を起点として金融資本市場にも不安定な動きがみられましたが、その後、落ち着きを取り戻しています。

物価面では、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、1年を通じて概ね0% 程度で推移しました(図表2)。もっとも、これは主としてエネルギー価格の 下落によるものであり、物価の基調は着実に改善しています。生鮮食品に加えてエネルギーも除いた消費者物価をみると、2013 10 月に前年比プラスに転じた後、25   か月連続でプラスを続けており、直近では+1.2%まで上昇しています。これほど持続的な物価上昇は、1990年代後半に日本経済がデフ レに陥って以降、初めての経験です。東京大学や一橋大学が食料品や日用品 などの価格を集計し、日次や週次で速報している価格指数をみると、本年度 入り後明確な上昇に転じ、最近まで上昇幅の拡大傾向が続いていることが分 かります(図表3)。また、消費者物価を構成する品目のうち、上昇した品目 数から下落した品目数を差し引いた指標は明確に上昇しています。これらは、本年度入り後の価格改定の動きが拡がりと持続性を伴っていることを示しています。

このように、日本経済は緩やかな景気回復を続けながら、2%の「物価安定の目標」の実現に向けた道筋をしっかりと辿っています。ここで改めて強調しておきたいのは、日本銀行は、ただ物価さえ上がればよいと考えている訳ではなく、「企業収益や雇用・賃金の増加・上昇を伴いつつ、物価が上昇する」という姿を目指しているということです。物価は様々な要因に左右され ますが、所得の増加に裏打ちされたものでなければ、2%の物価上昇率を「安 定的に」実現することはできません。

こうした観点からみても、「量的・質的金融緩和」は、所期の効果を発揮していると考えられます。さきほど申し上げたように、企業収益は過去最高水準に達しています。労働需給は引き締まりが続いており、賃金も緩やかながら、はっきりと上昇に転じています。「量的・質的金融緩和」のもとで、日本 経済のトレンドは明確に変化しました。以下では、この点をいくつかのグラフを用いながら具体的にご説明します。

 

3.拡大する経済の復活

まず、図表4をご覧ください。ここ 15 年間の消費者物価と名目所得の推移 を示したものです。

 左のグラフは、消費者物価の推移を水準で表したものです。これをみると、15年にわたって下落を続けてきた消費者物価の水準が、「量的・質的金融緩 和」導入とともに反転上昇したことが一目瞭然です。右のグラフは、名目ベースの国民所得─大まかに言えば、企業収益と雇用者所得の合計と考えられます─の推移を示したものです。名目所得は、リーマンショックによって大幅に落ち込みましたが、消費者物価と同様、「量的・質的金融緩和」導入以降、明確な増加に転じていることがみてとれます。国内で生産された付加価値を表す名目GDPは、はっきりとした増加に転じました。海外の事業活動から国内に還元された所得も含んだ名目GNI(国民総所得)については、企業の海外展開の拡大と円高の修正を受けて、より顕著に増加しています。これらの事実から明らかなように、「量的・質的金融緩和」導入以降の日本経済においては、「企業収益や雇用・賃金の増加・上昇を伴いつつ、物価が上昇する」という日本銀行が目指している姿が、まさに実現しつつあります。このように物価と名目所得の両方が上昇・増加するもとで、実質所

得も増加を続けています(図表5)。重要なことは、物価、名目所得、実質所得のいずれもが上昇・増加する姿に転換したということです。GNI

でみると、デフレ期には、実質所得は増加傾向を辿っていましたが、物価が下落を続けるもとで、名目所得は増加していませんでした。その結果として、企業や家計の支出行動が消極的なものになっていたことは、これまで繰り返し申し上げてきた通りです。 このように経済政策によって景気や物価のトレンドが大きく転換することは、歴史的にみてもそう頻繁に起きることではありません。私は、ちょうど 2年前、本席で「デフレ脱却の目指すもの」と題する講演を行いました。そ の際、人々の予想物価が短期間で大きく変化した事例として、1930 年代の米国の大恐慌期におけるルーズベルト大統領の「ニューディール政策」をご紹介しました。デフレ脱却に向けた強い決意が示され、金本位制から離脱する とともに大胆な財政政策が行われた結果、比較的短期間のうちに物価が反転上昇し、大恐慌に伴う激しいデフレは収束しました。図表6をご覧ください。物価と所得がV字型に上昇に転じる当時の様子は、その程度はもちろん異なりますが、「量的・質的金融緩和」導入に伴って我が国で生じた変化とよく似ています。この2年あまりで、日本経済は「レジーム・チェンジ」を実現しつつあるのです。

特に、本年度入り後、企業の賃金・価格設定スタンスに明確な変化がみられることは、物価の緩やかな上昇が一時的なものではなく、トレンドの変化であることを示しています。春の労使交渉では、2年連続のベースアップが 実現し、しかもベースアップを実施する企業の業種や規模には拡がりがみられました。価格改定の動きが拡がりと持続性を伴っていることは既に申し上げた通りです。これらは、企業や家計の物価観が、「物価は下がるものだ」と いうデフレ期のものから、「物価は緩やかに上昇する」というものに変化して きたことを示しています。

この点について、エコノミストなどの間では「このところの物価上昇は、 既往の為替円安に伴う輸入コスト上昇が主因であり、持続的なものとは言え ない」との声も聞かれます。しかしながら、「量的・質的金融緩和」導入以降 の物価上昇の大きさと持続性は、マクロ的にみて円安効果で説明できる範囲 を大きく上回っています。また、価格改定の動きは、為替レートの影響を受けやすい品目以外にも幅広く及んでいます。こうしたことを踏まえると、物価上昇の背景には、失業率の低下にみられるような経済全体としての需給バランスの改善と、企業や家計の物価観の変化があると考えるのが合理的だと考えます。

 

4.新たな成長ステージに向けた課題

「量的・質的金融緩和」のもとでの変化を踏まえ、次に、より長期的な視 点から、日本経済が置かれている状況を考えてみたいと思います。

バブル経済崩壊以降の日本経済は、2つの大きな課題に直面してきました。

ひとつは、バブル時代に蓄積された過剰債務、過剰設備、過剰雇用という「3つの過剰」の清算です。そしてもうひとつが、緩やかながらも非常にしつこいデフレからの脱却です。

ご承知の通り、このうち、「3つの過剰」については、既に解消されていま す。例えば、長年にわたって減少を続けてきた銀行貸出は、2006年には前年比プラスに転じました。所謂バランスシート調整、デレバレッジのプロセスは、この段階で概ね終了したものと評価できます。一方、もうひとつの課題であるデフレについては、15   年にわたって解消できませんでしたが、「量的・ 質的金融緩和」のもとで、デフレの脱却は確実に視野に入ってきました。すなわち、日本経済は、バブル経済の2つの「負の遺産」の清算を終え、およそ四半世紀振りに前向きな競争のスタートラインに立とうとしているのです。

ここで私が強調したいのは─やや意外に感じられるかもしれませんが─こうした日本経済の状況は、主要先進国の中でも有利であるという点です。グローバルな金融危機の震源地となった米欧では、金融危機の後遺症である 過剰債務(debt overhang)のもとで債務水準は 1990 年代に比べ

て高く、日本の経験からも示唆されるように、全体としてなおデレバレッジのプロセス が続くと考えられます(図表7)。

もちろん、日本経済は、新興国の台頭によるグローバルな競争の激化や、高齢化の進展に伴う労働力人口の減少といった各種の構造的な問題に直面し ています。しかしこれらの多くは、主要先進国に共通する課題です。「負の遺産」の清算を終えた日本経済にとっては、前向きな支出活動に取り組み、他 国に先んじてこうした構造的な課題に立ち向かえる好機と言えます。以下では、今後の大きな課題である「生産性の伸びの低下」と「労働力人口の減少」への対応について、申し上げたいと思います。

我が国において、バブル経済の後遺症が長引くもとで、生産性の伸びが大幅に低下してきたことは広く知られていますが、図表8が示すように、先般 の金融危機以降、米欧先進国も同様の問題に直面しています。最近の労働生産性の伸び率には、日米欧で目立った差はみられません。米欧において、今後、長期にわたって成長の低迷が続くのではないかという所謂「長期停滞論」(secular stagnation)が議論されているのは、こうした背景に基づくものです。

生産性の伸びの低下が世界的な現象であることは事実ですが、私自身は「長 期停滞論」には幾分懐疑的です。近現代における世界経済の歴史を振り返ってみると、生産性の伸びは必ずしも直線的ではなく、高成長の時期と低成長 の時期が繰り返されているように思います。1970 年代にも、生産性の伸びが 世界的に低下しました。その原因については、政策当局者や経済学者の間で、 オイルショックの影響や技術革新の枯渇など活発な議論が行われました。議 論はいまだに決着していませんが、はっきりしていることは、振り返ってみ ると、生産性の停滞には一時的な面があったということです。特に、米国経 済について、1980 年代に国際競争力が低下し、貿易赤字・財政赤字の「双子の赤字」に悩まされた後、1990 年代後半から 2000 年代初頭にかけては、いち早くIT革命の果実を享受して生産性の大幅な引き上げに成功し、「繁栄の 90 年代」(roaring ninetiesと呼ばれたことは、記憶に新しいところです。こうした長期的な視点に立てば、現在の世界的な生産性の伸びの低下につい ても、リーマンショック後に低下した各国の企業のコンフィデンスが回復する中で、企業家の創意工夫やイノベーションによって乗り越えられるものだと考えています。そして日本経済にとっては、各国が一線に並んだ今が反転 攻勢のチャンスです。

労働力人口減少への対応については、そのペースが他国を上回る我が国で は、特に喫緊の課題です。これは、個々の企業レベルでは、人材の奪い合い が激化することを意味しています。この3年間、女性や高齢者などの労働参 加が増加していたにもかかわらず、人手不足は深刻化しました(図表9)。今 よりも多くの企業がデフレ期のマインドセットから転換し、積極的な行動を 採ることになれば、人材をめぐる競争はもっと激しくなるでしょう。労働市場や働き方の改革など政策的な対応についても、個々の企業の人材確保についても、時間的な余裕はありません。

設備投資と人材への投資をどう組み合わせて、経営資源の最適な配分をグ ローバルに実現していくのか、これは皆様が日々深く考えておられる経営戦 略そのものだと思います。私に付け加えられることは多くは無いのですが、ひとつだけ申し上げるならば、私には、世界の情勢と日本の環境は、「今、決断すべき時期になってきているのではないか」と、私たちの全てに迫っているように思えてなりません。私は、日本の企業や家計がデフレ期のマインドセットの中に沈んだままで動いていないとは全く思っていません。「量的・質 的金融緩和」のもとで、デフレマインドは着実に転換してきています。海外子会社の投資やM&Aなどを含めれば積極的な投資を実践している企業や業 種もみられます。皆様の中にも、既に行動を起こされている企業はたくさん あると承知しています。むしろ、日本経済の置かれた状況を考えれば、そうした積極的な動きをさらに拡げていくべき重要な時期、クリティカルな時期 にある、と申し上げたいのです。

 

5.量的・質的金融緩和を補完するための措置

こうした認識を踏まえ、日本銀行では先週の金融政策決定会合において、いくつかの新しい措置を導入しました。まず第1に、日本銀行は「量的・質的金融緩和」の中で年間約3兆円のペースでETFの買入れを行っていますが、これに加えて 3,000 億円の買入れ枠を新設し、「設備・人材投資に積極的 に取り組んでいる企業」を対象とするETFの買入れを行うこととしました。 新たな枠に基づくETFの買入れは、来年4月から開始する予定ですが、当初は、JPX日経 400 連動型のETFを買入れることとします。今後、新たな株価指標やファンドの組成に向けて、市場関係者において前向きな取り組 みが進んでいくことを期待しています。具体的な買入対象基準の策定に当たっては、市場関係者からのご意見なども参考に幅広い観点から検討を進める予定ですが、設備投資額や雇用者数・給与支払額といったことだけでなく、生産性・効率性の向上に努めている企業や、働きやすい職場環境作りに積極 的に取り組んでいる企業など、様々な観点・アイデアがあるのではないかと思います。資本市場の役割は、将来の収益を生み出す力のある企業を評価し、そこにリターンを求める投資家と結び付けることにあります。我々の買入れは市場の規模に比べれば大きな金額とは言えませんが、企業の皆様にも、ひとつの問題提起として受け取って頂ければと存じます。

また、2010 年から実施している成長基盤強化支援資金供給についても、「設 備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」に対する投融資について、より利用しやすい制度とすることを検討しています。政府では、「生産性向上設 備投資促進税制」や「所得拡大促進税制」など、設備・人材投資を促進するための各種の優遇税制を実施されていますが、こうした制度の適用対象企業に対する投融資について手続きを簡素化することなどを予定しています。

日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に 持続するために必要な時点まで、「量的・質的金融緩和」を継続します。今後 とも毎回の金融政策決定会合において、経済・物価の現状と先行き、様々なリスク要因、金融資本市場の動向などを十分吟味し、政策判断を下していきます。そして、2%の「物価安定の目標」の早期実現のために必要と判断すれば、躊躇なく対応します。先週の金融政策決定会合においては、この面でも対応を行いました。すなわち、日本銀行は「量的・質的金融緩和」のもとで大量の国債などを買入れていますが、こうした資産買入れをより円滑に進めることができるようにしました。具体的には、日本銀行が多額の国債買入れを進めるもとで、金融機関の国債保有額は減少しています。金融機関にと って、国債は日本銀行からの借入や市場における各種取引の担保として用いられているため、担保不足を指摘する声が聞かれていました。こうした状況 を踏まえ、金融機関の外貨建て証書貸付債権を新たに日本銀行の適格担保とするとともに、住宅ローン債権について、債権流動化に当たって民間実務で広く行われている方法を参考に、多数の住宅ローンを一括して信託受益権としたうえで担保として受け入れる制度を導入することとしました。この点に 関連して、一点お願いですが、日本銀行は従来から円建ての「企業向け証書 貸付債権」を担保に金融機関に貸出を行っています。ただ、担保差し入れに当たっては、債務者企業からの異議なき承諾が必要となりますので、取引先 金融機関から要請があったときには、ご協力頂ければと存じます。

また、日本銀行は、保有国債の残高が年間約 80 兆円のペースで増加するよう国債買入れを行っていますが、来年は、今年に比べて保有国債の償還額が 増加するため、グロスベースでの買入れ額が増加する見通しです。こうしたもとで、国債市場の流動性に配慮しつつ、買入れをより柔軟かつ円滑に実施するために、国債買入れの平均残存期間を従来の「7年~10 程度」から「7年~12 年程度」に長期化し、かつ幅をもたせることとしました。

こうした一連の措置は、それ自体は所謂「追加緩和」ではありませんが、 資産買入れを一層円滑に進めることを可能にすることで、先行き「量的・質的金融緩和」をしっかりと継続し、また、必要と判断した場合に「調整」することができるようにするものです。

 

6.おわりに

「量的・質的金融緩和」を導入して2年半が経過しましたが、当初は、デ フレからの脱却や2%の「物価安定の目標」の実現について、多くの人が懐 疑的でした。今なお、懐疑的な方々もいらっしゃるかもしれません。 しかし、さきほど図表4でお示ししたように、「量的・質的金融緩和」のもとで、景気・ 物価のトレンドは明確に反転しました。これは、疑問を挟む余地のない事実です。

ローマ時代に遡ることわざに、Fortune favors the bold”「幸運は勇者を好む」がありますが、転換期を迎えた現下の日本経済に非常に相応しい金言で あると思います。来年は、新たな成長のステージに向けて行動すべき年になると考えています。最後に、日本銀行として、デフレから脱却し、2%の「物価安定の目標」を実現するために「できることは何でもやる」ということを改めてお約束して、締めくくりとしたいと思います。ご清聴ありがとうございました。どうか良いお年をお迎えください。

       以上

 

Ⅲ.COP21で「パリ協定」採択

 パリで開かれた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)において、1997年の京都議定書以来18年ぶりとなる法的枠組みとして「パリ協定」が2015年12月12日夜(日本時間13日未明)に採択された。

 

2020年以降の地球温暖化対策として、(1)世界の平均気温の上昇幅を産業革命前に比べ2度を十分下回るようにし、1.5度未満に抑えるよう努力する、(2)長期目標として、今世紀後半に温室効果ガスの人為的な排出と森林などの吸収が均衡する(実質ゼロになる)ことを目指し、主要排出国を含むすべての国が温室効果ガス削減の自主目標を5年ごとに提出・更新する、(3)途上国の対策に対して先進国が引き続き資金を提供すると共に、途上国も自主的に資金を提供する、などが挙げられる。

 

京都議定書では、温室効果ガスの削減義務が先進国など一部の国と地域だけで、今や世界一の温室効果ガス排出国である中国は含まれておらず、米国は批准しなかった。しかし、今回は参加した195カ国と1地域(欧州連合=EU)すべてが削減目標を自己申告することになった。

 

各国が申告した目標値は、中国が2005年比で2030年までにGDP当たりの二酸化炭素(CO2)排出量を60~65%削減、米国は2005年比で2025年までに26~28%削減、インドは2005年比で2030年までにGDP当たりのCO2排出量を33~35%削減、ロシアは森林による吸収量を最大限に算入できることを前提として1990年比で2030年までに25~30%削減、欧州連合(EU)は1990年比で2030年までに40%削減、日本は2013年比で2030年までに26%削減としている。

 

日本では来年4月から電力自由化も行われる。一般家庭でも、CO2を排出しない太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる電気を買うことができるようになる。今回のパリ協定を受け、こうした再生可能エネルギーによる電気の割合が増えていくと予想される。太陽光や風力は天気によって発電量が不安定であるため、エネルギー・マネージメント・システム(EMS)の研究も進めていく必要があるだろう。

 

Ⅳ.平成28年度予算政府案

16年度予算案を閣議決定:一般会計96.7兆円 4年連続過去最高

 政府は24日、2016年度予算案を閣議決定した。国の予算の基本的規模を示す一般会計の歳出総額は96兆7218億円と4年連続で過去最高を更新した。安倍晋三首相が掲げる「一億総活躍」の関連政策もあり、社会保障費が膨らむ。来年夏の参院選を控えて公共事業費を4年連続で増やすほか、中国の台頭を意識して外交・防衛費も手厚くする。税収は25年ぶりの高水準を見込むが、歳出の切り込みはほぼ手つかずで財政健全化に課題を残している。

 政府は来年1月4日召集の通常国会に提出し、3月末までの成立を目指す。総額は15年度当初予算に比べて0.4%多い。12年度予算にあった年金の国庫負担をめぐる会計上の影響を除いた場合、09年度予算から8年連続で過去最高を更新する。

 医療や介護などの社会保障費は31兆9738億円で15年度当初と比べ4412億円多い。高齢化に伴って年金に約11兆円、介護に約3兆円とそれぞれ1.7%、3.6%伸びる。来年度予算案の最大の焦点だった医療機関が受け取る診療報酬は8年ぶりの引き下げとなったが、保育施設の増設やひとり親家庭に配る児童扶養手当の増額で社会保障費の増加が進んだ。麻生太郎財務相は記者会見で「子育て世代への政策は結構充実させることができた」と強調した。

 公共事業費は5兆9737億円と15年度当初に比べて26億円増やす。増額は4年連続だが増加率は2年連続の0.04%。財務省幹部は「財政事情は厳しく増やせないが、政治的に減らしにくい」と言う。農道や用水路などのインフラの老朽化に使う「農業農村整備事業」を増やす。参院選や環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意を受けて与党から増額を求める声が強かった。

 税収は57兆6040億円と実績ベースでバブル崩壊直後の1991年度以来、25年ぶりの高水準になる見通し。経済成長で法人税収や所得税収が伸びると見込んでいるためだ。この結果、新しい借金となる新規国債の発行額は34兆4320億円と6.6%減る。

 借金で歳出をどれくらい賄うかを示す国債依存度は35.6%に下がる。15年度当初予算に比べて2.7ポイント低く、リーマン・ショックが起きた08年度の水準にようやく改善する。政策経費を税収でどれぐらい賄えているかを示す基礎収支の赤字は10兆8199億円と2.6兆円減る。

 ただ政府は6月末に決めた財政計画で20年度に基礎収支の赤字をゼロにする目標を掲げており、実現への道筋はなお不透明だ。国と地方が抱える借金は16年度末に1062兆円となり、15年度末から21兆円増える見込み。日本経済の規模を示す国内総生産の2倍にあたり、財政状況が主要国で飛び抜けて悪い状況が続く。

 

Ⅴ.米FRB、利上げを決定 9年半ぶり ゼロ金利政策を解除

 米連邦準備制度理事会(FRB)は16日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を現在のゼロ金利状態から0・25%引き上げることを全員一致で決めた。米国の利上げは2006年6月以来9年半ぶりで、7年間続いたゼロ金利政策が解除される。08年9月のリーマン・ショック後に深刻な景気低迷に苦しんだ米国経済は大きな節目を迎えた。

 FRBのイエレン議長は記者会見で「景気を支えるためにゼロ金利を維持し続けた特殊な7年間の終わりだ」と述べ、米国の金融政策が大きな転機を迎えたことを強調した。また「今回の決定は米国経済が強くなり続けることへのFRBの自信を反映したものだ」とも述べ、米国経済の先行きに強気の見通しを示した。

 FRBは17日から、これまで年0~0・25%だった短期金利の指標フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を年0・25~0・50%に変更する。ただしイエレン議長は「今回の利上げ後も金利は低いままだ」として、金融市場が過度な反応を示すことを改めて牽制している。

 米国の11月の失業率は5・0%で約7年半ぶりの低水準を維持し、就業者数も堅調な拡大が続く。一方、物価上昇率は昨年秋以降の原油安の影響を大きく受けているエネルギー価格や食品価格を除いたコアベースでも1・3%で、FRBが目標とする2%を下回っているが、イエレン議長は雇用の改善などを理由に「物価上昇率が2%に向かう合理的な確信が得られた」としている。

 FRBの利上げは06年6月に政策金利を0・25%引き上げ、年5・25%としたのが最後。低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)問題の拡大を受けた07年9月からは利下げ局面に入り、リーマン・ショック後の08年12月には政策金利を年0~0・25%とするゼロ金利政策を導入していた。

 お勧め記事:参考2;日本は蘇るか?経営者が知っておくべき「経済の新潮流」

      出典:http://diamond.jp/articles/-/82690

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