超高齢化時代の到来と認知症対策

   

1.はじめに

 ハーバード大学の医学校のサイトに、認知症のフィンランドの研究-観察の結果の記事が出ていましたが、認知症の根本治療法はまだなく、進行を遅らすのがせいぜいだ程度の知識しか有していませんでした。しかし、75歳の吾輩の周辺でも、それらしき方々が散見され始め、他人ごとではなくなってきた昨今、我が国では、ご案内の通り、2015年1月に策定された認知症施策推進総合戦略(新オレンジ計画)では、根本治療の開発プロジェクトを掲げていること、認知症のお年寄りが起こした事故等の親族の賠償責任についての最高裁判決が出たこと等から、現状について少し勉強してみます。

 認知症の症状は同じようでも違いがあり、症状により治療法も違うとか、個人差があるので、万人に効果がある予防法、治療法が求められているようですが、それには、相当な時間がかかるような気がします。

現時点では、フィンランドの研究が示唆している次の記述に注目したい;

 4つのステップ―健康的な食事をし、定期的な運動をし、付き合いをし、あなたの脳に刺激を与える―は、あなたが年をとっても、あなたの精神的なスキルを向上させることができるというものです。

『これらの全てを自分なりに実行し続けると、精神的なタスクを実行する際に(頭を働かそうとする時に)、減少している認知能力を維持するだけでなく、それはまた、推理能力と精神的なタスクを行う速度を向上させることが示されました。』とされているのに、注目しました。

吾輩は、これを素直に受け止め、家族を含めて迷惑をかけないためにも、生きがいを自覚し、それを楽しむだけでなく、人や生き物(自然)との接触を維持しながら、できる限り自分のことは自分でやる体力を維持する努力をして、自分の命を全うするのは、他の生き物と同様、人間としての生き物の義務でもあると考えます。基本は自己責任なのでしょう。人間であるからこそ、尊厳死を認めてもよさそうですが、それはファミリーの中で解決してきたのが日本民族だった気がしますが・・・それを、地域またはコミュニテイー、最終的には国の責任とするのが、近代国家の条件なのでしょうか。

 

2.認知症とは?

 (1)認知症の大量発生

2014年の平均寿命は、男性81歳、女性87歳となり、過去最高を更新している。2050~2060年には65歳以上の高齢者は約40%に達すると見込まれている。(厚生労働省ホームページ参照)

 厚生労働省研究班推計によれば、2012年時点での認知症高齢者数は、軽度者を含め約462万人にのぼる。さらに「軽度認知障害」の約400万人を加えると、65歳以上の4人に1人(25%)が該当する。都市部においては、90歳以上の高齢者の50%を超える方が、程度の差こそあれ認知症になっていることになります。

(2)認知症とは?

 認知症の定義は、医学界新聞(医学書院)によれば「一度獲得された知的機能の後天的な障害によって、自立した日常生活機能を喪失した状態」とされている。 一言でいえば、「自分が物忘れをしたことが分からなくなっている」ことが、大きな違いと言えるようだ。

(3)「認知症」の症状

 認知症には、約7割を占めるといわれる「アルツハイマー型認知症」の他「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」が知られており、それぞれ症状も異なれば、原因も異なっている

認知症の原因が、遺伝子の変異や老化により不要なたんぱく質が分解されず,蓄積するためである以上、老化が進むにつれて認知症が進行することは避けられない。

(4)神経細胞が長生きだから、認知症は起こる

私たちの体の組織はそれぞれの機能を司った細胞から構成されており、組織や細胞はさまざまな寿命(ライフサイクル)をもっている。

 大部分の組織ではDNAの変異により細胞はがん化し、発見が遅れた場合には転移し、進行を止められなければ死に至る。一方、神経細胞は長いライフサイクルをもっており、特定の条件下でない限り、再生することもがん化することもないが、寿命が長い分、老化とともにタンパク質の生成と分解が正常に行われなくなる危険性をもっている。ただし、脳を構成する細胞には、神経細胞以外に、増殖能をもったグリア細胞等があり、これらはがん化し、脳腫瘍(グリオーマ)となる。

 つまり、誰にも訪れる老化とともに、認知症の原因として知られる「タウタンパク」や「アミロイドタンパク」の分解がうまくいかなくなり、脳の特定の領域に蓄積することで、さまざまな認知機能の異常が症状として現れてくる。

 さらに、先天的に遺伝子変異や認知症の危険因子(アポE3)を持つ人では、なおさらそうしたタンパク質が脳で蓄積する頻度は高くなるそうです。

 

3.治療法は?

(1)現時点で根本治療薬はない

 認知度を測定する試験でアルツハイマー病の発症前期である軽度認知(機能)障害(MCI;Mild Cognitive Impairment)と診断されると、記憶、決定、理由づけ、実行などの認知機能のうち1つの機能に問題が見られますが、日常生活には支障はなく、認知症ではありません。ただし、放置すると認知機能が低下し、5年間で50%近くが、軽度認知症へとステージが進むと言われています。  現在、認知症に用いられている治療薬は、蓄積する異常タンパク質を除去したり、異常タンパク質によって引き起こされる神経細胞死を防ぐことはできず、認知症を治す根本的な治療薬ではないのです。

(2)早期投与で進行を遅らせることはできる

 そこで、現在推奨されているのが、早期に発見し、これらの薬をなるべく早い段階から服用することで、認知機能が衰えるのを遅らせようとする治療法である。

約1年間にわたる調査で、有効成分を含まない偽薬(プラセボ)を投与した群と比べ、アリセプトを早期投与した群ではADL(日常生活動作)が高めに維持されることが分かっています。

 ADLの減少が50%になる日数を比較すると、プラセボ投与群が約30週に対し、アリセプト早期投与では約48週であり、認知症の衰えを1.6倍遅らせる効果あるということができる。

(3)MCIに「なる前」から脳内には変化が起きている

 実は、軽度認知障害(MCI)と診断される以前から、脳内に「タウタンパク質」や、アミロイドの異常分解物「アミロイドベータ(Aβ)」が蓄積してくることが最近分かってきている。現在使われている薬をMCIと診断される前から投与すれば、認知機能の低下を少しでも遅らせることができるかもしれないということで、早期発見の重要性と考える人がいるかもしれない。

 しかし、これらの薬剤には、嘔吐やめまいなど、さまざまな副作用があるらしいのです。

 

4.今後の研究への期待と現状への対応

2015年1月に策定された認知症施策推進総合戦略(新オレンジ計画)では、根本治療の開発プロジェクトを掲げている。(参考1参照)

 具体的には、蓄積する異常タンパク質を細胞外に排出し、細胞内で凝集させない方法や、蓄積したタンパク質を分解する酵素の働きを活性化する薬の開発や、血清中のタンパクを測定することで認知症の早期発見するプロジェクトも動き始めている。

 また、英国でも21世紀の国家プロジェクトとして、認知症の新規治療薬、早期発見法の開発が計画されている。

 動物実験では、作業仮説を支持するデータが報告されているが、根本治療薬が見つかるに至っていません。

 人類は21世紀に認知症を克服するかもしれない。しかし、待ったなしの超高齢者社会の日本における対応策が、根本治療薬の開発に努めながら、実在する認知症の人とともに生活する社会をめざす「新オレンジ計画」で取り組んでいるのである。

 

参考資料1 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)で推進する主なポイント(PDF:139KB)

 

 

5.認知障害と悪化の予防へのフィンランドの高齢者治療研究(FINGER)の概要

 

どうしたら認知機能の低下を防ぐことができるのでしょうか?次の全てのステップを組み合わせた戦略を試してみてください

4つのステップ―① 健康的な食事をし、② 定期的な運動をし、③ 付き合いをし、④ あなたの脳に刺激を与える―は、あなたが年をとっても、あなたの精神的なスキルを向上させることができます。

 

定期的な運動、良い食事新しい精神的な課題に取り組み、強い社会的なつながりを維持することは、それぞれがあなたの精神を維持するのに役立つことができます。:過去数年間の観察研究では、同じメッセージを繰り返しているように見えます。

最新かつ最も印象的な研究では、あなたがすべての4つのプラクティスに従うならば、あなたも失われた精神的な能力を取り戻すことさえできることを示唆していることにより、さらに一歩進んでいます。 認知障害と悪化の予防へのフィンランドの高齢者治療研究(FINGER)の結果は、そのすべてを実行することが、精神的なタスクを実行する際に、減少する認知能力を維持するだけでなく、推理能力と精神的なタスクを行う速度を向上させることが確認できました。

 

この研究に参加した人々等

FINGER研究は、-1260人の男性と女性が参加し2年間継続したものー、知力を維持する上でのライフスタイル治療処置の効果を評価するための最大かつ最長のランダムの比較試験です。参加者の年齢幅は60歳から77歳でした。参加者すべてが認知障害を開発するためのいくつかのリスク要因を持ってはいましたが、精神機能検査では正常範囲の得点でした。 平均して、彼らの血圧とコレステロールが少し高かったし、彼らは太りすぎでしたが、肥満ではありませんでした。

ボランティアを無作為に2つのグループに割り当てました。1組の参加者―研究グループ-は、個人栄養カウンセリング、理学療法士からの運動指導、および認知訓練を受けました。 彼らはまた、試験期間中7つの健康診断を受けました。 彼らは頻繁に料理教室、認知訓練、または運動指導のためのグループで一緒になりました。もう1つの参加者-規制グループ-は、3つの医療試験を受け、そこでは、彼らは一般的な健康アドバイスを受けました。 両グループは、研究の終了時に再び精神機能テストをうけました。

両グループとも改善を示したが、研究グループの全体的なスコアは、規制グループより25%高かったのです。 また、彼らは処理速度(応答時間)を測定する作業上では150%以上、実行機能(組織や推論)のテストでは83%以上規制グループよりも高い得点でした。 しかし、どちらのグループも、単語のリストを記憶する能力では改善しませんでした。

本研究の結果は、健康で、アクティブな、かみ合ったライフスタイルを追求するための追加の刺激を提供する必要があると、ハーバード大学附属ブリガム・アンド・ウィメンズ病院で神経内科医でアルツハイマー病に対処するハーバードガイドの著者スコット・マクギニス博士は述べています。 「ヘルシーな生活様式はすべての年齢の人々に利益をもたらすことができます。しかし、晩年の精神機能に大きな影響を持たせるためには、早期に始めなさい。」と彼は言います。

研究グループの人々が彼らの新しい生活習慣を維持するかどうかは見守らなければなりません。時の経過により、研究グループが、規制グループよりも軽度の認知障害や痴ほう症のより低い割合であるかどうかも不明です。 両方のグループは、2019年に再び試験と認知テストを受けることになります。

 

あなたへのメッセージは、ここにありますか?

あなたはおそらく、定期的な運動、地中海ダイエット、そして挑戦的な精神的な活動はあなたの知力の維持を助けることができることをすでに知っていました。 しかし、FINGERの研究は、それはこれらの実行を結合するのに役立つだけでなく、あなたがそれらを行う時にそれらを楽しむのに助けとなることを、私たちに教えてくれました。 参加者は、プレスによってインタビューされたとき、彼らはこのような良い時間を過ごしたし、彼らのトレーニンググループ内の他の人と友達になっていたので、彼らが研究を続けることができたと言いました。 研究は厳しいものでしたが、参加者のわずか12%が脱落しただけでした。1週間に3〜5の運動セッションだけでなく、2年間の栄養カウンセリングの10〜12セッションの栄養学のカウンセリングと144認知トレーニングセッションが含まれていた研修期間での出席率は、85%以上でした。

あなたが健康的な変更を行うことで問題を抱えているとしたら、料理や運動クラスは、あなたが始めるのに役立ち、友人の新しいサークルを開くことができます。家庭教師としてボランティアしたり、コミュニティ合唱団に参加したり、または政治運動に参加したりすることは、新しい知的な挑戦と社会的関与を提供することができます。 ライフスタイルを変える秘訣は、それらをするのを楽しむ方法を見つけることにあり、-そしてそれは、同じ目標のために努力している仲間のグループの中にあることが多いのです。

 

2016年2月1日

出典:http://www.health.harvard.edu/mind-and-mood/how-can-you-prevent-cognitive-decline-try-this-combination-strategy

                      以上

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