アメリカの社会保険番号物語を読むための準備運動

 アメリカの社会保険番号物語を読むための準備運動

 

はじめに;

ちょっと古い文献ですが、アメリカの社会保障庁の社会保障番号の実務家が、社会保障番号の誕生から、活用の拡大、悪用盗難等による紆余曲折を紹介しているので、我が国マイナンバー制度の普及の将来予測と、ナンバーを付けられた個人と、その活用を進める行政当局の取り組みでの注意点等を学ぶ上で参考になればと、訳してみました。我が国でも、地方自治体でのマイナンバーカードの、行政サービス(公立図書館等)での活用が試行されているので、番号の所有者の利便性はもとより、行政当局の効率化の観点からも前向きな取り組みを期待したいものです。

アメリカの社会保険番号の導入物語は、当サイトの、物語コーナーに近い将来掲載する予定です。 ここでは、アメリカの社会保険番号の現在の活用状況が分かる記事を紹介します。

 

1.社会保障番号を持つ目的

出典: The Purpose of Having a Social Security Number | Investopedia http://www.investopedia.com/articles/personal-finance/050615/purpose-having-social-security-number.asp#ixzz4q5jwNpPC 

エイミー・フォンティネル | 2016年10月17日

社会保障番号は 、それを申請するすべての米国市民および適格米国の居住者へ米国政府が発行する9桁の番号です。政府はこの数字を使って、生涯の収入と勤務年数を記録します。退職する時期が来たとき、または社会保障障害給付を受け取る必要があるときは、あなたの社会保障の賦課金に関する情報を使用してあなたの受給資格を決定し、給付額を計算します。ほとんどの人は同じ社会保障番号を一生使いますが、ある人はアイデンティティ盗難のためにある時点で交替番号を申請する必要があります。あなたが、社会保障番号が必要なときと必要な理由とともに、なたがそれを使用するのを避けるべきときについてもっと知るために読んでください。

 

社会保障番号が必要な場合と理由

あなたが新しい仕事に就職する時はいつでも、あなたの雇用主は社会保障番号を求めます。あなたの雇用主の経理部門は、あなたの収入を内国歳入庁に報告し、社会保障庁に社会保障賃金を報告するために、この番号を使用します。州に所得税がない場合を除いて、雇用者は州所得税のための報告にもそれを使用します。従業員が合法的に米国で働くことができるようにするプログラムであるE-Verifyに加入している雇用主も、仕事を始める前にあなたの社会保障番号を取得する必要があります。

 

あなたの社会保障番号を提供する必要がある次のような場合があります。

 

米国の金融機関で口座を開設するとき。 1970年以来、連邦政府は銀行に顧客の社会保障番号を入手するよう要求してきた。金融機関はあなたのSSNを使ってあなたの信用をチェックし、あなたの利子と投資の収入や損失をIRSに報告し、税金控除可能な住宅ローンの利子をIRSに報告し、あなたの口座を管理します。代わりに、一部の金融機関は、IRSを通じてあなたが申請する必要がある納税者識別番号(幾つかの様式では、雇用者識別番号またはEINとも呼ばれます)を受け取ります。

 

連邦融資を申請するとき。政府は、あなたの社会保障番号を使用して、連邦学生ローンなどの連邦ローンを申請する際に資格があることを確認します。例えば、連邦学生ローンの資格を得るためには、別の連邦ローンで債務不履行になってはいけません。市民権または滞在者資格が必要です。ほとんどの男性の申請者はセレクティブサービス(兵役)に登録していなければなりません。

 

特定の種類の公的援助を申請するとき。失業給付や社会保障障害所得などの公的支援プログラムは、通常、社会保障番号を使用して人々を特定し、彼らが権利を与えられていない給付を請求していないことを確認する連邦政府機関または州政府機関によって管理されています。

 

メディケアに登録するとき。社会保障庁は、メディケアとメディケイド・サービスのセンターと協力して、メディケアに人を登録します。

 

パスポートを申請するとき。連邦法では、米国のパスポート申請時に社会保障番号を提示する必要があります。SSNをお持ちでない場合は、アプリケーションの処理が遅れることがあります。あなたが発行されているが、提示していない場合は、$ 500の罰金を科すことができます。

 

あなたの納税申告書に。IRSはこの数字を使用して、納税申告書に記入した所得を、雇用主および金融機関があなたに支払ったと報告した所得と照合します。また、あなたの子供のSSNを提供して、あなたの納税申告書の扶養者としてあなたの子供を請求する必要があります。

 

運転免許証を取得するために。SSNをお持ちの場合は、運転免許証の申請時にSSNを提示する必要があります。

社会保障番号を持たない非市民は、運転免許取得、学校への登録、民間健康保険の取得、住宅補助などの公共援助の申請を含む、通常必要とする多くの状況で社会保障番号の提供を免除されます。政府は、米国で働くことが許可されていない非市民に社会保障番号を与えることを好みません。銀行や与信会社でさえも、あなたが持っていなければ社会保障番号を提供する必要はありません。しかし、この番号がなければ、金融機関はあなたに信用調査を行うことができなくなり、クレジットカードやローンを取得することが不可能ではないにしても困難になる可能性があります。

 

社会保障番号の使用を避ける場合

連邦法は基本的に誰でもあなたの社会保障番号を求めることができますが、それはあなたがそれを与える必要はありません。できる限り数少ない場合に、あなたの社会保障番号を使用するように心がけるべきです。誰かがそれを求めているからといって本当にそれが必要なわけではありません。たとえば、ほとんどの医療提供者はそれを求めますが、医療書類を記入する際には、あなたの社会保障番号を空欄にしておくことを忘れないようにしてください。医師の事務所や他の企業は、あなたを特定し、記録を追跡するために他の情報を使用することができます。あなたの社会保障番号の提供を拒否することはできますが、相手方はあなたとの取引を拒否することもできます。

また、新しい仕事を開始するための書類を記入していて、雇用主に提示しなければならない場合など、その日の特定の目的に使用する場合を除いて、あなたの社会保障カードを持ち歩かないでください。市民権の証明(有効なパスポートを提示することができれば、あなたは社会保障カードを提供する必要はありません)。泥棒は、あなたがきれいにするべき潜在的に大量の個人情報の盗難の問題を作り出しながら、他の個人データと組み合わせてこの番号を使用してクレジットを申請したり、ローンを取ったり、仕事をしたり、あなたの名前でヘルスケアを受けることができるので、あなた方は、カードを失う危険性や盗難の危険を望んではいません。代わりに、カードを自宅の安全な場所や、銀行の貸金庫に保管してください。あなたのカードが紛失または盗難された場合は、新しいカードを申請することが求められるでしょう。

(詳細については、あなたの社会保障IDカードを取りかえるためのステップと社会保障フォームSS-5の目的をお読みください。また、個人情報の盗難:それを避けるための方法に関心が起きます。

同様に、納税申告書などのSSNを含む文書はすべて安全な場所に保管してください。誰かがあなたの家に侵入した場合、彼らがあなたのアイデンティティではなくあなたの持ち物だけで逃げてくれれば、あなたにとっては良いでしょう。また、あなたの社会保障番号を含む電子文書を慎重に護る必要があります。あなたのラップトップであなたの税申告書の暗号化されていないPDFを持っている場合、あなたが旅行やコーヒーショップであなたとあなたがコンピュータと一緒である限り、あなたは、実質的にあなたの社会保障カードを持ち歩いているのです。

 

結び

政府が1936年に社会保障番号を導入したとき、それは個人を識別し追跡するために広く使われることを決して意味するものではなかった。今日、この番号は、当初の目的(生涯収益の追跡と社会保障給付の計算)から、当座預金口座の開設、または医者の診察室での新しい患者様式への記入まで、あらゆる目的に使用されています。多くの企業では、お客様の社会保障番号は、顧客を識別するのに便利な方法であるため、簡単にあなたの社会保障番号を尋ねます。残念ながら、犯罪者はあなたの社会保障番号を使って個人情報の盗難をねらっていますので、あなたの社会保障番号を慎重に守り、絶対に必要なときにだけに提供するよう注意しましょう。

 

2.アメリカハーバード大学卒業の芸人パックンのちょっとマジメな話

マイナンバー歴44年の僕から一言

出典: http://www.newsweekjapan.jp/pakkun/2015/10/44.php

2015年10月09日(金)17時05分

社会保障番号(SSN)を悪用した成り済まし詐欺はアメリカで多発している。 あなたのマイナンバーは届いたかな?

 実は僕、皆さんより一足先にマイナンバーを持っているんだ。なんと44年前からね。

 ということで今回は”マイナンバーの先輩”として色々話させてもらいましょう。

 もちろん、僕が持っているのはアメリカのものだから、正確にいうと「マイナンバー」ではない。アメリカの場合はSocial Security Number(社会保障番号、略してSSN)と呼ばれている。

 考えてみれば英語で「マイナンバー」とは「私の番号」という意味。”Can I have your my number?”(あなたの私の番号を教えてください)は、結構ばかばかしいセンテンスとなってしまう。日本の役所の方々は英語でやり取りするときはどう対応するのかな?

 時は1936年、大恐慌の真っ最中だった。ニューディール政策の一環として発足した社会保障プログラムに合わせ、SSNは発行された。当時は年金の管理用だったが、徐々に用途が拡大。税金を払ったり、仕事をしたり、銀行口座を開いたり、クレジットカードを申し込んだり、大学に通ったりする際になど、アメリカの生活上のあらゆる場面でSSNが必要となった。

 僕が初めて来日したとき、こういう番号制度がないことにかなり驚いた。首都圏では全駅が自動改札。便座が暖かい。自動販売機がしゃべる。色々な面で世界の文明国をリードしているのに、国民番号がないなんて!

 マイナンバー制度の利便性はわかりやすい。管理がしやすくなるだけではなく、国民が得することも多い。たとえば、厚生労働省と財務省の連携がスムースになったら、脱税の取り締まりが進み、税収が増える見込みとなる。その税金の使い方が正しければ国民が喜ぶ。また、厚生労働省と法務省の連携によって不法労働者の取り締まりも進むはず。正規に働いている人にとっての雇用条件が良くなれば、また国民が喜ぶ。たとえば、労働資格を持っていない外国人が日本でお笑い芸人になったら、僕は取り締まってほしいと思う。まあ、そんな人はいないと思うけどね。厚切りジェイソンさんとかは絶対大丈夫だ!…と思うけど。

 マイナンバーの先輩である僕は、利点をよくわかっているつもりだ。しかし、番号制度の暗黒面も痛感している。というのは、アメリカではSSN制度のもとでidentity theft(身元窃盗=成り済まし詐欺)が蔓延しているからだ。

 identity theftは、制度が生まれたばかりの頃から始まっている。有名なのは1938年の出来事。ある財布メーカーが、新作財布のカード入れにダミーのSocial Security Cardを入れて販売することにしたのが発端だ。そのカードに載っていた番号は社長の秘書ヒルダさんのSSN。つまり、本物だった!

 全国のチェーン店で財布が発売になった瞬間から、詐欺事件が頻発。当時はSSNに対する知識も浅くて、「お財布を買えばこのSSNがもらえるんだ~」と勘違いした人も含めて、ヒルダさんのSSNを誤使用した人は全部で4万人を超えたらしい。全国各地が偽ヒルダだらけになった。

その後もidentity theftは増える一方だ。詐欺師の手に渡ったら、さまざまな場面でSSNが悪用されてしまう。

 たとえば、金融関係。盗んだSSNで銀行口座を開いたり、クレジットカードを作ったりできる。小切手やカードで買い物したあと、請求書はSSNの持ち主、つまり被害者に届く。SSNが盗まれたことに気づくのはそれを見た瞬間のこと。「あら? 俺、車を買っちゃった? 運転免許もないのに?」とか、「あら、ジャスティン・ビーバーのコンサートチケット?」とか、ありえない買い物で初めて発覚するようだ。

 また、毎年春には詐欺師が成り済まし確定申告をするのが恒例行事。勝手に住所変更手続きをし、税務署をだまして還付金を受け取るという手口だ。もちろん当該の還付金は被害者に届かない。また、年金の場合も、本人より先に申し込んで同様に住所変更し、給付を代わりに受け取るという手口がある。素早く手続きや申告を済ませる詐欺師のマメさにもびっくりするが、大変な被害だ。

 医療関係でも詐欺が多い。病院で成り済まして治療を受けることもある。もちろん請求は被害者へ。さらに恐ろしいのは、被害者の治療歴が変わってしまうこと。たとえばアレルギーや血液型が記載されてしまったら本当に危険。

 でも、これに限っていえば、日本はマイナンバー制度による危険性は増えないはず。日本では保険証に顔写真が載っていないから、もともと成り済ましのリスクにさらされている。安心だね!

 identity theftに遭ったら、解決の責任は被害者にあるのも厄介だ。請求先、病院、銀行、政府などとやりとりしなければならない。解決するのに数年かかったりするらしいし、その間、ローンを借りたり、カードを作ったり、家を買ったりするのは大変困難になるという。

 そこで立ち上がったのが、identity theftから守ってくれる会社。有名なのは、顧客を詐欺から守り、万が一詐欺に遭っても100万ドルの補償金を約束するLifeLock社だ。大胆な広告手法をとり、社長の顔写真とともに本人のSSNを堂々と看板やウェブサイトに載せた! 普段は考えられない、あまりにリスキーな行動だけど、それぐらい自社の保護サービスは安心できると社長は身体を張ったわけだ。

 ちなみに、広告の効果が抜群だったのか、社長はこれまで13回も詐欺被害に遭っているという。どうやら自分すら守れていない様子。しかも広告の内容が虚偽だとされ、1200万ドルの罰金を科された。お前が詐欺師じゃん!

 アメリカ政府も国民を守れているとはいえない。毎年数百万人ものアメリカ人が被害に遭っている。しかもそのSSNが悪者の手に渡るのが、政府のせいだったりすることも度々。日本でも6月に日本年金機構のパソコンから125万人分の個人情報が流出したよね。これもひどいけど、ここでもまた、先輩アメリカの方がすごい。7月に政府のデータベースから2100万人のSSNが盗まれた。

 「どうしてくれるんだ」って? これが、何もしてくれないんだ。

実際に悪用されたことが証明できるまでは新しい番号を発行してもらえない。こうした実態を受けて、Social Security Number(社会保障番号)をSocial Insecurity Number(社会不安番号)と呼ぶ人もいる。主に駄洒落好きなオヤジだけどね。

 日本でのマイナンバー制度導入の前に、先輩としていくつかの疑問を挙げたい。

 

 ・国民を管理するのには便利だが、管理している側を誰が管理するのか?

 ・番号一つでどこまで個人情報を引き出せるようになるのか?

 ・詐欺に遭った被害者はどう対処されるのか?

 ・そもそも詐欺防止対策はどうなっているのか?

 僕は、この最後の疑問が一番気になる。確かに日本のカードには希望すれば顔写真が載ったり、ICチップが埋め込んであったりして、ちょっとは進化している。だが、今のご時世、番号が書いてある紙一枚を持ち歩くようにするなんて! プライバシー保護のために、21世紀の技術をもっと使う手はなかったのかな? 暗証番号があってもいいかもしれないし、二次元バーコードやQRコードにできるかもしれない。スマートフォンの中に保管するようにしたらロックをかけることもできるかもしれない。

 そもそも「スーパーのレジに提出する」という話が出た時点で、マイナンバーの恐ろしさを理解していないと感じる。

 確かに世界に比べれば国民番号制度を導入するのが遅いけど、それはある意味チャンスだ。先輩がいる分、成功例や失敗例の資料がいっぱい揃っている。ちゃんと参考にしてほしい。

 世界に倣う前に、習うべきだ(僕も駄洒落好きなオヤジだね)。   先輩からは以上です。

 

大変便利なものには、害もあるものが多いことは、もろ刃の刃に限ったことではないのでしょうが,「馬鹿と鋏は使いよう」の知恵もある我々に、マイナンバーの有効利用ができないはずはない、できないとするならば、その阻害要因をとことん議論すべきでしょう。官民双方からの情報の漏洩がある限り、個人が情報提供に抵抗を感じるのも当然ことなので、機密性の確保が絶対条件であることは確かでしょう。

それにしても、住民基本台帳カード、健康保険証、年金手帳、運転免許証、クレジットカード等々、便利すぎるのも、シンプルに生きようとする吾輩にとっては、ますます住みにくくなっているような気がしてなりません。便利になった分だけ、時間が有効に使われているのか?と考えると、何とも言えない無駄なことばかりやっている人間を、できればカードに閉じ込めたほうがいいような気がして考え込んでいるうちに、今年の夏休みも終わりを告げそうです。                

                                                                                                                                                                                                  ではまた

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