OECDにおけるデジタル経済に対応した国際課税ルールの見直し

 

はじめに;作業計画の公表

昨年5月経済協力開発機構(OECD)は、デジタル経済に対応した国際課税ルールの見直しを巡り、2020年末までの具体的な作業計画を公表しました。サービスの利用者がいる国により多くの法人税収を配分する仕組みや、法人実効税率に関する各国共通の「最低税率」について、201月までに大枠合意することを目指すとしました。

見直し作業は20カ国・地域(G20)の指示を受けてOECDが進めています。20年末までに最終合意することが目標とされています。

作業の柱の一つは、企業が工場や支店など物理的拠点を置かない国は原則として企業に課税できないというルールの見直しです。経済のデジタル化で従来の原則が成り立たない場面が増えている。企業の拠点がない国でも課税できるようルールを拡張するものです。

拠点がない国が課税する際の法的な根拠や税収の配分方法を巡っては、米国・英国・新興国から3つの案が出されており、201月までにこの3つの案を1つに統合することを目指すこととされました。

柱の2つ目が、国家間の税率引き下げ競争を防ぐための「最低税率」の導入です。「最低」をどの程度の水準に設定するかや、最低税率を下回った国で発生した収益を本国に付け替えて課税する場合の方法などについても、201月までに大枠をまとめることとされました。

作業計画では論点ごとに課題を提示した。OECDの専門家でつくる作業部会に対し、技術的な検討を進めるよう指示しました。

 

2.事務局案での大筋合意

経済協力開発機構(OECD)は、2020131日、経済のデジタル化に対応した国際的な法人課税ルールについて、約140カ国・地域がOECDの事務局案で大筋合意したと発表しました。グローバル企業からの税収を一部、消費者のいる国に配分することが軸となる。各国は年内の最終合意を目指すが、対象となるモノやサービスの線引きなど具体論での溝はまだ大きい。

昨年10月にOECDが示した事務局案について大筋で合意し、20カ国・地域(G20)を中心とした政治的な調整段階に進むことを確認した。7月に再び全体の会合を開き、2020年中の最終合意を目指す。

OECDのグリア事務総長は31日に公表したコメントで「デジタル経済による税の問題は喫緊の課題」とした。その上で「合意に失敗すれば各国が独自課税に走り、脆弱な世界経済にさらに悪影響を及ぼす」と述べた。

事務局案の新ルールはグローバル企業の利益のうち利益率10%を超えた部分にかかる税を、国別の売上高に応じて各国が分け合うというものだ。対象となるのは「対消費者ビジネス」で、世界での連結売上高が75ユーロ(約900億円)を上回るグローバル企業を対象とする方向で議論が進んできました。

今回の会合で各国は、対象に「自動化されたデジタルサービス」も加える案にも合意しました。具体的には検索やSNS(交流サイト)、クラウドサービス、オンラインゲームなどを例示しました。米グーグルやアマゾン・ドット・コムの法人向けサービスも含めて対象になるようにする狙いがある。

事務局案のもう一つの柱は、世界で法人税の「最低税率」を導入することだ。企業の海外子会社の税負担率が最低税率を下回れば、差額を親会社の所得とみなして本国の当局が追加で課税する。約140カ国・地域は、この構想についても大筋で合意しました。新ルールを機能させるには、多国間の租税条約も必要になる。

 

3.今後の課題

今後の課題は、対象となるモノやサービスの線引きなどの具体論、最低税率を下回わる差額を親会社の所得とみなして、本国の当局が追加で課税する場合の方法論、最低税率にも対立が残っており、交渉の関係者は10%台前半が有力とみるが、税負担率の計算に優遇措置を含めるかどうかなども決まっていない。新たな難題もある。米国が昨年末、企業側が現行ルールと新ルールのどちらに従うかを選べるようにすべきだとした「選択制」の提案だ。企業がどちらか有利な方を選べるようになると、新ルールが骨抜きになりかねない。この提案は米国のムニューシン財務長官がOECDに書簡で伝えたもので、関係者によると、新たなルールに従うかどうかは企業に選ばせるべきだと主張しました。グローバル企業が現行ルールを選べば、新ルールは形骸化してしまう。OECD124日、グリア事務総長の名前で返信を公表し、事務局案で議論を進める方針を強調しました。30日までの会合ではこの案を却下はせず、実現可能性を検討することになったようだ。年内の最終合意への検討課題には、以上の様な対象となるモノやサービスの線引き等の問題に加えて、二重課税の扱いなどでの詰めが残っています。

  企業が複数国から課税される二重課税の扱いについては、ルールづくりを主導する経済協力開発機構(OECD)は、国家間で税収の取り合いが起きないように事前に取り分を調整する仕組みを検討する。多国間の協議体(パネル)の設置が柱だ。税収に影響する話はどの国も簡単には妥協できず、実現には課題が多い。OECDは二重課税が起きてからでは問題解決が長引くため、二重課税が発生しにくい仕組みの導入を検討している。多国間のパネルをつくり、どの国がどれだけ課税するかを事前に話し合う案を軸とする。

パネルに申請するのは、巨大IT、消費財メーカー、自動車メーカーなどグローバル企業が想定される。例えば、企業が新たなサービスを複数国で始める場合、その収益に対し、本社や各国支店がどれだけ貢献するかを報告し、パネルが各国における企業の活動を評価する。そのうえで、それぞれの国にどの程度の利益を配分するかを話し合うような仕組みだ。

パネルには各国代表の税の専門家が参加する見込みだ。常設機関とするか、案件ごとに設置するかなどの詳細はこれから話し合う。

やむを得ず企業に対する二重課税が発生した場合は、課税した国同士で話し合いによって解決することが基本になる。OECDはそれでも解決しなかった場合の対応策として、第三国も参加した「国際仲裁」を選択肢としている。

これには「先進国に有利な判断が出る」と懸念する新興国が強く反対している。国際仲裁では欧米の経験豊かな弁護士などが仲裁人として選ばれることが多いためだ。国民の税負担を「外国」の判断で決めることが憲法違反になる北欧諸国やアフリカ諸国も仲裁案に反対している。

いったん二重課税が発生すると、長期間にわたりその状態が続くケースも珍しくない。OECDは二重課税の予防に比重を置くことにした。事前協議の課題を洗い出し、実効性がある対策を各国と協議する。

 

おわりに;

OECDでの検討の一方で、デジタル企業の売り上げに一方的に課税する「デジタルサービス税(DST)」導入の動きが広がっています。注目されていたフランスは、米国から報復関税を通告されたことでDSTの一時休止を決めた。だが英国やイタリアのほか、トルコやニュージーランド、オーストリアなどでも国会での導入議論が進み、一部は法律を施行させている。DSTの導入に動く国はすでに40カ国近い。

DSTは最終合意までの暫定措置として、135カ国・地域が導入を認めた「合法的」な手段だ。とはいえ狙い撃ちされるデジタル企業が多い米国は、最終合意後に各国がDSTを取り下げるのか疑念を持ち始めている。トランプ政権はイタリアやトルコなどに警告を出し、フランスにしたのと同じく報復関税をちらつかせています。

万一、米国の主張通りOECDでの議論が骨抜きになれば、最終合意は無理だと見限る国がDST導入の動きを加速させ、国際社会は不毛な「課税戦争」の連鎖に陥るか、各国一致しておよそ1世紀ぶりのルール見直しを達成するかという分岐点に立っているともいえるのです。

その意味で、2020年度中の最終合意への道やその実施等においての紆余曲折は計り知れないものがあり、独自課税の弊害等を避けるためには、関係諸国の課税権という微妙な問題であるだけに、デジタル経済の健全な発展を旨としたOECDの努力と関係諸国の協力の姿勢が求められていると言ってよいでしょう。

                  以  上

 

 

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