「桜ヶ丘税の図書館便り」第8号

第8号
桜ケ丘税の図書館便り

                                    2017年5月号 

一般財団法人日本税務協会のホームページのご案内
http://www.tax-nzk.or.jp/

 
更新履歴
Ⅰ お知らせコーナー『トピックス』の更新一覧
・謹賀新年2017年! 《2016年に起こった世界での4つの良いこと》
・往く年くる年(2016年2017年)
・米大統領選挙の意外な結末(変化を求めて投票した選挙民が決めた)
・オランダ:議会で初めてベーシック・インカムを議論
・英国内国歳入関税庁(HMRC)の『税のデジタル化』について
・英国の税務当局:大企業に近過ぎ、国民からは遠過ぎる
・パナマ文書のデンマーク政府による購入判
・『21世紀の資本』、『21世紀の不平等』等のピケティ旋風
・英国のEU国民投票(BBCのガイド記事)について
・「ベーシックインカム」の具体化への動き
・英国国家監査室(NAO)の内国歳入関税庁(HMRC)のデジタル化の監査報告
・英国2015/2016年度予算の省庁別:内国歳入税関庁関係の計画の公表
・超高齢化時代の到来と認知症対策
Ⅱ 『続きもの』の一覧
・「パナマ文書」物語ーその1
・【アメリカ大統領選挙物語】続く
・マイナンバー導入物語(続く・・・)
・ギリシャの財政再建物語(続く)

Ⅲ お勧めの読み物
・吾輩は猫であった(第6巻)続く・・・
・我輩の辛口コラム
Ⅳ  税の図書館の更新履歴
・『桜ケ丘税の図書館便り』(第7号)
・2016年税を考える週間特集(その1~3)

目  次

番号               標    題                          掲載日     
一    「パナマ文書」物語                                  2016年5月26日
二    英国国家監査室(NAO)の内国歳入関税庁(HMRC)のデジタル化の監査報告      2016年6月6日
三    「ベーシックインカム」の具体化への動き                        2016年6月22日
四    『21世紀の資本』、『21世紀の不平等』等のピケティ旋風                 2016年9月2日
五    米大統領選挙の意外な結末(変化を求めて投票した選挙民が決めた)            2016年11月11日
六    2016年のグッドニュース                              2017年1月4日
七    トランプ新政権(新大統領について知っておくべきこと)                 2017年1月19日 22~24

トピックスコーナーでの主要記事を掲げますので、この1年を振り返ってみましょう。

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一.「パナマ文書」物語                 2016年5月26日

はじめに;
そもそもの発端は、2015年の4月ごろ匿名の人物から南ドイツ新聞に送られた、このメッセージから始まったそうです。4月4日付けの南ドイツ新聞によると、この匿名の人物の身の危険を案じ、数ヶ月間、スパイ映画のワンシーンのごとく暗号化された言葉のやり取りで情報提供を受けたそうです。
この匿名の人物がこの情報を提供した理由は、犯罪を公にしたいということだったそうで、金銭などの要求は一切なかったとのこと。
 要するに、「パナマ文書」とは、タックスヘイブン(税率が著しく低い or ない国や地域)にペーパーカンパニー設立の仲介をしていたパナマの法律事務所から顧客情報が流出した事件なのです。
世界中の政治家・公職者(またはその親族・友人)の名前がパナマ文書に列挙されており、世界中の大富豪や資産家たちがタックスヘイブンを利用して税を逃れていたことがバレてしまって、いま世界各国で大きな問題となっています。

『これは大スキャンダルだが、とてもじゃないが扱いきれない』膨大なボリュームと感じた南ドイツ新聞は、ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)に連絡をとったのです。
そして、ICIJのテクノロジースタッフが独自のサーチエンジンの仕組みを作り、一大極秘プロジェクトとして世界約80カ国総勢400人にも上るジャーナリストたちと調査を行ったとのこと。
そして、一年以上の歳月をかけて世界中にリークされたのが、世界中の資産家たちが税金逃れをしていた証拠と成り得るデータ『パナマ文書』なのです。

2.膨大なデータの分析を引き受けたICIJとは?
 ICIJとは「International Consortium of Investigative Journalists」の頭文字を取ったもので、国際調査報道ジャーナリスト連合という意味です。
そして、ICIJはアメリカ・ワシントンに本部がある(NPO組織)非営利組織であり、国際的なジャーナリストたちで構成された報道機関なのです。
 汚職にまみれ、権力のあるものが市民をコントロールし、利権を貪るようなことは重大な問題だとして、1989年3月、アメリカは非営利調査報道機関『CPI(Center for Public Integrity)』を立ち上げたのです。
CPIは『政界・財界の権力に左右されず、権力者の汚職や怠慢を暴くこと』を使命とし、寄付によって成り立つ非営利組織。 そして、さらにCPIは様々な国々の開放性や説明責任を訴えるため、1997年にICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)を設立。
この考え方に賛同し、ICIJに参加している国は、なんと60カ国以上、160人以上の国際的な調査ジャーナリストがいるとのこと。 このようにして、非常にパブリックな組織ICIJができることとなったのです。どこの傘下にも入っていない報道機関があったからこそ、どこかの国のように報道規制やスポンサーに圧力をかけられることなく、今回のパナマ文書が明らかになったということが言えるのではないでしょうか。
 これに参加している日本から、パナマ文書の分析作業に参加したジャーナリストは、朝日新聞、共同通信からの4人(内日本人は2人)と言われています。(参照:【パナマ文書のプロジェクトメンバー一覧】https://panamapapers.icij.org/about.html )
 ICIJの活動ですが、これまでに『国際的な闇取引(暴力団組織の密輸、違法カルテル、中東との武器契約)』など、様々な調査を行ってきたことが知られています。そして、ICIJがこれほどまでに大きな案件のリークを行うのは、実は今回がはじめてではありません。
2013年には各国の政府高官や富裕層がタックスヘイブンで資産隠しをしている事実を暴き、2015年にはスイスの大手銀行が富裕層の巨額の脱税をほう助していることをリークし、それらの不正が白日のもとに晒されました。

3.「パナマ文書」をめぐる主要国等の反応等
 ICIJでの党プロジェクトのディレクターのライル氏によると、プロジェクトに参加した報道機関は『パナマ文書』を手にしているとのことですが、今回の目的はあくまでも公的な人物による資産隠しの暴露。 違法行為を行っていない人物の情報も同時に載っていると指摘した上で、取り扱いに注意が必要だと呼びかけているそうです。
(参考:)オフショアリークスデータベース
 報道機関の報道を見ていても、専門家は、政治家は道義的に問題があるからアウトで、企業がこういったタックスヘイブンを利用した節税対策は違法性がないから問題なし、という言い方で印象操作をしているようにも見受けられます。

租税回避地への法人設立を代行するパナマの法律事務所の金融取引に関する過去40年分の内部文書が流出。各国政府は4日、各国指導者や著名人による脱税など不正取引がなかったか調査を開始した。
「パナマ文書」と呼ばれる機密文書にはロシアのプーチン大統領の友人のほか、英国、パキスタンなどの首相の親類、ウクライナ大統領やアイスランド首相本人に関する記載があり、波紋は世界中に広がっている。一部報道によると、サッカーのスペイン1部、バルセロナのリオネル・メッシ選手の名前も挙がっている。
「モサック・フォンセカ」は、不正行為を否定
世界各国の顧客向けに24万のオフショア企業を立ち上げたとするパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」は、不正行為を否定。自身のウェブサイトに4日、メディアは同事務所の仕事を不正確に報じているとのコメントを掲載した。
同事務所の1977年から昨年12月までに及ぶ同文書は、「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)が公表、世界中の100以上に上る報道機関に流出した。
オフショア企業に資金を保有すること自体は違法ではないが、流出した同文書を入手したジャーナリストは、脱税やマネーロンダリング(資金洗浄)、制裁破りや麻薬取引、その他の犯罪に使われる隠し財産の証拠となり得るとみている。
パナマ文書流出を受け、米司法省報道官は、米国の法律に違反する汚職などの行為がなかったかどうか司法省が調査に着手したとし、「米国、もしくは米金融システムに関連がある可能性のある汚職をめぐるすべての疑惑を司法省は非常に深刻に受けとめる」と述べた。ただこれ以上の詳細については明らかにしなかった。
ホワイトハウスのアーネスト報道官は、米国は国際的な金融取引の透明性に多大な価値を置いているとし、財務省、および司法省は調査を実施するための専門家を抱えていると指摘。
専門家による調査で文書に記載されている金融取引が米国が導入している制裁措置や国内法に違反するものかどうか判明すると述べたが、詳細については語らなかった。
フランス政府は、パナマの法律事務所から多数の金融取引文書が流出したことを受け、脱税に関する予備調査を開始した。金融専門の検察官が、流出文書から、フランスの納税者が悪質な脱税に関与しているかどうかを調べるとしている。
ドイツ財務省報道官も「仕事を始める」ことを明らかにしたほか、オーストラリア、オーストリア、スウェーデン、オランダも1150万枚以上に上る膨大なパナマ文書に基づく調査を開始したとしている。
過去に父親のビジネスに関連するオフショア企業のディレクターを務めたことのあるアルゼンチンのマクリ大統領は、野党から説明するよう追及されているが、テレビのインタビューで、父親の会社は合法であり、いかなる不正も否定した。
汚職危機に揺れるブラジルでは、7党の政治家がモサック・フォンセカのクライアントに名を連ねていると、「エスタド・ジ・サンパウロ」紙が報じた。そのなかには、ルセフ大統領率いる労働党の議員は含まれていなかった。同国の税当局は、パナマ文書にある脱税情報を確認するとしている。
ロシアの大統領報道官は疑惑否定に躍起
ロシアのペスコフ大統領報道官は、パナマ文書にプーチン大統領とオフショア投資家との数十億ドル規模の取引が記載されていたとの報道に関して、2年後の選挙を控えて大統領の信用を失墜させる目的だと非難した。
同報道官は記者会見で「今回の虚偽情報の主な標的は大統領だ」と言明。「『プーチン嫌い』が広がったせいで、ロシアやその業績について良いことを言うのはタブーになっている。悪いことを言わなければならず、何も言うべきことがなければでっち上げられてしまう。今回の事件がその証拠だ」と述べた。
英紙ガーディアンによると、プーチン大統領の幼なじみでチェリストのセルゲイ・ロルドゥギン氏を含む同大統領の友人たちに関連する秘密のオフショア取引やローンは20億ドル(約2218億円)相当に上る。ロイターはこうした詳細について確認していない。
裕福な株式ブローカーだった亡父とオフショア企業とのつながりについて記載されていたキャメロン英首相の報道官は「個人的問題」だとし、それ以上コメントするのを差し控えた。「パナマ文書」の顧客リストには、首相率いる保守党メンバーも含まれており、英政府は流出したデータの内容を調査すると発表した。税逃れを批判してきたキャメロン首相にとって打撃となりそうだ。
パキスタンは、同国のシャリフ首相の子供たちがオフショア企業とのつながりが記載されていたことについて、いかなる不正も否定した。
ウクライナのポロシェンコ大統領は、税金逃れのために租税回避地の企業を使っていたとの疑惑について、説明責任を果たしているとして自身を擁護した。ウクライナの議員らは疑惑を捜査すべきだと訴えている。パナマ文書によればポロシェンコ氏は、ウクライナの東部で政府軍と親ロシア派武装勢力の戦闘がピークを極めていた2014年8月、自身の菓子会社「ロシェン」を英領バージン諸島に移すため、オフショア企業を設立していた。
アイスランドのグンロイグソン首相夫妻が租税回避地の企業とつながりがあると同文書にされていたことを受け、首相は辞任要求に直面。野党は不信任決議案を提出した。
パナマ文書の波紋はサッカー界にも広がっている。
バルセロナのメッシ選手が納税を逃れるためにパナマに法人を設立していた疑いがあるとのスペインメディアの報道を受け、同選手の家族は、「メッシはこのような疑惑に一切関与しておらず、報道は誤りであり有害」との声明を発表。報じたメディアに対して法的手段を取ることも検討すると述べた。同選手が所属するバルセロナも声明で、「メッシの家族が公にした反論を信頼している」と、同選手を支持する立場を明らかにした。
中国は報道規制、検索も制限
パナマ文書流出を受け、中国当局は報道規制をかけている。オンラインニュースの一部の記事を削除したり、検索も制限しているようだ。ICIJによると、文書には中国の習近平国家主席など、同国の現職・旧指導部の一族に関連したオフショア企業が入っているという。中国政府からはパナマ文書について、公式な発表などはない。ロイターは国務院広報室にコメントを求めたが、現時点で回答はない。
中国国営メディアはパナマ文書をほとんど報道していない。中国の検索エンジンで「パナマ」をサーチすると、この件に関する中国メディアの記事が出てくるが、リンクの多くは機能しないか、もしくは、スポーツスターをめぐる疑惑に関連した記事に飛ぶようになっている。

経済協力開発機構(OECD)は4日、パナマが他国と情報共有を行うという合意を守っていないとし、税務の透明性に関する国際基準を満たすよう同国に求めた。グリア事務総長は声明で「パナマの税務の透明性が国際基準に沿っていないことの結果が、公の場で明るみに出た」と指摘。「パナマは直ちに同基準に合わせる必要がある」と述べた。

4.アメリカ陰謀説等の報道
パナマ文書において、アメリカの企業や人物・政治家のリストが少ないという報道や、アメリカ陰謀説等の報道に疑問を感じた人は多いのではないでしょうか?
しかし、米国人の名前が全く出ていないわけではありません。現在までに報道されている、「パナマ文書」に含まれる米国人の名は、中国生まれで、米国に帰化したウォール・ストリートの金融業界大物、ベンジャミン・ウェイ(魏天冰)氏、富豪で不動産王のイゴーリ・オレニコフ氏をはじめ、マサチューセッツ州を拠点とする著名実業家のジョナサン・カプラン氏などである。さらに、元ハリウッドの有名子役であり、ハイアット・ホテルズの遺産相続者の一人でもある、リーセル・プリツカー・シモンズ氏の名もある。彼女は、現在、米商務長官を務めるペニー・プリツカー氏の親類であり、「パナマ文書」がオバマ政権中枢を巻き込むスキャンダルに発展するのか、興味のあるところだ。
また、ハリウッド関係では他にも、米音楽産業のドンで、映画プロデューサーでもあるデヴィッド・ゲフィン氏の名が挙がっている。
出典:「米国は税逃れ天国」パナマ文書が米国で騒がれない本当の理由
ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)は『米国人の名前が少ないのは、国内(デラウェ州・ネバダ州など)で同様の租税回避ができるため、わざわざパナマを利用する必要がなかったからだ』という見解を示しています。
 アメリカ国内のタックスヘイブンで有名なデラウェア州などは、日本企業や日本人にも人気のタックスヘイブンですが、人口89万7934名に対して94万5326社存在しています。デラウェアはタックスヘイブン(租税回避地)としてはあまりにも巨大なのですが、その理由として、企業にとって税制上かなり優遇される法律のもと、ペーパーカンパニーに対する秘匿性が高いという点が挙げられます。
【金融秘密度指数】2015年度
1位:スイス 2位:香港 3位:アメリカ 4位:シンガポール 5位:ケイマン諸島 6位:ルクセンブルク 7位:レバノン 8位:ドイツ 9位:バーレーン 10位:アラブ首長国連邦 11位:マカオ 12位:日本      出典:Tax Justice Network

5.パナマ文書は氷山の一角
著者Gabriel Zucman(ガブリエル・ズックマン)による金融資産の台帳作成で国際連携を提言している「失われた国家の富」によると、
世界の金融資産のうち8%がタックス・ヘイブンにあり、その額は5兆8000億ユーロ(約810兆円)にのぼる。具体的には30%を占めるスイスを筆頭にケイマン諸島、香港などに所在。著者のタックス・ヘイブンの定義の中には、スイス、ルクセンブルク、アイルランドなども含まれている。
タックス・ヘイブンを利用する最大の長所は、どこからも課税されないということだ。5兆8000億ユーロのうち80%が税務申告されておらず、関係諸国の損失金額(所得税、相続税などの「脱税額」)は年間1300億ユーロに達するようだ。
こうした分析を踏まえ、著者は大胆な政策提言を行う。1.全世界規模での金融資産台帳の作成、2.タックス・ヘイブンに対する金融面・貿易面での制裁措置、3.グローバルな資産課税などである。1.は株式、債券、投資ファンドなどの最終投資家の名前を記した台帳の作成が必要となるが、国ごとには存在する金融資産台帳をまず各国レベルで精緻化、共通化し、その国際的統合を国際通貨基金(IMF)がすべきだという。
日本で考えれば将来的にマイナンバー制度が進化し、個人別の資産総額が判明することが第一段階だろう。そのうえでグローバルな名寄せを行う必要があるが、それにははたしてIMFが適任かどうか。むしろこの方式に参加せずにより多くの資金を取り込もうとするタックス・ヘイブンもあるだろう。

6.1専門家の見方
ロンドンシティ大学のロナン・パラン教授に聞く(出典:http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/051000167/?ST=print)
によると、
―米国企業や著名人の名前は浮上していないことについては;
まだパナマ文書の全貌が明らかになったわけではないので、今後米企業や政治家の名前が発表される可能性はある。ただ、現時点でその理由は次の2つが推測されている。1つは、米CIA(中央情報局)がパナマ文書のリークの背後にいること。もう1つは、米国とパナマの間には既に政府レベルで厳しい規制が敷かれており、米国人や企業がパナマにおける資産隠しや節税行為自体を減らしている可能性がある。
 前者はいわゆる陰謀説なので、半分は冗談だが(編集部注:5月7日、パナマ文書の告発者が匿名のインタビューに応じ、米国諜報機関などとの関連を否定している)、後者の可能性はあり得ると思う。米国ではオバマ政権後、タックスヘイブンに対する規制を強化している。米国 人顧客の身元や保有資産に関する報告を外国の金融機関に義務付けるFATCA(外国口座税務コンプライアンス法)、あるいはM&A(合併・買収)などの際に税率の低い地域に税務上の本社を移すタックス・インバージョンの規制強化など、世界的にも厳しい条件でのぞんでいる。
 いずれにしても、今後どのような名前が出てくるか、それによって実態が見えてくるだろう。

―米国の規制強化もそうですが、パナマ文書をきっかけに、タックスヘイブンに対する国際的なルール強化の機運が高まっています。
米国だけでなく、英国ではデビッド・キャメロン首相が悪質な課税逃れへの対応を強化する方針を示している。さらに、EU(欧州連合)全体でも税逃れに対する圧力をかけようという姿勢は強まっていると私も実感している。好ましい流れだと思う。

―国際機関の規制には限界がある
国際機関レベルでの連携もさらに進むだろう。OECD(経済協力開発機構)が税逃れ対策のために頻繁に会合を開き、新しい課税逃れの規制強化に乗り出している。

―タックスヘイブン自体の減少につながりそうですか。
 ここが難しいところだが、個人的には国際機関のこのような動きには限界があると感じている。国を越えた連携というのは各国の政治に左右される。規制を統一することは相当の困難を伴う。政治的に連携しているEUでもない限り、法的強制力を持たせることは難しい。例えば、OECDの規制強化方針を拒否し続けているパナマを完全に従えさせるのは難しいだろう。実際にそれを実行しようとすれば途方もない時間がかかる。
 国際機関を通じた取り組みを続けることは重要だが、やはり最後は各国独自の規制を強化していくしかないと思う。
 例えば、タックスヘイブンと世界的に評されている国に対して、節税あるいは資産隠し目的の会社を設立する場合に、必ず自国政府や当局に届け出る。国が、誰がどこに会社を設立しているかをリスト化し、監視するようにして、「これらの国に会社を設立することは、自国の政府から疑いを持たれるリスクがある」と認識させることだ。タックスヘイブンの最大の特徴である「秘匿性」に網をかける必要がある。

―世界経済の中心である米国、EU、中国、日本がこのルールの徹底に同意すれば、資産隠しの行為は減るだろう。
 ただ、これまでタックスヘイブン対策に消極的だったパナマは、今回の事件によって対策を迫られるだろう。世界各国からの圧力がかかってくるだろうから、パナマ政府は(既存の方針を変えるかどうか)大きな決断は迫られる。

―企業の過度な節税対策への監視の目が厳しくなっています。
2月に起きた、米製薬会社ファイザーによるアイルランドのアラガン買収計画の撤回はまさに米国の規制強化の成果だろう。ファイザーは、節税目的でアラガンを買収したことを自ら証明してしまった。
 今回のパナマ文書は、企業と個人という点で違う事件ではあるが、背景にある租税逃れに対する当局の規制、そしてメディアや世論から厳しい視線を受けるという点では共通する。
 節税自体は違法ではなかったとしても、行き過ぎた行為に関しては、個人だけでなく、法人に対しても、厳しい目が向けられるのは間違いないだろう。しかし、それでも抜け穴はあるし、課税を少しでも回避したいというニーズは存在する。タックスヘイブンは、そうしたニッチなニーズの受け皿として存在してきた。だから、パナマが政府の方針を変えてタックスヘイブンの規制強化に乗り出したとしても、他の国が次のパナマの座を狙う可能性はある。小国にとっては、それがグローバルで生き抜く道でもあるからだ。
 世界のタックスヘイブンの過半数は、きわめて小さな法域であり、大半が、人的資源を育成する大学などの教育機関もなければ、研究センターもない。国を養っていけるほどの地域資源もない。
 だからこそタックスヘイブンは、手数料と引き換えに、唯一の主要な資産である「主権」を使って非課税特区のような空間を構築し、企業や個人を集めている。この特権こそが、彼らにとって唯一、世界の消費者を惹きつける商品であり、これによってグローバル世界で生き残ろうとしている。

―今後も、節税したいというニーズがある限り、その需要にこたえようとする国は存在し続けると。
残念ながら、それは事実だ。ここ数年で、タックスヘイブンのトレンドは大きく変化している。パナマやケイマン諸島など伝統的なタックスヘイブンから、今はシンガポールやドバイ、バーレーン、香港が新たなタックスヘイブンとして存在感を高めている。

―タックスヘイブンは国際ビジネスに不可欠な仕組み
 こうした動きの背景には経済活動の中心が欧米からアジアに移ってきていることがあるが、もう1つは彼らもまた「特権」が商品になると認識していることだ。やっかいなことに、これらの国では、欧米が圧力をかけても、なかなか動かない。OECDといった西洋が主導するルールを、これらの国がどれだけ順守するかは、正直わからない。ここでも私は国際協調の限界を感じている。(パナマの財務副大臣は、パナマがOECDのルールに従うことを明確に否定している。)
 理解していただきたいのは、タックスヘイブンは世界経済の末端で起きている遠い出来事ではなく、現代のビジネスに不可欠なシステムとして組み込まれているということだ。タックスヘイブンは国家の規制の抜け穴のように見えるが、決して対立する存在ではなく、ある国にとっては調和的に存在している。

―タックスヘイブンは、ある国にとっては調和的に存在している
 タックスヘイブンに流れ込んでいる資金の総額は、正直、推測するのは難しい。OECDによれば、多国籍企業がタックスヘイブンなどを利用した節税策によって課税を逃れている法人税収は全世界で年1000億~2400億ドル(約10兆8000億円~25兆9000億円)に達するという。
 もはやタックスヘイブンは、金融の世界、組織、国、個人の財源を管理するビジネスに組み込まれている。これを切り離すのは、簡単ではない。

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二.内国歳入関税庁(HMRC)のデジタル化           2016年6月6日

英国国家監査室(NAO)の内国歳入関税庁(HMRC)のデジタル化の監査報告
はじめに;
我が国の会計検査院に相当する役所から、英国内国歳入関税庁の業務のデジタル化の一環での、個人所得税の人員の大幅削減による、納税者サービスの
サービスの行き過ぎた低下に伴う、職員の臨時採用等による軌道修正に関する記事が出たので翻訳してみました。
我が国でも、電子申告が導入されてだいぶん立ちますが、個人納税者の電子申告と来たら、税務署での指導を受けながらの納税者を含めても、50%程度の電子申告割合に過ぎないようです。電子化・デジタル化の最大のメリットが、税務行政の効率化であるはずなのに、我が国の納税者は、協力の姿勢が低いと言わざるを得ません。限られた職員で、税の適正申告を確保するのが最も大切な税務当局の使命であるはずなのに、せっかく電子化しても、有能な税務職員を、自主申告を建前としている申告納税制度の下で、過大な納税者サービスに従事させている事態は、望ましいものではないはずです。そのことが、行政コストを高くするばかりではなく、限られた定員での、納税者の監視の役割を阻害することによる、税の過少申告、脱税の取り締まりがお粗末になることで、いわゆる申告水準が低下する可能性があることを、正直な納税者は、考える必要があります。その意味で、英国の国税庁の努力は正しいと言わざるをえません。一刻も早く我が国でも、電子申告による個人納税者が、100パーセントとなるのが当たり前だと納税者の皆さんが考える時が来るのを期待しつつ、この記事をお読みください。

出典:https://www.nao.org.uk/press-releases/the-quality-of-service-for-personal-taxpayers/
「個人納税者に対するサービスの質」
2016年5月25日
フルレポート:個人納税者に対するサービスの質
内国歳入関税庁(以下「HMRC」という。)のデジタル戦略により、電話や郵便の接触を処理するためのより高価な納税者サービスの需要を減らすことができるオンラインに、もっと多くの個人納税者を移動させることで、顧客サービスの効率化と品質の向上を目指しています。HMRCは、大幅な人員削減を通じて、2010-11から2014/15年度の間、その個人税の務業のコストを£2.57億ほど減少させました。今日の国家監査室(以下「NAO」という。)の報告書は、HMRCが、2013/14年度に顧客サービスを維持または向上するいっぽうで、それは、その複雑な業務改革の累積的影響の判断を誤り、サービスの変更が完了する前に、あまりにも多くの顧客サービスのスタッフを解雇したと指摘しています。
NAOは、個人納税者のためにHMRCによって提供されるサービスの質が2014/15年度と2015/16年度の最初の7ヶ月間において崩壊し、平均通話待ち時間が三倍にすることを見出しました。サービスは、その後、追加のスタッフの募集の改善を行いましたが、この結果が持続可能であるかどうかは、税務行政のデジタル化のプログラムによる良好な成果をHMRCが達成することにかかっています。
2010-11および2014-15の間、HMRCは26,000人から15,000人へと個人税のスタッフを削減しました。人員削減を達成するために、同庁は、PAYEシステムの自動化を増やし、スタッフが異なるサービス間で移動できるより柔軟な基準で業業務を行い、デジタルサービスの拡充を通じて、伝統的なチャネルからより安価な納税者との接触体制に納税者を移動させることを計画しました。
HMRCは、歳出の審査期間の終わりに向かって、顧客との接触の需要を減らすことを期待していました。当庁は、2013/14年度に、二つの新しいサービス、自動化された電話通信とペーパーレス自主申告を導入しましたが、電話相談の需要が落ちませんでした。その予算の範囲内で運営するために、顧客サービスの陣容を削減して、2014/15年度に個人税から5600名のスタッフを解雇しました。HMRCは、変更の累積的影響について楽観的過ぎだったし、その計画に十分な不測の事態を組み入れていなかったと考えています。

NAO分析は、全ての人員削減が行われた2014/15年度において、サービスの質が悪化していることを示しています。処理された電話応答は、全体で71%に落ち、HMRCはその年の10週間だけ、電話応答の80%を処理する目標を満たしました。HMRCのパフォーマンスは2015-16の最初の7ヶ月間でさらに悪化しました。平均待ち時間は、2015年における書面での申告期限の週間に、自主申告の照会者のために、47分のピークに達し、2014-15年度の水準に比べて三倍になりました。
HMRCは問題を認識して対処し、2015年の秋の税のヘルプラインに2,400スタッフを募集しました。2015年のパフォーマンスは、その後回復し:電話の待ち時間は、キャッチホン回は2016年1月のオンラインの申告期限の週間の自主申告の発信者に対しての5分の平均値に改善しました。
HMRCは、2014-15年度のサービスレベルを維持するのを助けるために、PAYEレコードを維持するために不可欠な作業を延期しなければならなくなることを意味する、そのコールセンターにもっと多くのスタッフを移動しなければなりませんでした。調査が必要な納税記録で優れた矛盾の株式は240万(2014年3月)から(2015年3月)460万に上昇しました。これらの項目のうち、320万は、従業員が税金の間違った金額を支払っているというリスクを持っている、優先度の高い例でした。余分なスタッフの募集は、未解決のアイテムの総数を減らすのに助けとなりました。2015年12月までに、HMRCは、未解決のPAYEアイテムの在庫を300万未満に減らしました。
NAOは、電話の待ち時間は2012-13と2015-16年度の間で著しく増加したことがわかりました。その結果、顧客が電話するための現金コストと電話で時間の経済的コストの両方を考慮に入れた全体のコストは、半分以上上昇しました。税のヘルプラインへの自主申告の発信者の平均待ち時間は2012-13と2013-14のほとんどの照会者にとって10分未満でしたが、2014-15と2015-16の最初の7ヶ月間を通して次第に長くなっています。繁忙期に相談官を待っているお客様は、時に時間がかかり、時には1時間を超える待ち時間のこともありました。
税のヘルプラインと呼ばれているお客様が被った全体的なコストは、2012‐13年度の6300万ポンドから2015-16年度に9700万ポンドに増加したとNAO推定しています。HMRCは2013年の9月に地元のレート「03」の電話番号に移動することにより、通話料金を縮小したので、お客様は、通話コストの£200万少ない支払いでした。しかし、時間の経済的コストの増加は、答えを待っているか、より多くの相談官との話しで過ごしたので、この節約を相殺しました。通話への応答のHMRCの年間コストのデータと比較すると、NAOは、顧客へのコストの増加は、この期間にわたってHMRCにとって節約となっている£1について£4であったと推定しています。
ほとんどの納税者は、HMRCサービスに満足しているように見えますが、5人に1人は、乏しいと評価しています。HMRCのサービスを使用してのNAOの顧客の調査では、58%がように良いか、優れたサービス、21%が平均で、21%が貧困層やひどいとそれを評価していることが分かりました。満足度は、オンライン化されていたものの中でその最新のHMRCとの接触人たちが最高の、そして最も低かったのは、その最新の電話で接触され人達です。
納税者が経験するサービスの質は、コンプライアンスに影響を与える可能性があります。それは密接にリンクされた顧客サービスと税務コンプライアンスを信じながら、悪いサービスの最近の呪文が税収に影響を与えていたという証拠はありませんでしたHMRCは、その前に述べていました。少人数のグループでは、ほとんどの人がリンクを拒否するよう依頼しました。その調査では、そのサービスのより多くの肯定的な経験をお持ちのお客様は、脱税は受け入れられないと考える傾向がありました。NAOは、連絡やHMRCと接触していたほとんどの納税者が、HMRCが提供する情報やサポートは、彼らが税を理解するのを助けたと述べたことがわかりました。NAOは、肯定的な経験を持っていた納税者はまた、HMRCは脱税者を取り締まるところだと考える人が多かったがことがわかりました。
「効率を改善し、新しい方法でサービスを提供するデジタル化で有効な情報を活用するHMRCの全体的な戦略は、NAOにとって納得がゆくものです。電話対応の処理スタッフのかなりの数を、新しいアプローチが定着する前に移動させるといった2014年のそれらのタイミングが、ひどく間違っていたという事実は変えられません。これは、サービスの質の崩壊につながり、雇用者総数の急速な拡大を余儀なくされました。HMRCは慎重に前進し、サービス水準を維持し、そして、できれば改善しながら、予定された軌道に当庁の戦略を取戻す必要があります。」
Amyasモールス、国家監査室長、2016年5月25日

編集者のための注意事項
      項  目                                              構成割合等
    2010/2011~2014/15の所得税サービスの実質コスト削減                             32%
    2015.4.1~2016.3.31日の間に処理された所得税の電話照会                             72%
    2015/16に処理された税のヘルプライン上の回答者の会話までの平均待ち時間                    15分
    2015年10月における書面による納税申告期限の週間での待機に費やされた自己申告ラインへの発信者の平均待ち時間  47分
    2016年1月におけるオンライン納税申告期限の最後の週における自己申告ラインまでの発信者の平均待ち時間       5分
    2015/16における回答までの電話照会の顧客の待ち時間の、所得税の顧客自身の時間の推定価値           £66百万
    HMRCのサービスへの顧客評価の割合:良いもしくは、優れた                            58%
    同上 :              悪いもしくは、ひどい                           21%
    2014/15年度の所得税・サービスの総費用                                   £5.44億
    2014/15年度の所得税と国民保険からもたらされた税収                             £2710億 
1.新聞発表の通知とレポートは、NAOのウェブサイト上の公告の日から入手可能です。ハードコピーは、当社のウェブサイトに関連するリンクを使用することによって得ることができます。
2.国立監査室は、議会のための公共支出を精査し、政府から独立しています。会計検査官及び監査役一般(C&AG)、サーAmyasモールスKCBは、下院の役員であり、約810人の職員を有するNAOを、統率しています。C&AGは、すべての政府部門や他の多くの公共機関の会計を監査しています。彼は、各省庁及びそれらが資金を出している団体が、効率的、効果的及び経済的にそのリソースを使用しているかどうかについて議会に報告する法的権限を持っています。我々の研究は、全国およびローカルレベルでの、公共支出のお金銭価値を評価します。私たちのグッドプラクティスに関する提言やレポートは、政府の公共サービスの向上の助けとなり、そして私たちの仕事は2014年には£11.5億ポンドンの監査の節約につながりました。

勧告;
庁は過去5年間の経験と培われた現実を、納税者への実際に役に立つサービスを提供するときに、学習し応用する必要があります: 同庁は、以下に留意すべきです。

A. 将来の歳出についての決定を、その目的達成についてそれらが有しているすべての影響の評価に基づかせること。当庁は、異なった歳出の決定の直接間接の影響のよりよい理解をする必要があります。コストを減らす時には、顧客サービスへの影響と歳入への起こりうるリスクについて現実的な見方をすべきです。

B. 行政コストと顧客が負担するコストの間のバランスをとる目標を定めなさい。当庁は、2015年までの90%の約束もしくは5分以内の電話への80%の応答の約束を果たしていません。当庁が設定したサービス基準に一致もしくは超えるようなコールセンタ―サービスにおける大きな信頼を確立すべきです。今後の目標の設定では、貴庁は、自身の執行コストと納税者のコストを考慮すべきです。

Ⅽ. 貴庁の納税者サービスの変化について、明確かつオープンにすることです。貴庁はその経費削減の方法や納税者に期待することについて透明性を高めるべきです。

Ð. 個人納税者と任意の支援部門についての行政上の負担を推計し、これをその決定を知らせるために活用しましょう。貴庁は、事業者が納税義務を果たすための負担を推計しますが、個人と任意の支援者については必要ありません。新規のサービスからの顧客への節約と共に、貴庁は、その節約の対策への追加の費用が、電話での待ち時間の費用のような形で納税者に課せられることがありうることを考慮に入れなければなりません。

È.納税者の行動がどのように、貴庁が行おうと考えているサービスでの変化に応じて影響を受けるかを検討しましょう。この作業の一環として、サービスが提供される方法の予定された変化が申告水準に及ぼす影響に照明を当てるべきでしょう。
                                                       以上

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三.「ベーシックインカム」の具体化への動き         2016年6月22日

1.はじめに
 最近、西ヨーロッパの各国においてベーシックインカムを導入すべきとの声が高まっていることはご承知のとおりであろう。ベーシックインカムとは、その国のすべての成人に対して何らかの水準の給付を一律に、無条件に支給しようという制度であり、給付の方法、給付の水準、ファイナンスの方法、などをめぐってさまざまな違いはあるものの、多くの経済学者が検討に値するものとして注目している。
 さて、このようなベーシックインカムは、社会保障の用語で言うところの「ユニバーサル=普遍給付」の最たるものであろう。しかし、ベーシックインカムが実現したとしても、それは国民国家、特に裕福な上に社会権の思想がある程度共有されている先進諸国家(すなわち西欧であり、アメリカは違う)において「正当な」社会の成員であると認められている人間に対してのみ与えられる権利である。その意味ではベーシックインカムは決して「ユニバーサル=全世界的」ではない。
ご承知の通り、スイスで6月5日、国民に一定額の現金を無条件に給付する「ベーシックインカム」制度の導入の是非を問う国民投票が行われ、賛成23・1%、反対76・9%で否決されました。投票率は46・3%だったようです。
 導入推進派は最低限必要な10万人を超える署名を集め国民投票にこぎつけた。推進派は「貧困撲滅」などを訴え、最低限の生活を維持するための金額として、成人に対して2,500スイスフラン(約27万円)、未成年者に625スイスフラン(約6万8千円)を毎月支給することを提案した。
 一方、連邦政府は「年間2,080億スイスフラン(約22兆7千億円)超」の巨額の費用と、スイスの経済競争力の低下を懸念し、反対の立場を表明。推進派は、財源について、現行の社会福祉制度の切り替えなどで可能だと主張したが、支持は広がらなかった。
それにさかのぼること数週間前、市民のためのベーシックインカム推進派は、人々が投票に行くわずか数週間前に、キャンペーンでギネス世界記録を樹立しています。グループは日曜日に、ジュネーブのプレーヌ・デ・プランパレで8,115.53平方メートルのポスターを打ち出しました。 これは、7トンの合計の重さで、活字では次のように質問しています:「あなたの所得が保障されるとしたらあなたならどうしますか?」と・・・。

そこで、スイスでの具体例で、ベーシックインカムの、メリット、デイメリット等を考えてみましょう。
推進派の提案理由は、ベーシックインカムが、予見性の高い安心なセーフティーネットであること、行政の裁量を減らして効率を高めるシンプルな仕組みであること、受給が恥ずかしくない再分配であること、ミスや漏れが起こりにくい公平な仕組みであること、など多数あるようだ。このほかベーシックインカムの推進派は、スイスで行われている仕事の半分は、コミュニティでの家事とケアのように、未払いであると言っていたようです。そのような所得が、このような仕事が「もっと評価される」ようになるのに役立つだろうと述べていました。
 一方、スイスでの反対派の理由はといえば、 まず、(1)政府は財源不足を主な反対理由に挙げました。次に、(2)経済界は勤労意欲が失われる懸念を挙げました。そして、(3)労働組合は想定する支給額では収入が減る年金受給者がいることを理由に反対したという。いずれも、なるほどという理由ではあります。
次に支給金額のレベルについては、スイスで検討されたベーシックインカムでは、実施の場合、金額は改めて検討されることになっていたが、賛成派は大人に対して毎月2500スイスフラン(日本円で27万5000円)の支給を提案していたという。ちなみに、子供は大人の4分の1の625スイスフランだという。これについて推進派は、付加価値税の引き上げか、金融取引税の導入で財源は補えると、十分な実現性があることを主張したようです。
 ベーシックインカムの背景にある思想の中には、「尊厳ある生活の権利」といった理想が含まれているし、また制度を魅力的なものに見せるためには、ぎりぎり暮らせるという以上の水準を提示することが必要だったのかもしれませんが、追加の財源が必要だということは、月2500フランというのは金額として大きすぎたのではないでしょうか。参考までに、報道によればスイスでは食品スーパーの初任給は4000フランくらいだという。
この金のかかる政策に資金を提供する計画は何も無く、確かに、この政策を支持する議会政党は何も現れなかったようで、それが投票率の低さの1つだったのかもしれません。国民投票に大きな影響を与えたと思われる重要な問題の一つは、新しいポリシーが、すべての28のEU加盟国を持つ人々の自由な移動へのスイスの協定に起因する大規模な移民を引き起こす可能性があると右翼のスイス国民党(SVP)が主張した見解でした。
「スイスが、ベーシックインカムの実行の国になることは、理論的に可能でしょう。既存の社会の支払いを削減し、代わりにすべての個人に一定の金額を支払うことができます。しかし、開かれた国境では、それは完全に不可能だといえます。もしすべての個人にスイスの通貨を与えるとしたら、スイスに移動しようとする多数の移民を抱えることになるでしょう。」とSVPの広報担当者ルイス・スタムはBBCに語ったそうです。
いずれにしても、支給金額のレベルや財源確保や既存の福祉制度等との整合性等について、選挙民にもっと具体的な説明が必要だったのかもしれません。

2.スイスに続く、フィンランド等での本格的な「ベーシックインカム」の試行等の動き
  昨年の年末に、フィンランドが国民全員に非課税で1カ月800ユーロ(約11万円)のベーシックインカムを支給する方向で最終調整作業に入ったことが判った。といった電子記事が、世界中を駆け巡った。ベーシックインカム支給に要する総予算は522億ユーロ(約7兆円)にも及ぶこととなるが、ベーシックインカム支給と共に、政府による他の全ての社会福祉支給が停止となる予定ともなっており、政府は複雑化した社会福祉制度をベーシックインカムに一本化することにより、間接的な費用の支出を抑えることもできることとなる。というというものでしたが、これはどうやら誤報のようでした。
英字紙の記者が、情報源のフィンランドの地方紙の記事を読んだ際に、フィンランド語の知識が十分ではなく誤解してしまったもののようです。他の英字紙も、情報の真偽を確かめることなく追随し、日本メディアもそれに続きました。と訂正してくださったのが、http://blogos.com/article/151914/ での山森亮(やまもり・とおる):(ベーシックインカム世界ネットワーク(http://www.basicincome.org )理事。同志社大学教授。)でした。おかげさまで誤報を引用しなくて済みました。
真実は、フィンランドでは、昨年4月に行われた総選挙で、野党だった中央党が躍進し、連立政権の中核となり、同党のユハ・シピラが首相となりました。ベーシックインカムの「給付実験」を行うことは同党の選挙公約で、シピラ首相もベーシックインカムに賛成しており、政権発足後、実験の実施に向けた準備が進んでいます。10月には、実験をどのように行うかについての調査グループが発足し、来年春には調査グループによる政府の関係省庁や機関へのブリーフィングが行われ、来年後半には最終報告書が出される予定です。調査グループの発足について、実験の実施をめぐる様々なアイデアや情報について、フィンランドで報道がなされており、そのうちの一つを、件の英字紙記者は誤読したようなのです。 政府が普遍的ベーシックインカムのパイロットプロジェクトを実施することを決定した場合、フィンランドで約1万人がすぐに毎月€550受け取ることができます。調査グループは、2017年に2年間、失業手当や食品、個人衛生、衣服をカバーする福祉の給付に相当する免税の支給を開始することを、政府に助言しているようで、支給金額は、先に漏れていた毎月£800から、550ポンドと少なくなり、これはフィンランドの社会保障ネットの一部に取って代わるものとなるようです。政府は国家の支出を減らすためのより広い努力の一環として、スキームを進めるかどうかを今年内に決定するようです。

西欧諸国の間では、オランダもベーシックインカム制度導入のための試験制度を来年から導入することを既に、決定しているようです。
オランダの中部の都市ユトレヒト(人口23万人)は、すでに福祉給付を受けている住民にお金を支給する、2年間の試行するようです。
EU全体の意見のドイツの世論調査ダリアリサーチが行ったより広い研究の一部として行われた新しい世論調査では、英国民の大多数は、いわゆるユニバーサルベーシック・インカムの導入をサポートしていることを示唆しています。電話で、EU全体で1万人のサンプルを意向調査しました。彼らは 「彼らが働いているかどうかや他のソースのすべての所得に関係なくすべての個人に政府が支払う所得」についてどう考えるかを回答者に尋ねました。その所得は、「他の社会保障費に代わるもので、すべての基本的なニーズをカバーするのに十分な金額」と説明したところ、イギリスでの回答者の62%が、そのような政策を支持するだろうと述べました。 英国のサポートは、64パーセントのEU平均よりわずかに低く、コンセプトのための最高のサポートは、回答者の71パーセントがそのような措置をサポートすると述べたスペインだったようです。

3.ベーシック・インカム地球ネットワーク地球ネットワーク(BIEN)
ベーシック・インカム地球ネットワーク(BIEN)は、個人とまたはベーシックインカムに興味グループ間のリンクとして機能し、ヨーロッパ全土でこのトピックに関する情報の議論を促進するように1986年に設立されました。
積極的にこの議論を促進するために、BIENは、関連するイベントや出版物の最新アップと包括的な国際概要を提供し、ニュースレターを発行しています。 これは、20以上の国からの人々は、このような失業、欧州統合、貧困、開発、仕事の変化パターンとして、テーマの広いスペクトルに関連したベーシックインカムおよび関連する提案を報告し、仕事と家庭生活と社会正義の原則を議論するために年間2回のBIEN-会議を開催します。組織の役職員には、日本からも先にご紹介した山森教授ほか1名が参加しています。
BIENは、それが個人やグループにコミットまたはベーシックインカムに興味の間のリンクとして機能する国際的なネットワークであり、世界中で話題の情報に基づいた議論を促進するために、2004年にヨーロッパから全世界にその活動範囲を拡大しました。
 そのサイトでは、ベーシックインカムに関する、世界中の動向の情報や、研究報告等が紹介されています。

4.おわりの中締め;
税制も含めて、各種の再分配を伴う制度は、そこに関わる人々の仕事を作り出す必要性のためか、年を追うごとに複雑化する傾向がある。これに歯止めをかけることがまずは重要なのだが、それを実現することは、政治的にも、行政的にも、大変困難が大きい。既得権的な既存の制度と入れ替えるとした場合の、不利益変更等もありうる。

 さて、スイスの国民投票でも、ベーシックインカムの長所として、行政の効率化が訴えられていたが、問題は効率化される側の抵抗だ。
 例えば、年金がベーシックインカムに置き換わると、年金に関連する役所や役所の外郭団体の人員は、大いに削減可能だ。しかし、そこで不要とされた人が、潔く引退して、ベーシックインカムをもらうことで満足する、というようなことは考えにくい。権限やOBの就職先が減ることに対して、直接・間接両方の方法で陰に陽に抵抗するだろう。このときの抵抗する側の真剣さと、そもそも日本の社会システムの枢要な部分が政治家やビジネスマンによってではなく、官僚によって動かされていることを思うと、ベーシックインカムが短期間で実現に向けて動き出すとは想像しにくい。

 そのためには、現行の社会保障関連の仕組みと行政システムを徐々に簡素化して、少しずつ「ベーシックインカム的」な社会保障制度等の仕組みや仕事のやり方を増やしていく方法がいいのではないだろうか。といった方法論的な提言をする人が徐々に増えてきております。その意味で、先進国の中で、地域的(自治体等)な試行が狼煙を上げ始めているのも、現実的な対応と思われます。その成否を見守るだけでなく、我が国でも、先の大阪の「維新の党」のような改革等の動きが具体化を帯びてほしいものです。これからも、主要国の動向は追跡して、報告しますので・・・お楽しみに・・・

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四.『21世紀の資本』、『21世紀の不平等』等のピケティ旋風      2016年9月2日

はじめに
2015年1月、トマ・ピケティ『21世紀の資本』の待望の日本語版がついに発売された。昨年春、英語版が発売されるやアメリカで大ベスト・セラーとなり、「ピケティ現象」とまで呼ばれるブームを巻き起こした大著の日本語版である。この700頁、5,900円の本が、日本でもアマゾン売り上げランキングの第1位であった。アメリカでも日本でも、如何に多くの人々が経済格差の拡大を切実な問題だと考え、これに知的関心を惹きつけられているのかを物語っている。
 著者本人も2015年1月に訪日し、3泊4日の滞在中に3カ所でのシンポジウムや日本記者クラブでの記者会見、各種メディアの単独インタビューなどを精力的にこなし、2月1日午後にはパリへトンボ返りという過密スケジュールだった。

それは「r>g」=資本収益率(r)は経済成長率(g)を常に上回るというシンプルな不等式で説明される。ザックリ言うと、資本主義社会では土地や株に投資して得られる収益(不労所得)の上昇は、労働によって得られる収益(賃金)の上昇より“常に”大きい。つまり、広大な土地や株を持っている人はそこから得られる賃料や配当だけで働かずに優雅な暮らしができるが、労働者は汗水たらしていくら頑張っても絶対に追いつくことはできない。それどころか、その差は開く一方だという。
 この法則をピケティ氏は世界20カ国以上、過去200年以上の税務当局のデータを15年がかりで集計・分析することで明らかにした。それによると、2つの世界大戦と累進課税の強化によっていったんは縮小した格差が80年代以降に再び拡大し始めた。とくにこの傾向はアメリカで顕著で、上位10%の富裕層が総所得に占めるシェアは、1980年の34%から2012年には50%にまで急上昇して、格差の激しかった第2次世界大戦前の水準をも超えているという。

最も楽に勉強したい人は、NHK教育テレビの白熱教室での2915年1月9日~2月13日の6回のシリーズで放映された動画が、動画サイトで見ることができます。

インタビュー記事
その1
 グローバル化に透明性を  展望2015 出典:
http://www.nikkei.com/article/DGXKASDF19H05_Z11C14A2MM8000/
パリ経済学校教授 トマ・ピケティ氏 のインタビュー記事
(聞き手はパリ支局 竹内康雄)
 パリ経済学校と仏社会科学高等研究院の教授。「21世紀の資本」(邦訳・みすず書房)が世界的なベストセラーに。43歳。

2014/12/22付情報元、日本経済新聞 朝刊

 ――所得格差拡大に批判的ですが、経済成長には一定の格差は避けられない面もあります。
 「確かに成長の持続にはインセンティブが必要で格差も生まれる。過去200年の成長と富の歴史を見ると、資本の収益は一国の成長率を上回る。労働収入より資産からの収入が伸びる状況だ。数年なら許容できるが、数十年続くと格差の拡大が社会基盤を揺るがす」
 「日本に顕著だが(成長力の落ちた先進国では)若者の賃金の伸びが低い。第2次大戦後のベビーブーム世代と比べ資産を蓄積するのが非常に難しい。こうした歴史的状況において、中間層の労働収入への課税を少し減らし、高所得者に対する資産課税を拡大するのは合理的な考えだと思う。左翼か右翼かという問題ではなく、歴史の進展に対応した税制のあり方の問題だ」
 ――グローバル化と格差の関係をどう見ていますか。
 「グローバル化そのものはいいことだ。経済が開放され、一段の成長をもたらした。格差拡大を放置する最大のリスクは、多くの人々がグローバル化が自身のためにならないと感じ、極端な国家主義(ナショナリズム)に向かってしまうことだ。欧州では極右勢力などが支持を伸ばしている。外国人労働者を排斥しようとし欧州連合(EU)執行部やドイツなどを非難する」
 ――資産への課税強化で国際協調すべきだと提案していますが、非現実的との指摘もあります。
 「5年前にスイスの銀行の秘密主義が崩れると考えた人はどれほどいただろうか。しかし米政府がスイスの銀行に迫った結果、従来の慣習は打破され透明性が高まった。これは第一歩だ」
 「たとえば、自由貿易協定を進めると同時に、国境を越えたお金のやりとりに関する情報も自動的に交換するような仕組みがつくれるのではないか。タックスヘイブン(租税回避地)に対しても対応がいる。国際協調が難しいことを何もしない言い訳にすべきではないと思う」
 「新興国にとっても2つの意味がある。新興国は(金融の流れが不透明な現状のまま)資本流出が起きれば失うものの方が大きい。中国はロシアのような一部の特権階級にだけ富が集中するような国にならないよう細心の注意が必要だ。中国国内で得た(不正な)利益でロンドンやパリの不動産を買う動きもお金の流れが透明になれば防げる。グローバル化の拡大は歓迎するが透明性を高めるべきだ」
 ――先進国内で格差拡大を嘆く声が出る一方、新興国が成長力を高め世界全体では富が増え格差も縮小しているのでは。
 「アジアやアフリカでは高成長は当面続くだろうが永続しない。歴史的に高成長は他の国に追いつこうとしているときか、日本や欧州のように戦後の再建時にしか起きない。1700年以降、世界の成長率は年平均1.6%で、人口は0.8%だ。成長率が低く見えるかもしれないが、生活水準を向上させるには十分だった」
 ――日本の現状をどう見ますか。
 「財政面で歴史の教訓を言えば、1945年の仏独はGDP比200%の公的債務を抱えていたが、50年には大幅に減った。もちろん債務を返済したわけではなく、物価上昇が要因だ。安倍政権と日銀が物価上昇を起こそうという姿勢は正しい。物価上昇なしに公的債務を減らすのは難しい。2~4%程度の物価上昇を恐れるべきではない。4月の消費増税はいい決断とはいえず、景気後退につながった」

その2
Thomas Piketty 1971年フランス生まれ。パリ経済学校教授。米マサチューセッツ工科大学助教授などを経て現職。不平等の拡大を歴史データを分析して示した「21世紀の資本」(邦訳、みすず書房)は世界的な話題に。同書より前に著した論文は、金融資本主義に異議を申し立てた米ウォール街でのオキュパイ運動の支えになったともいわれる。論説主幹・大野博人氏によるインタビュー
出典:http://d.hatena.ne.jp/ujikenorio/20150105/p1
失われた平等を求めて 経済学者、トマ・ピケティ教授
2014年12月31日21時32分朝日デジタルによる
 自由と平等。民主主義の理念のうち、自由がグローバル時代の空気となる一方、平等はしばらく影を潜めていた。だがその間、貧富の差や社会の亀裂は拡大し、人々の不安が高まった。そこに登場したのが大著「21世紀の資本」。不平等の構造をあざやかに描いた著者のトマ・ピケティ教授は「私は悲観していない」という。

■競争がすべて?バカバカしい
 ――あまりに富の集中が進んだ社会では、効果的な抑圧装置でもないかぎり革命が起きるだろうと述べています。あらゆる社会は、とりわけ近代的な民主的社会は、不平等を正当化できる理由を必要としています。不平等の歴史は常に政治の歴史です。単に経済の歴史ではありません。その不平等を正そう、それに影響を及ぼそうと多様な制度を導入してきました。その代表例として1789年の人権宣言の第1条を掲げました。美しい宣言です。すべての人間は自由で、権利のうえで平等に生まれる、と絶対の原則を記した後にこうあります。『社会的な差別は、共同の利益に基づくものでなければ設けられない』。つまり不平等が受け入れられるのは、それが社会全体に利益をもたらすときに限られるとしているのです」
 ――しかし、その共同の利益が何かについて、意見はなかなか一致しません。
 「エリートや指導層はしばしば欺瞞(ぎまん)的です。だから本では、政治論争や文学作品を紹介しながら社会が不平等をどうとらえてきたかにも触れ、不平等についての経済の歴史というよりむしろ政治の歴史を書きました。すべてが政治と選択される制度によるもので、それられこそが、不平等を増す力と減らす力のどちらが勝つかを決めるのです。」
 ――最近は、減らす力が弱まっているのでしょうか。
 「20世紀には、両大戦や大恐慌があって1950、60年代にかけて先進諸国では、不平等の度合いが19世紀と比べてかなり低下しましたが、その後再び上昇しています。先進諸国には、かなり平等な社会を保障するための税制があり、このモデルは今も機能しています。しかし、それは私たちが想像しているよりもろいもので、自然の流れに任せていては、不平等の進行が止まり、一定のレベルで安定するということはありません。適切な政策、税制等の公的な仕組みが必要です。」
 ――その手段として資産への累進課税と社会的国家を提案していますね。社会的国家とは福祉国家のことですか。
 「福祉国家よりももう少し広い意味です。福祉国家というと、年金、健康保険、失業手当の制度を備えた国を意味するけれど、社会的国家は、教育にも積極的にかかわる国です」
 ――教育は不平等解消のためのカギとなる仕組みのはずです。
 「教育への投資で、国と国、国内の各階層間の収斂(しゅうれん)を促し不平等を減らすことができるというのはその通り。そのためには(出自によらない)能力主義はとても大事だとだれもが口では言いますが、実際はそうなっていません」
 「米ハーバード大学で学ぶエリート学生の親の平均収入は、米国の最富裕層2%と一致します。フランスのパリ政治学院というエリート校では9%。米国だけでなく、もっと授業料の安い欧州や日本でも同じくらい不平等です」
 ――競争が本質のような資本主義と平等や民主主義は両立しにくいのでしょうか。
 「両立可能です。ただしその条件は、何でもかんでも競争だというイデオロギーから抜け出すこと。欧州統合はモノやカネの自由な流通、完全な競争があれば、すべての問題は解決するという考えに基づいていた。バカバカしい」
 「たとえばドイツの自動車メーカーでは労組が役員会で発言権を持っています。けれどもそれはよい車をつくるのを妨げてはいない。権限の民主的な共有は経済的効率にもいいかもしれない。民主主義や平等は効率とも矛盾しないのです。危険なのは資本主義が制御不能になることです」

■国境超え、税制上の公正を
 ――税制にしろ社会政策にしろ、国民国家という土台がしっかりしていてこそ機能します。国民国家が相対化されるグローバル時代にはますます難しいのでは。
 「今日、不平等を減らすために私たちが取り組むべき挑戦は、かつてより難しくなっています。グローバル化に合わせて、国境を超えたレベルで税制上の公正を達成しなければなりません。世界経済に対して各国は徐々に小さな存在になっています。いっしょに意思決定をしなければならない」
 ――しかもそれを民主的に進める必要があります。
 「たやすいことではありません。民主主義の運営は、欧州全体という大きな規模の社会よりも、デンマークのような500万人くらいの国での方が容易です。今日の大きな課題は、いかにして国境を超える規模の政治共同体を組織するかという点にあります」
 ――可能でしょうか。
 「たとえば欧州連合(EU)。仏独が戦争をやめ、28カ国の5億人が共通の制度のもとで暮らす。そしてそのうちの3億人が通貨を共有する。ユートピア的です」
 ――しかし、あまりうまくいっているようには見えません。
 「ユーロ圏でいうと、18の異なった公的債務に、18の異なった金利と18の異なった税制。国家なき通貨は危なっかしいユートピアです。だから、それらも共通化しなければなりません」
 ――しかし、グローバル化と裏腹に多くの国や社会がナショナリズムにこもる傾向が顕著です。
 「ただ、世界にはたくさんの協力体制があります。たとえば温室効果ガスの削減では、欧州諸国は20年前と比べるとかなり減らしました。たしかにまだ不十分。けれど同時に、協力の可能性も示してもいます」
 ――あなたは楽観主義者ですね。
 「こんな本を書くのは楽観主義の行為でしょう。私が試みたのは、経済的な知識の民主化。知識の共有、民主的な熟議、経済問題のコントロール、市民の民主的な主権、それらによってよりよい解決にたどり着けると考えます」

■民間資産への累進課税、日本こそ徹底しやすい
 ――先進国が抱える巨大な借金も再分配を難しくし、社会の不平等を進めかねません。
 「欧州でも日本でも忘れられがちなことがある。それは民間資産の巨大な蓄積です。日欧とも対国内総生産(GDP)比で増え続けている。私たちはかつてないほど裕福なのです。貧しいのは政府。解決に必要なのは仕組みです」
 「国の借金がGDPの200%だとしても、日本の場合、それはそのまま民間の富に一致します。対外債務ではないのです。また日本の民間資本、民間資産は70年代にはGDPの2、3倍だったけれど、この数十年で6、7倍に増えています」
 ――財政を健全化するための方法はあるということですね。
 「日本は欧州各国より大規模で経済的にはしっかりまとまっています。一つの税制、財政、社会、教育政策を持つことは欧州より簡単です。だから、日本はもっと公正で累進的な税制、社会政策を持とうと決めることができます。そのために世界政府ができるのを待つ必要もないし、完璧な国際協力を待つ必要もない。日本の政府は消費税を永遠に上げ続けるようにだれからも強制されていない。つまり、もっと累進的な税制にすることは可能なのです」
 ――ほかに解決方法は?
 「仏独は第2次大戦が終わったとき、GDPの200%ほどの借金を抱えていました。けれども、それが1950年にはほとんど消えた。その間に何が起きたか。当然、ちゃんと返したわけではない。債権放棄とインフレです」
 「インフレは公的債務を早く減らします。しかしそれは少しばかり野蛮なやりかたです。つつましい暮らしをしている人たちに打撃をもたらすからです」
 ――デフレに苦しむ日本はインフレを起こそうとしています。
 「グローバル経済の中でできるかどうか。円やユーロをどんどん刷って、不動産や株の値をつり上げてバブルをつくる。それはよい方向とは思えません。特定のグループを大もうけさせることにはなっても、それが必ずしもよいグループではないからです。インフレ率を上昇させる唯一のやり方は、給料とくに公務員の給料を5%上げることでしょう」
 ――それは政策としては難しそうです。
 「私は、もっとよい方法は日本でも欧州でも民間資産への累進課税だと思います。それは実際にはインフレと同じ効果を発揮しますが、いわばインフレの文明化された形なのです。負担をもっとうまく再分配できますから。たとえば、50万ユーロ(約7千万円)までの資産に対しては0・1%、50万から100万ユーロまでなら1%という具合。資産は集中していて20万ユーロ以下の人たちは大した資産を持っていない。だから、何も失うことがない。ほとんど丸ごと守られます」

■取材を終えて 論説主幹・大野博人
  同氏は資本主義もグローバル化も成長も肯定する。平等についても、結果の平等を求めているわけではない。ただ、不平等が進みすぎると、公正な社会の土台を脅かす、と警告する。そして、平等を確保するうえで必要なのは、政治であり民主主義だと強調する。政治家や市民が意識して取り組まなければ解決しない、というわけだ。
  財政赤字の解決策としてインフレと累進税制との比較では、インフレ期待は、いわば市場任せ。それに対して累進税制も民間の資金を取り込むという点では同じだが、だれがどう払うのが公正か、自分たちで議論して考えるという点で、「文明化された」インフレだという。つまり、自分たちの社会の行方は、市場や時代の流れではなく自分たちで決める。「文明化」とはそういうことも指すのだろう。
 「不平等」という言葉が民主的な社会の土台への脅威であること、そして、その解決を担うのが政治であり民主的な社会であるのだ。

以上がピケテイ旋風に関して、吾輩が集めていたネット上の情報のほんの一部ですが、一応トピックスの1テーマとして残しておきます。いずれにしても格差の拡大の問題は、21世紀の世界各国の最大の政治のテーマであり続けることは間違いないでしょう。

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五.アメリカ大統領選挙(トランプ新政権の誕生)       2016年11月11日

米大統領選挙の意外な結末(変化を求めて投票した選挙民が決めた)

本トピックスコーナーでの「2016年のサイト初め」でご紹介したFT執筆陣が占う2016年の世界での15の予測の中の、1,2番目は次の通りでした。
テーマ Yes or No
①ヒラリー・クリントン氏は米国大統領選挙に勝利するか。 イエス
②2016年に予想される国民投票で英国はEU離脱を選択するのか。 ノー
ご承知の通り、英国のEU離脱の予測のはずれに続いて、アメリカ大統領選挙の予測も、見事に外れ、マスコミの世論調査の不確実さ、不正確さが露呈しています。これ以外にも外れたものが多いようです。不確実性が高まっているとのご時世を十分反映しているようです。
 さて、このたびのアメリカ大統領選挙のテレビ討論での、あまりにも政策論争のない誹謗中傷の見苦しい選挙であったとの報道が多すぎたので、ここでは、トランプ次期大統領が、打ち出していた主要政策についてのBBCニュースの記事をご紹介します。同じBBCのサイトで、アンソニー・チュルシェ 北米レポーターがトランプ勝利の5つの理由を報告しています。ご関心ある方は、ここでご覧ください。

出典:http://www.bbc.com/news/election-us-2016-37468751

ドナルド トランプ次期大統領が立ち向かう重要課題
2016年11月9日
異常で、予測不可能な米国の大統領選挙は、の最終的に予想外の展開―ドナルド トランプ大統領職―で終わった -。
長いキャンペーンが彼の性格についての疑問によって支配されていたので、彼が政権で何をするかは、わきに置かれたものになった。
しかし、彼はまもなく、米国の内外の政策を形作る機会を得るでしょう。 ここで彼がどのように重要な問題に立っているかを述べます。

税金
トランプ氏はロナルド・レーガン時代以降最大の減税を約束している。 彼は全面的かつ有望な働くことと中産階級のアメリカ人の「大規模な」減税を約束している。 彼の計画には、税金の階層の数を7から3に減らし、法人税を引き下げ、不動産税を廃止し、個人の申告者の標準控除を引き上げることが含まれています。
1つの分析によれば、ボトム四分の一が、最大1.9%のブーストを取得する一方で、所得の上位1%が、彼らの収入の2桁の増加を見ることになります。 しかし、合理的予算センターは、彼の計画は国家債務を急増させるだろうと警告している。

仕事の創造
ドナルド・トランプは、海外に行く製造業の雇用傾向を逆転したいです
トランプ氏は、製造業を中心に多くの雇用が失われていると言って10年間で2500万の雇用を創出するとしている。 同氏は、米国の法人税率を現行の35%から15%に引き下げる計画であり、インフラへの投資、貿易赤字の削減、税金の引き下げ、規制の廃止が雇用創出を促進することを示唆している。

移民
これは彼特有の問題です。それを危険で非現実的であるとしている批評家にもかかわらず、共和党員は2,000マイル以上の米国とメキシコの国境に沿って侵入不可能な壁を建設するという呼びかけに立ち向かっている。 彼は法的移民の削減を要求し、不法移民の移送手続を延期するバラク・オバマ大統領の執行措置を終わらせ、米国に住む移住者の数を減らすためのより厳格な努力を求めています。 その候補者は、米国の土地に住む1100万人以上の未移住者の強制的追放とすべてのイスラム教徒に対する米国の国境を一時的に閉鎖するとの以前の要求から手を引いていましたが、それらを止めてはいませんでした。

難民
トランプ氏は、中東や、より一般的には、イスラム諸国の一部地域からの難民を認めようとする米国の政策は、米国の国家安全保障にとって深刻な脅威となっていると警告している。 彼は、シリアの難民は大部分が若くて独身男性であるなど、暴露されたインターネットの噂を頻繁に引用して、彼の事件を補強しようとした。 彼は過激派を選別するイデオロギーテストを含む「極端な黙認」手続きが実施されるまで、米国に移住難民を一時停止させるよう求めた。 彼は、すでに数百万人のシリアとイラクの難民を受けている中東の国々は、暴力から逃れる人々のために安全な地域を作るためにもっと多くのことをしなければならないと主張する。

外交政策
トランプ氏は、イラク戦争(彼が最初から反対していると主張しているにもかかわらず)と中東における他の米国の軍事行動を批判している。 彼はウラジミールプーチンのロシアとのより緊密な関係を求めており、米国と欧州の盟友には国防の費用の大きな部分を負わなければならず、米国の外交政策は常にアメリカの利益に優先しなければならないと強調している。

一方、トランプ氏は、ISとの戦いに強硬な姿勢を示しており、時には米国が戦闘に数万人の地上部隊を託すべきだと主張しています。 彼は、ナイトは中東のテロと戦うためにもっと努力すべきだと言い、米国は同盟のための法案をあまりにも踏襲し、他の同盟国は自分の保護にもっと費やすべきだと主張する。

貿易取引
昔は、共和党は開放的な自由貿易の政党であった。 ドナルド・トランプがそのすべてを変更しました。 彼は原則的には貿易に反対していないが、いかなる貿易協定も米国産業を守らなければならないと述べている。 同氏は、太平洋パートナーシップ(TPP)にしっかり反対しており、北米自由貿易協定(ナフタ)のような既に締結された協定に関する交渉を再開し、米国の要求が満たされなければ撤回すると述べた。 彼はメキシコや中国のような米国の貿易相手国が不公正な貿易慣行、通貨操作、知的財産窃盗などを非難しており、改革を実施していないと一方的に関税や罰則を課すと脅している。

気候変動
トランプ氏は、彼のウェブサイト上の環境問題に関する立場の声明を発表していない。 しかし、演説や議論では、「極度の議題での政治的活動家」の支援を受けて経済的に損害を与える環境規制と彼が見ているものには反対すると述べていた。
彼は清潔な水と空気をサポートしていますが、環境保護庁への資金を削減したいと言います。 彼は人為的な気候変動を「欺瞞」とも呼んでおり、パリ協定やその他の国際的な取り組みを「キャンセル」すると述べた。

中絶
共和党員は、3月に中絶が違法でなければならないと述べ、彼はそれを持っていた女性のために「ある種の刑罰」を支持した。 しかし、彼のキャンペーンは速やかにその声明で支持され、候補者は手続きの合法性が個々の州に委ねられるべきだと主張し、刑事罰金は中絶事業者に留保されるべきだと主張した。
彼は、 “レイプ、近親相姦、そして母親の人生”の中絶禁止例外を支持していると言いました。 彼は、計画された親の擁護を訴えるように求めました。 最近2000年になって、トランプ氏は、中絶の権利を支持したが、ロナルド・レーガンのように、彼はその問題について意見を変えたと述べている。

健康
オバマケアは、大統領の署名政策の一つであり、Trump氏はそれを廃止することを誓いました。 彼の代案は、個々の州に健康計画をより強くコントロールさせ、国境を越えた競争を可能にするだろう。 共和党が議会の指揮をとっていると、オバマケアを取り消すことは本当に可能性のようです。 しかし、何百万人ものアメリカ人がカバレッジを失うという反発に直面する可能性がある。

法と秩序
トランプ氏によると、暴力と無法は米国では無くなりません。 彼は、法執行機関は、圧倒的な「政治的正しさ」のために犯罪と戦うことができずにいると言い、犯罪者に厳しくすることが許されるべきだと言っています。 彼は、米国の国土へのテロ攻撃を防ぐためには、警察のプロファイリングが必要であると述べている。
彼は、多くの専門家が反対しているにもかかわらず、政策がニューヨークで非常に成功したと主張し、「ストップとフリスク」を支持する。 その実践は、市の連邦裁判官により「間接的人種のプロファイリング」の一形態で違憲であるとの判決を受けた。

育児
共和党の正統性を否定するトランプ氏は、6週間の有給育児休職を求め、これは、母親が失業給付で受け取る額に相当する額になる。 しかし、これは父親には当てはまりません。 しかし、この政策がどのように賄われるかについての詳細は定かではありません。

銃規制法
彼は、武装した人々が介入して人生を救うことができたと言って、爆発の銃法に関するいくつかの射撃を非難している。 彼はしばしばキャンペーン中に、銃の権利を取り除きたいとしているライバルのヒラリー・クリントンを非難し、第二修正条項が安全であることを彼の支持者に約束しています。

最高裁判所
次期大統領にとって最も重要な決定の1つは、最高裁判所の将来を作ることです。 現在、空席が1つありますが、退職年齢の複数の判事がいれば、トランプ氏は複数の任命を行い、裁判所を今後数年間の局面を変更できます。

ロビイスト
トランプ氏は、ロビイストに対する規制を作成したいと考えています。 現在、ロビー活動に携わっている時間の20%未満を費やしている人は、自分を「アドバイザー」または「コンサルタント」と呼ぶことができます。 トランプ氏は、これは閉鎖されなければならない抜け穴だと言います。 彼はまた、最近政府を去った政府高官がロビー活動会社にすぐ参加することを防止する提案されている5年間の禁止の存在も提案しています。
彼はまた、以前は外国政府のために働いていた前政権の職員に対して、生涯のロビー活動禁止を望んでいる。 彼は、米国政府の選挙資金を調達するのを外国政府に頼むことを止めるよう議会が財政法を改正することを求めた。 彼は彼のキャンペーンを「自己資金提供」していると主張しているが、元ヘッジファンドマネージャーを雇い、ディープポケットドナー(豊富な資金源の寄付者)からキャンペーン資金を募っている。

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六.2016年のグッドニュース                 2017年1月4日

2016年に起こった世界での4つの良いこと

出典:BBCワールドサービス:ヘレナメリマン
2016年12月31日
今年はたくさんの悪いことがありました。 しかし、それが英国と米国内でのBrexitやドナルド・トランプの選挙での意見の分かれを意味するものではありません。
地中海のシリアでの戦争、Zikaウイルス、世界各地でのテロ攻撃で死亡した数千人の移民、これまでに記録された最も高い気温をここでは意味します。 しかし、まるでその全てが悪いことで十分ではなかったかのように、デヴィッド・ボウイが亡くなりました。 (訳者注:デヴィッド・ボウイは1月10日に享年69歳で亡くなっている。公式の声明によれば、「18ヶ月に及ぶ勇敢なガンとの闘いを受けて」亡くなったという。)
そこで、BBC世界事業部の調査プログラムから、それらが起こったことに尽力した4人の視点からの2016年における良かったことをここに掲げています。
4つの物語は、たった一つのことで共通するものがあります: それは、一見不可能に見えることを成し遂げるという野望です。

コロンビアの和平
コロンビアでの戦争の50年間に、ほとんどの人々が何らかの形でその影響を受けてきました 。 しかし、一部の人たちは、他のものよりももっと大きく。
父親と二人の兄弟を含むTeresita Gaviriaの家族12人が殺害されました。 その後、ある日、彼女の15歳の息子は学校に行く途中で誘拐され、彼女は再び彼を見ることがありませんでした。
「私は、「私の息子を返してくださいと叫びながら山にこもりました。私は苦痛から死にたかった。」 と彼女は言っています。
Teresita Gaviriaは教会の前で毎週抗議を始めた。 最初は戦争への子供を失ったばかりの母親が5人しかいませんでした。
すぐに数百人になりました。 そして、彼らは抗議だけではありませんでした。 彼らは戦闘員に話すために刑務所に行き、平和協議を開始するだけでなく、交渉に犠牲者を含めるよう政府に働きかけて、彼らは成功しました。 Teresita Gaviriaと他の犠牲者は、交渉が行われたキューバに招かれました。
そこでは、彼らはFARCのメンバーの前に座って彼らに話をしました。 これまで世界の他の平和プロセスでこれが起こったことはありませんでした。 「私たちにとっては非常に重要でした。」「被害者は加害者と対峙することが必要でした。」 と彼女は言います。

今年は、 和平協定に到達しました 。 それは、部分的に犠牲者の貢献のために、画期的なものとして説明されています。 ほとんどの平和交渉と同様に、それには批評家がいますが、それは始まりなのです。
Teresita Gaviriaは、署名された式典に立ち合いました。 「幸せの瞬間でした」と彼女は言う。 「流血は最終的に終わりを迎えました。私たちは服が張り裂けそうなほどの喜びでした。」

遺伝子の組み換え
Sophien Kamoun教授はチュニジアの植物生物学者です。 彼はいつも、特に開発途上国における農薬の壊滅的な影響を見た後、植物病に関心を持ってきました。
毎年、病害虫の作物に農薬を使用した後、何千人も死んでいます。 病気にならないタイプの植物を作り出せたらどうでしょう?
ノーウィッチ大学の研究室でソフィエン・カモン氏が実験してきたのは、今年に入ってから米国で発明された新しい技術、遺伝子組み換えです。 それは科学者が植物のような生物の遺伝子を改変することを可能にします。
Kamoun教授は、特定の病気に罹りにくくなるように、トマト植物の遺伝子を組み替える実験をしました。
最初に、トマトをその病気に脆弱にする遺伝子を単離しました。 その後、彼らはトマトのゲノムから遺伝子を除去しました。 “それは真菌の病気に弾力性があった”と彼は言います。
遺伝子組み換えは非常に強力な手段です 。 そのような技術の使われ方について実際の懸念がありますが、それを適切に管理すれば、あなたは世界に食料を供給する方法を変えることができます。
「毎年、何億人もの人々へ供給するのに十分な食料を、病原体や寄生虫のために失っています。 「作物の病気への耐性を高めることができれば、それは素晴らしい成果です。」
遺伝子組み換えを実験しているのは植物の生物学者だけではありません:医師は、失明の原因となる突然変異を逆利用し、がん細胞が乗数的に増殖するのを停止させ、そしてエイズを引き起こすウイルスに対する耐性細胞を作るためにそれを使っています。
そういうわけで、遺伝子組み換えを世紀の発明と呼んでいる人がいるのです。

スリランカのマラリア
2009年、スリランカ政府は5年未満でマラリアを根絶しようと、何か特別なことをすることを決めました。
ヘマンサ・ヘラート博士は、キャンペーンを率いた人たちの一人でした。 彼は、マラリアを患っている人々を治療するために数年かかりました。 幸運な人は生き残り、 不運なものは昏睡状態に陥り、死ぬことがあります。 だからこそ政府はマラリアを完全に排除したいのです。 彼らはかねてよりそれをやろうとしていましたが、1980年代に内戦が起こったときに、医療従事者は最悪の被災地に行くことができませんでした。
戦争が2009年に終わったとき、政府は機会を見出だしました。 彼らは、マラリアに罹ったことを知らない人々を含め、マラリアの最後の症例のすべてを追跡することに決めました。 他の国が試みたことのない大胆な戦略でした。 彼らは、過去に発熱して病院に来た患者を検査しました。 彼らにマラリアがある場合、彼らの治療だけでなく、彼らの家族は検査され、彼らの家には殺虫剤が散布されました。
その後、保健医療従事者は蚊自身を追跡しました。 それを捕獲するために、彼らは自分自身を餌として提供しました。 それらの努力が功を奏しました。
今年はそれが公認されました: スリランカは今やマラリア完全克服しました。 ヘラート博士にとって、それは大きな誇りの瞬間でした。 「マラリアを排除できることを世界に示しました。」

ソーラー飛行機の世界一周航行
バートランド・ピカードは、小さかったとき、彼は高所恐怖だった。 ある日、彼はハングライディングで自身を治すことにしました。
彼は高所恐怖を克服しただけではありませんでした。彼は執拗になり、ハンググライダーアクロバットをやって、すぐに3000メートルの高山を飛び越えました。
40歳の彼は、熱気球で世界中をノンストップで旅行しました。 彼は記録を作りましたが、気球を空中に保つためにプロパンガスを燃やすことが気に入りませんでした。
彼は約束をしました:次回は燃料無しに世界一周することを。 二酸化炭素排出量の増加を懸念し、彼はクリーンな技術が何ができるかを示したいと考えました。
そして、太陽光発電機の考えが生まれました。
17年後、いくつかのプロトタイプを作った後、彼の飛行機は準備が整いました。 その外側には17,000以上の太陽電池がありました。
1月初めの月曜日の早朝、 ソーラー・インパルス2は、世界一周35000キロの旅のスタートにアブダビ空港から離陸しました 。 太陽だけで動く旅。
Bertrand Picardと副操縦士のAndre Borschbergが順番に飛び立ちました。 日々、彼らは太陽の力で飛んでいった。
「本当に素晴らしい経験です。あなたは太陽を見て、あなたの左と右にはプロペラを回しています。あなたは燃料がないことを知っています。それはあなたを飛ばすだけの太陽です。あなたは公害を生みません。あなたは理論的には永遠に飛ぶことができます。」
夜になると、彼らは日中太陽から蓄えられた電気で飛んでいきました。 「次の日の出まで足りるといいだけです。と彼は言います。
ある夜、彼らはバッテリー寿命の最後の5%になりました。 「これは私が一番気に入った私の人生の瞬間でした。」とPiccard氏は言います。「これは冒険の魔法です!」
7月26日、ベルトラン・ピカールはアブダビに戻って着陸しました 。 17年の計画と23日の飛行の後、彼はそれをやりました:世界初の太陽光発電飛行機の世界一周飛行でした。
数ヶ月後、クリーンテクノロジーのためのワールドアライアンスを創設しました。 飛行は終わったかもしれませんが、Bertrand Piccardのために、新しいプロジェクトが始まりました。
以上

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七.トランプ新政権(新大統領について知っておくべきこと)    2017年1月19日

はじめに;
ビル・D・モイヤーズ 元ホワイトハウス報道官のサイトに掲載された、トランプ次期大統領についての、自叙伝ならぬ、他叙伝(トランプについてのPR文書というよりは、30年以上にわたって、彼を執拗にフォローし、時には税の相談役を務めたこともある、異色とも言ってよいピューリッツァー賞を受賞した記者のデイビッド・ケイ・ジョンストン氏による本)の紹介記事です。その本の中で、同記者は、最終章の末尾に「これらのページに記載されている多くのエピソードが示している通り、トランプは自分が選択すること及びその原因結果から逃れることに驚くほど機敏である」と述べています。また、あとがきで、直接的なトランプに関する知識、調査記者として約50年間で集めた数千枚の書類、トランプの行動の事実的側面に焦点を置き、有権者に伝えることが目的で書いた本であると述べている。また、誰も彼の性格を完全に知ることはできないが、彼の行動に基づき検討し評価することはできると述べている。従って、トランプの「お金の執着と富の飾り」また、ほとんど知られていないトランプの複雑な犯罪者との関係、詐欺師、暴徒、暴力団、主な麻薬密売人、道徳的に芳しくない人物について焦点を当てたと記載しています。
 なお、この本の紹介記事を書いたキャシーKielyなる人物は、ワシントンD.C.ベースのジャーナリストおよび教師で、USA TODAY、 ナショナル・ジャーナル 、 ニューヨークデイリーニュース 、 ヒューストンポストなど多くの報道機関に国政を報告し、編集してきています。 She been involved in the coverage of every presidential campaign since 1980.彼女は1980年以来、すべての大統領選挙のカバーに携わってきました。彼女が、この記事の終わりで、ジョンストン氏のインタビューで、「私はニューヨーク・タイムズのために働き始めたとき、アメリカの不平等の拡大を文書化し始めました。トランプの本が、その間の小休止でしたよ。」との発言を書いています。
 追って、ジョンストン氏による、一般人が、トランプと同様所得税を納めないことができるかどうかの投稿記事も、ここで披露しておきます。

 いずれにしても、トランプの悪いとこばかりに集中しがちなマスコミによるフォローに嫌気がさして、良いも悪いもトランプが現在に至った成功原因を客観的に述べた本であるようですが、学術的ではありませんが、全くのタブロイド的でもないのが興味を誘います。というのがこの記事や他の紹介記事を読んでの私の現時点での印象です。一方的でない記事の発掘と紹介にこれからも務めてゆきたい気持ちを込めて、はしがきとします。

出典:http://billmoyers.com/story/making-donald-trump-told-journalistic-nemesis/
キャシーKiely | August 5, 2016 2016年8月5日

「The Making of Donald Trump, As Told by […]ドナルド・トランプの成功原因 」

ジャーナリズム的な強敵によって語られた「ドナルド・トランプの成功原因」は、「基本的にドナルド・トランプが、あなたが知らないことをあなたにはっきりさせたいと思っている全てです。」と語っている。
ピューリッツァー賞を受賞したレポーターデビッド・ケイ・ジョンストンは、プレスのドナルド・トランプの扱い方に満足していません。 67歳のジョンストンは、明らかに依然として問題を抱えているが、ワシントンでの木曜日に、ナショナルプレスクラブよりも恐ろしい相手がいるところで、「私の意見では、其の扱いは著しくおそまつだ。」とはっきりと表明している。
だから、ジョンストンは、何かが間違っていると思っているときに行動する性向があるので、自らその問題に取り組むことに決めました。

彼のリリースされたばかりの本、「 ドナルド・トランプの成功の原因 」は、288ページの大作で、「基本的に、あなたが知らないドナルド・トランプをあなたに明確にしたいすべてです。」と何十年も不動産の大御所をフォローしているジョンストンは、言いました。
ジョンストン氏によると、彼が「私の同僚に非常に批判的だった」主な理由は、彼らがあまりにも屈辱的でプロフェッショナルすぎたということです。 ジョンストン氏は共和党大統領候補を、「彼等はあたかも深刻な人物であるかのように彼を報道している」と述べた。 ジョンストンはトランプの一部の良い報道があったと信じているが、彼は「タブロイドのスタイルで書かれたものではない」とそれがあまりにも高慢であることの欠点を宣告しました。
「ドナルドはジャーナリズムの伝統を操作する名人だ」とベテランの記者は説明しました。「ドナルドはただ、それを作り上げるために」、 彼は、頻繁に告白で説明されたブックトークで、これらの伝統の多くを粉砕しました。ジョンストンも繰り返しトランプを「現代のPTバーナム(興行師)。」と呼びました。元ニューヨークタイムズ紙の 男の本は、既にタブロイド紙用の材料を提供していました 。
それは、共和党の大統領候補の祖父、ドイツの移民は、-ジョンストンは明らかにNYタイムズ氏に記者のスタイルでなくそれを書いたのでー、「売春宿」をやっていました、で始まり、いくつかの不運な見方での実業家であるとジョンストンが書いているトランプの父までの、継続的なトランプの財産の上昇を記録しています。
ドナルド・トランプのような親族を持った主要政党の大統領候補者を見たことはこれまで一度もありませんでした。
1927年、フレッドトランプはクー・クラックス・クランの集まりでNYのクインーズ自治区で逮捕された―その一部分を彼の息子は猛烈に否定してきているが 、ジョンストンは:「私は切り抜きの記事を持っている。」言った。その後、彼の本の中でジョンストンは、伝えられるところでは、長老トランプと、帰国したGIのための連邦住宅プログラムでのアパートを借りようとしていたアフリカ系アメリカ人に対して行った差別を止めるよう求めた連邦政府とのトラブルを詳細に書きました。その結末は、 彼が訴訟で上院議員ジョセフ・マッカーシー(R-WI)の元長年の側近の、不祥事を起こした共産党の魔女狩り犯人ロイ・コーンによって代表された–ドナルド・トランプが裁判所によって却下された人種的バイアスの申立てを獲得しようようとして失敗した後に生じました。
Johnstonは、TrumpとCohnの関係を見て、コーンは、「ドナルドに人を痛めつける方法を教えました」と彼は言いました。 ジョンストン氏は、「ドナルド・トランプ氏が持ったのと同じような関係を持った主要政党の大統領候補者を私たちはもったことはない」と語りました。 過去の大統領の中には親しい友人やビジネス団体と関係を持った人もいましたが、ジョンストン氏は続けました。「彼らはマフィアではありませんでした。 彼らは麻薬密売人ではありませんでした。」
記者クラブのイベントで、ジョンストンはフェリック・スセーテル、ロシア生まれの株式詐欺師とトランプの結びつきについて繰り返し質問をうけ、そのマフィアとの旅行の同行を認めました。 Saterは今や税金詐欺事件の被告です;新聞は今月初めトランプと彼の二人の子供たちを「影響力の強い証人。」 として、名前を公表しました。
彼はトランプのヘリコプター艦隊を運営していた発作を起こす重症の病気を持つ彼の幼い偉大な甥に、トランプが与えたヘリコプター艦隊を運営する会社を運営している有罪判決を受けたドラッグ・ディーラーに、トランプが与えた対策を対比するために、読者を案内しています。
彼の問題のヘリコプタープロバイダー、ジョーイWeichselbaumのために、不動産の巨人は、豪華なアパートを提供し、雇用を継続し、麻薬取引のためのWeichselbaumの告発の後の裁判所へ証言したと、ジョンストンは彼の本で詳述しています。 しかし、トランプは、父親のフレッド・トランプ(彼らを除外した)の遺言の裁判で、赤ちゃんの両親が父親の遺言を争った後、死んだ兄の孫を、あまり面倒を見ませんでした。 トランプは家族の医療保険から病気の子供を取り除きました。 「私はそうせざるを得ませんでした。」とジョンストンは、トランプは、彼が乳児の医療保険(裁判所は、後でそれを復元)を遮断した理由を尋ねたニューヨークデイリーニュースレポーターに言ったことを引用しています。
今私は彼女の人生を悲惨にすることを敢えてしているのです。
復讐は、トランプにとって誇りのポイントです、ジョンストンは言いました。 「彼の個人的なモットーは、「復讐をする」ことだ」と,その章のすべてをトランプの長談義と記述に集中した記者は語った。 トランプは、倫理的な良心の呵責を引用し、彼に代わって銀行家の友人を呼び出すことはありません、女性従業員を解雇した方法を記述し、ジョンストンは、彼の著書「事業と人生において大きく考えよう(大きく考え、やっつけましょう) 」からトランプ自身の説明を引用しています:
“彼女は家を失ってしまった。 お金のためだけにその中にいた彼女の夫は彼女の上を歩き、私は喜んでいました…私は不誠実に腹を立てることはできません…そして今、私は彼女の人生を悲惨にすることを敢えてしているのです。
ジャーナリストのための箱の外での動きでは、ジョンストンは、彼がイエス・キリストが聖書のマタイ傳5―7に概説されている哲学からどれだけ候補者の個人的見解がずれているかの証拠を提供している、トランプを支援する福音派の閣僚の一部に手を伸ばしていると述べた。 「私は彼らに電話しました。 私は行こうと提案した」とジョンストン氏は語った。 これまでのところ、誰も彼の申し出を受け入れていない。
彼はフィラデルフィアインクワイアラーのアトランティックシティ支局長以来、そしてトランプが、ニュージャージー州の海辺の町にカジノビジネスに参入しようとしていた頃からトランプをカバーした「私は世界でおそらく最大のトランプの資料コレクションを持っています。」とジョンストンは言いました。 シラキュース大学で講義を行う税法の専門家ジョンストン氏は、「ドナルドは何年も連邦法人所得税を支払っていない」と思っています。それは、様々な裁判事件から流出した書類に基づいているとし、トランプの彼自身の家族の基金への慈善寄付の欠如 (控除のための必要性がないことを示唆しています)、および不動産開発者が利用できる税の抜け穴等によるものです。
長年にわたるキャンペーンの伝統を破る税の確定申告書を公開しないとのトランプの決定は、彼の本当の純資産を明らかにしたくないことに基づいている可能性もあります。 ジョンストン氏はトランプが「非常に豊か」であると信じていると言いますが、他の多くの人と同様に、彼は自分を見せかけようとするほど豊かであるかどうか疑っています。 トランプの主な才能は、億万長者に適した「ライフスタイルを支えるお金をもたらす取引をする」ことにあります。 「あなたが本当に知っている億万長者の如何に多くが、鷹狩のタイ、ステーキ、ボトルドリンク、ボードゲームをあなたは見届けていますか?
ジョンストンのジャーナリズム的なキャリアは、彼がトランプを告白したことに対して、共和党大統領候補の魅力を理解するための独自の資格を与えました。 「私はニューヨーク・タイムズのために働き始めたとき、私はアメリカの不平等の拡大を文書化し始めた“と彼は言いました。 「政府のルールは多くの人々から受け取り、すでに豊かな少数者に与えている」と述べた。中流階級から無理やり押し出されている人々は、彼らの苦境が目に見えないことを除けば、絶望の最中にあると主張した。 「彼らについてはほとんど何も書かれていない」 ジョンストン氏はその問題にも取り組む計画を持っていました。 彼は、トランプの本は彼の本当の大塊を書くことからの小休止でしたと言います。 「まったく新しい税法典―フルコースの―を書いています。」と言いました。
というのが、彼女による、ジョンストンの本の書評です。彼女は、ジョンストンをトランプに敵対する記者と書いていますが、「共和党大統領の魅力を理解するための独自の資格を与えた。」とも書いています。私にも、自分に不利益を与えたものへの10倍返しもいとわない、復讐心が強いトランプにとってのマイナス記事を、ジョンストンがあえて書いた背景には、いいことを書くだけでは、ごますりか自己PRと同じと思われるのを避けるために、必要最低限の高等な戦略であろうと私は勘繰りたくなるのです。
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