2012年11月1日更新

2012年11月1日更新

はじめに

 皆様ご案内の通り、消費増税関連8法案がさる8月10日、参院本会議で民主、自民、公明3党などの賛成で可決され、成立しました。
 昭和63年12月に導入された消費税率の引き上げは、平成9年に3%から5%になって以来のことで、条件が整えば、平成26年4月に8%、27年10月に10%になります。消費税が導入されて約四半世紀が経過し、その財政上の役割は、今後ますます重要になるものと思われます。しかし、先進国の中でも、GDP比で最大の国債発行残高を抱えるわが国の財政再建は、もはや待ったなしの状況にあり、先送りされ続けてきた財政再建の第一歩がやっと動き始めたにすぎないのです。もっと困難な課題は、それらの貴重な財源の使い道であります。我々の子孫のためにも、安定的で、持続可能な国造りに向かって、全国民が一体となって、真剣に取り組む必要があります。この問題こそ、経済の成長と財政の役割(国のサイズ)との長期的な係わりの中で、安定的な財政を導くための仕組のあくなき追求であるのです。
 48年ぶりに東京で開催されたIMF・世銀の年次総会では、財政健全化などの政策課題について、『効果的かつタイムリーな実施が重要』と指摘する一方で、財政再建に軸足を置いていた姿勢を修正し、世界経済を成長軌道に戻すため断固として行動する必要があると各国に協調を呼びかけました。
 IMFの諮問機関である国際通貨金融委員会〔IMFC〕は、世界経済の減速に強い懸念を表明する共同声明を採択し、先進国に対して、財政健全化などの構造改革を成長に配慮して進めるよう要請しました。

 ところで、前回のトピックスでは、アメリカにおける超党派の財政再建特別委員会の報告書(財政の正念場)をご紹介しましたが、最終的には、民主、共和両党の委員18人のうち、民主党の4人と共和党の3人の計7人が反対したために、議会での投票に送付されることはありませんでした。その問題は、今秋の大統領選挙の争点として持ちこされた形になっています。
 そこで、今回のトピックスコーナーでは、
 アメリカの大統領選挙での税制上の争点に関する記事からスタートし、イギリスにおける、連立政権での財政赤字削減の動き等を眺めてみることとしました。
 米国の租税財団のチーフエコノミストの2012年9月6日  ウイリアアム・マクブリッジの「ロムニー、オバマそしてシンプソン-ボールズ:税制改革の動きはあるのか?』を見てみましょう。この文書の筆者は、税においては、ロムニーの考えを支持しているように思われます。

 次に、我が国と同様に、絶対多数の与党ではないイギリスにおいては、保守党のキャメロン党首が2010年5月11日、新首相に就任しました。総選挙で第1党になった保守党と第3党の自由民主党(自民党)の連立政権樹立合意による新内閣は、13年ぶりの政権交代で、保守党と自民党は、財政赤字削減に向けた緊急予算策定などの政策合意内容を発表しています。新政権が最初に発表した、2010年5月の自由・公正・責務をスローガンに掲げた「超党派連合:政府のための我々の計画」を掲げました。わが国と共通する問題も多く、その動きを見守る必要があります。
 英国における連立政権は、妥協の産物と見る向きはあるものの広範な分野における詳細な連立合意文書に基づき、財政再建策や各種公共サービス改革案を矢継ぎ早に打ち出しました。その背景には、新政権に対する国民の期待感や、財政赤字削減の必要性についての国民の理解があったようです。同じ問題を抱えるわが国が参考とすべきことは、①歳出の見直しにおける、タイムテーブルや枠組みを定め、②予算を執行する各省庁に対する全面的な見直しを行わせ、③政治家はもとより、公務員に対しても自覚や責任もたせて、全国民一体となっての取り組みであることを強調した点にあるといえるでしょう。
 しかしながら、2011年に入ると、付加価値税の引き上げが実施されたばかりでなく、歳出削減の具体的な「痛み」に反発する声も報じられるようになり、政党支持率では野党労働党が首位となる状況が固定化しました。2012年に入ると、予算案の内容や党大口献金者優遇の発覚等により、「金持ち優遇」との批判や、各種政策の打ち出し方や事案へ批判もなされています。政権にとっては、次期総選挙に向けて、経済回復が至上命題となっているようです。

 次のトピックスは、先に述べた国のサイズの最適なものについての論文のうち、
 「国の最適な大きさを我々は決めることができるのか?』と題するCATOシンクタンクのジェームス・カーン氏による経済成長と国のサイズとの関係についての論文と、「国のサイズと拡大について」と題するセントルイス連銀の研究者が、国が大きくなる要素(官僚主義、圧力団体等)についての基礎的な論文を紹介しております。
 これらを読んで感じたことは、財政の再建には、歳入の確保の前に、国のサイズの要素でもある行政の役割をまづ検討する必要があると感じました。必要な歳出を賄うための歳入の確保の手段としてのとしての税制が必要となるのです。ニワトリが先か卵が先かというよりも、スイスが採用したような無い袖は振れぬといった基本原則(「歳出の上限は国のサイズを制限できるのか?』と題する、
記事:Can Spending Caps Constrain the Size of Government?)を読むと、スイスにおける歳出規制のような国民的な合意形成が必要な気がしてなりなりません。
 そのような合意ができないとしても、財政再建と経済成長の両立を目指さなければならない我が国においては、旧来型のインフラ整備や地域振興策を漫然と積み上げる選挙民の近視眼的な点数稼ぎでは、将来に必ず禍根を残すこととなるでしょう。
 本当に意味のある財政政策と民間の活力を生かす産業政策等のポリシイミックスで、
若者たちに夢と希望を与えるような、改革のための思い切った政策、わが国ならではの「賢い政策」を練り上げてほしいものであります。
 われわれ国民は、自らの参加と協力なくして、それを達成することが不可能であることを認識し、小異を捨てて大同に付くといった精神で行動する必要があるのはないでしょうか。
そのために我々ができること、というよりなすべきことは、われわれが一時的に痛みを感じる様な政策でも、それが必要なこと、有効なことを十分に説明し、約束通りに実行できる官民の指導者グループ(官:議会、行政および民:企業経営者)に付託するしかないのでしょう。代表民主主義・資本主義国家なんですから・・・。
 以上のような考えを有識者の多くが云い始めて久しいのですが、その具体的な動きが感じられないのはなぜなのでしょうか? 自然災害等(他人もしくはグル―が選択したり決めたことではない原因)の時の秩序ある理性的な行動には、海外から称賛の眼で見られているわが日本国民が、人災(国、地方自治体、会社、学校、といった人間が管理している制度等が災いの原因である。)のような場合には、それを変えることによる痛みの違いから、現状維持を望む人が多いせいなのでしょうか。よくなるための変化さえも否定(総論では賛成しながら各論では反対する。)する人が多い限り、国政の代表者もそれらの声に従わざるを得ないのでしょう。しかも、その必要な変化には、無数の選択肢があるようですからなおさら難しくなるのでしょう。やはり、結局は、協力な指導者の登場を待つのか、外圧もしくはマーケット等によるバッシングによるしかないのでしょうか。

 最後のトピックスは、租税正義の基本原則「バフェットルール」と題する税制の公平性のテーマを、個人所得税中心のアメリカの税制において、金持ち優遇か否かの政治論争の一端に触れてみようではありませんか。最初のトピックスと併せお読みいただくとよいでしょう。わが国でも、所得格差が徐々に拡大し始めているようですから・・・。
 税を考える週間の頭の体操にいかがでしょうか。

渋谷桜ケ丘「税の図書館」編集員 免出

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トピックスの目次
タイトル 英語
アメリカの大統領選挙での税制争点
党派連合:政府のための我々の計画
歳出予算見直しの枠組み
国の最適な大きさを我々は決めることができるのか?
国のサイズと拡大について
租税正義の基本原則:バフェットルール
「税の図書館」の本棚への追加
タイトル 出典
地方交付税のフライペーパー効果
24年版厚生労働白書 本文 概要
社会保障・税一体改革大綱について 閣議決定

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