2013年6月24日更新

2013年6月24日更新

はじめに

 アベノミスクの影響からか、沈滞気味であったわが国経済に、一縷の明るさが見え始めております。その本格的な効果等につきましては、軽々には予測はできませんが、世界中から関心の眼で見守られていることは、確かなようです。4月に開催されたワシントンでの(G20)財務相・中央銀行総裁会議の共同声明では、(1)日本の最近の政策措置は、デフレを止め内需を支えることを意図したものであるとされつつも、(2)日本は信頼に足る中期財政計画を策定すべきだと釘が刺されたようです。又、国外所得での課税漏れに強い関心を持っている英国からの要請で提出されたOECDの情報交換の実効性に関するグローバル・フォーラムの報告を歓迎し、特に法制がいまだ基準を遵守できていない14カ国・地域をはじめ、すべての国に、受けた勧告を迅速に実施するよう強く促すとともに、全ての国・地域に対し多国間税務行政執行共助条約の署名すること又は署名する関心を示すことが強く奨励されたようであります。(本棚に掲載している財務省が仮訳した『共同声明書』を参照ください。)

 いずれにしましても、我が国の財政措置等が、G20での期待にこたえることができるかどうかは、国を挙げての生半可でない覚悟と実行力による実績いかんにかかっていると云えるのではないでしょうか。
 そのためには、
少なくともまず、現在、わが国の政府が国際的にも約束している「2015年度にプライマリー・バランス(基礎的財政収支)赤字幅を2010年対比で半減、20年度には均衡」という目標を確実に達成するために、いかなる緊縮策等を講じるのかを明確にすることが求められているといってよいでしょう。
 OECD(経済協力開発機構)は去る4月23日に公表した対日審査報告書のなかでも、わが国の公的債務残高比率を2020年までに安定化させるためには、プライマリー・バランスを4%の黒字となるように改善することが必要である、と指摘しています。

 また、IMFは、5月31日に公表した対日4条協議終了に公表した声明において、「今後10年で、債務残高対GDP比を確実に引き下げるためには、GDP比11%の構造的財政調整が必要だとスタッフは見込んでいる」としており、「GDP比11%」とは、2012年暦年の名目GDP(475.8兆円)に基づけば、現状の財政運営に比較して、52.3兆円規模の構造的な(=毎年度の)財政調整が必要、ということになります。
OECDの対日審査報告による提言は、2012年4月の日本に対する政策提言に含まれていた11項目とほぼ同じ内容の幅広いものであり、国内的にもこの15~20年間における政権での政策課題として掲げられながらも、先送りされ続けた未解決の問題が多くを占めています。
 それらは、1 経済成長の活性化、2 財政の持続可能性の達成、3 税制改革、4 世界経済への融合の強化、5 教育の強化 、6 医療と介護の強化、7 社会一体性の推進、8 男女格差の是正 、9 よりグリーンな成長の実現、10 農政改革 、11幸福度と社会進歩の測定 です。
それらの中で最も優先されなければならない課題が、2番目の財政の持続可能性の達成でありますが、其れ以外の多くの課題が、その足かせとなりかねないものばかりであります。これらを同時に達成することの難しさは申しあげるまでもありませんが、其れに立ち向かうしかないのです。国を挙げて、この国難とも言ってよい諸課題に取り組む必要があるのです。もはや、国が何とかしてくれるだろうと思うのではなく、国民それぞれが何ができるかを真剣に考えて、実行に移すしかありません。家族のため、地域のため、国家のために個々人が果たすべき義務乃至役割を、説明し、指導し、命令する指導者、政治家の皆さんとともに、若者に夢と希望を与えるような国づくりに立ち向かうことが求められているといってよいでしょう。地域社会、地方自治体および国家それぞれの舞台で、その役割を果たすべきでしょう。我々日本人は、外国人が驚くようなことでも、その気になればできるのですが、やり方に大多数が納得するまではやろうとしないところが問題なのです。それをやらせるのが、政治でしょう、何時やるの? 今でしょう。

 さて、先の国際課税での租税回避については、英国のスターバックス租税回避問題が、アマゾンやグーグルに波及し、米国やフランス・ドイツなど他の先進諸国にも影響が広がった。米国では、アップルが議会に呼ばれ、証言をしたが、財政赤字を背景に神経をとがらす先進国政府においても、この問題に現時点で最も真剣に取り組んでいるのは英国のキャメロン首相のようです。
 脱税でもなく、税法には反しないように、通常用いられないような法形式を選択し、税負担を減少させるのは、「租税回避」とよばれています。いわゆる多国籍企業が、高度の専門的な知識を駆使してのタックスプランニングにより、全世界での租税負担の総額をできるだけ抑えようとするものです。この問題は、夏に開催予定の英国サミットでも、主要議第として取り上げることが予定されています。
 すでに、OECD租税委員会から「Addressing Base Erosion and Profit Shifting」(通称BEPS)と題する報告書が公表され、その手法や対応案など具体的な議論が始まっています。
 課税を少なくし、企業の誘致を図ろうとする動きは、国際的だけでなく、国内においても地方税の優遇等による企業誘致合戦が行われています。それがゆきすぎると、所得金額を低い税率のところに意図的に移転する動きや、所得額そのものを圧縮する操作を、多国籍企業等が行おうとするのを、国同士が協力して脱税等の予防・監視・摘発を行おうとする動きは、今後ますます盛んになるものと思われます。
 この問題に関心がある人は、2010年11月9日、政府税制調査会専門家委員会から公表されている「国際課税に関する論点整理」、税務大学タックスジャーナルの論説等をご参照ください。

渋谷桜ケ丘「税の図書館」編集員 免出

リンク先ファイルの説明

  • テキストリンクの末尾に何も印が無いものは外部リンクとなっており各々のホームページにジャンプします。
  • テキストリンクの末尾にicon_pdfがある場合はクリックするとPDFの閲覧若しくはダウンロードとなります。
  • テキストリンクの末尾にicon_docがある場合はクリックするとマイクロソフトワードの閲覧若しくはダウンロードとなります。
トピックスの目次
トピックス 英語
日本再生のための政策 :OECDの日本への提言(2012年4月)
20 カ国財務大臣・中央銀行総裁会議声明(仮訳)  
OECDの対日審査報告書2013年版(要旨)  
(全文)
中期財政フレーム(平成25 年度~平成27 年度)
平成24 年8 月31 日 閣 議 決 定
 
国際課税に関する論点整理
平成22 年11 月9 日税制調査会専門家委員会
 
OECDによるBEPS(税源の浸食および利益移転)への取り組み
OECDのレポート  
税務大学の仮訳(全文) OECDのRead
OECD閣僚理事会での(BEPS)宣言:2013年5月29-30日  
税務大学税大ジャーナル『論説』(新しい国際課税原則を構築する必要性)  
「税の図書館」の本棚への追加
表題  
財政制度等審議会
    答申・報告書等
財政健全化に向けた基本的考え方(平成25年5月27日)
財政の健全化に向けた考え方について(概要)
〔平成23年12月9日9公表の要約版)
※ 財政制度等審議会財政制度分科会において公表された「財政の健全化に向けた考え方について」(平成23年12月9日)の概要を事務局の責任においてとりまとめたもの
財政制度等審議会 財政制度分科会
海外調査報告書(平成21年6月)

Page Top