2014年1月16日更新

2014年1月15日更新

はじめに

あけましておめでとうございます。

念願だったホームページのリニューアルが実現しての最初の巻頭言となります。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

安倍ノミクスで始まり、アベノミクスで終わった平成25年でしたが、本年は、所得税の確定申告直後に消費税の8%への引き上げが予定されています。消費税の賦課が消費に与える影響は、生活必需物資等を除いては、駆け込み需要の増加等のためにどうしてもある程度は覚悟せざるを得ないところでしょうが、先の税率引き上げの時のように、消費全体へのマイナスの影響が大きくならないことを願いたいものです。

さて、当トピックスコーナーでは、引き続き主要国の税と財政に関する主要国の動向や、それらに関する専門家等の見解、研究機関等のレポート等をご紹介することとしていますが、当サイトの基本的なスタンスとしましては、特定の考えに縛られない自由・公正・中立な立場から、あくまでも皆様にわが国の税と財政について考ええていただく上で参考になると思われる情報等の提供を目指しております。

年頭に当たり、日本の税・財政の現状等を国民一人一人が十分に認識し、将来の世代に引き継ぐべき国家の在り方を、国民の目線で冷静に考えて頂く上でご参考になると思われるトピックスを幾つか用意しましたので、お読みいただけると幸いです。本年もよろしくお願いします。

 

最初のトピックスは、ワシントンポスト紙の古い記事ではありますが、選挙民への問題の投げかけとしてわが国にも参考になると思われるので、クリントン政権時の財務長官、オバマ大統領への2009年~2010年の経済顧問だった、ローレンス•サマーズ ハーバード大学教授の「政府を縮小しようとすることの現実性」と題したコラム記事を引用します。記事の中でサマーズ教授は、アメリカの大統領選挙での政党間での最大の争点は、政府の大きさ、すなわち経済全体の中での国家予算が占める割合をどうするか、云いかえれば、国の行政サービスをどこまでやるのかということだとして、国家財政の在り方を論じています。これまでのように大きくなりすぎた行政サービスの量を将来的には抑えるべきだとは頭ではわかっていても、実際にやろうとすると現実味がないという矛盾を述べられており、我が国を含めての先進国共通の財政赤字の問題をどう解決してゆくのかは、次世代の重要課題として残すしかないのではといっているようなのです。実際に同じようなことが、我が国でも行われ、問題は先送りされ続けられました。どこの国でも、政治経済の構造上、その問題は先送りされる仕組みとなっているようだとのご指摘のようなのです。私の印象では、その問題は、現在の金持ち対貧乏人の対立、および現在の選挙権を持っている国民対次世代の選挙権を持っている国民予備軍云いかえれば、老人対若者もしくは世代間の対立といえるようです。我が国の場合は、諸外国に存在する人種間の対立がない一方で、男女間の対立、および大都市と地方との対立が加わっているようなので、ことさら現状を変えることが難しくなっているような気がしてなりません。

 

トピックス2は、「会計検査研究」第46号(2012.9)巻頭言の中の 朗(学習院大学法学部教授)による「わが国における「行政改革」の限界」と題する記事を引用しました。其中で、わが国の行政改革では,これまで基本的に最終的な産物である行政サービスの質量は削減することなく,行政組織の統合再編や公務員の定数の削減によるスリム化,効率化を目指してきました。小さな組織,少ない公務員数でそれまでと同様のサービスを供給できるのであれば,それは望ましいことですが,それには限界があり,効果も限られているとされ、財政が多少悪化しても,まだ経済成長によって事態の改善が期待できる時代はともかく,今日のように財政が危機的な状態にあっては,財政の改善を図るには,サービス本体の必要性を見直さなければならないのではないだろうかとごもっともな指摘をされ、結論部分では、世代間の対立は、同世代内で,豊かな人たちからそうでない人たちへ,所得の再配分を行い,今後ますます増加すると予測される低所得の高齢者層を,同世代に属する比較的豊かな層が支えていくしかないのではないだろうかとされ、一定水準以上の所得や資産を有する人たちにも,「なくても我慢しうるもの」を給付してきたいわゆる過剰な給付を削減することができれば,限られた財源の節約ができることになるとされ、潜在的な「ムダ」を把握して,実施すべき政策の内容を,エビデンスを示して提言することが重要であることから、会計検査院には,このようなエビデンスの収集と発信を期待したいと結んでおられます。

 

トピックス3は、税と社会保障の一体改革の中で取り残されている、社会保障の世代間問題についての一橋大学経済研究所・日本総研共催の2013年2月19日開催された記者勉強会での「社会保障における世代間問題を考える」と題したシンポジュームでのパネルデスカッション部分を引用しました。世代間問題解決の難しさを「それを政治の場に持っていくと、絶対に賛成されない。投票に来るのはそれこそお年寄りであって、その人たちに不利になるような制度改革をしろよと言うわけですからね。頭ではわかるけど、それは大変だというので、世代間格差の問題を指摘しても、政治的なパワーにならないと思うんですよ、幾ら頑張ってもね。」といとも簡単に言い切っています。又、年金については、750 兆円ぐらいの債務があるが、その債務というのは、実は、これからもらう高齢者の人たちの純便益の総額に相当します。したがって、「年金給付カット等でその純便益を削減しない限り、その債務は変わらないことになるわけです。その際、この債務の償却をかなり短期的に特定の世代に集中して負担させるのがいまの賦課方式システムで、それがすごい世代間格差を発生させるのですけれども、この750 兆円の債務を100 年間ぐらいで償却するというふうになると、薄く将来にわたって償却するということになるので、こういったような世代間格差を改善する効果が出てくるということが、重要なポイントです。」といわれているのですが、それも要するに先送り以外の何物でもないような気がします。先にもらったものが得することに変わりはないような気がします。少子高齢化の我が国においては、先送りは原則的には許さないか、できるだけ同世代での収支バランスをとる方法を考えるしかないような気がします。そうすると給付についても、負担する同世代の金持ちのチェックが厳しくなり、ごね得やバラマキ給付の防止を助長するのではないかと思うのですがいかがでしょうか。

 

トピックス4は、日本総研:http://www.jri.co.jpの2013年9月24日付の「欧州の事例から読み解く消費増税の影響」と題する報告です。わが国では、消費税率の引き上げによる景気への悪影響が懸念されています。そのため、付加価値税率の引き上げが頻繁に行われている欧州の事例を踏まえ、わが国個人消費への影響が検討されています。

税率引き上げ後の実質個人消費の推移をみると、駆け込みがみられた国では、税率引き上げ直後こそ反動により消費が減少するものの、その後は緩やかに消費が持ち直していくのが通例。税率引き上げ後に消費が失速したのは、イタリア(11年)、スペイン(10年、12年)に限定。そこで、税率引き上げ前後の失業率をみると、消費が失速したケースでは、いずれも税率引き上げの約6ヵ月前から失業率が上昇。一方、それ以外のケースでは、失業率が低下ないしは横這い。雇用情勢が改善している限り、税率引き上げによる消費の失速は回避される可能性。

その結論部分では、

消費税率を予定通り引き上げるにあたっては、当面の対応策として、以下の施策の検討が必要であると考えられること;

(イ)駆け込み・反動の抑制に向けた住宅や自動車における税率引き上げ後の購入支援措置(住宅ローン減税拡充、自動車関連税の引き下げなど)

(ロ)大幅な物価上昇によるマイナス影響を緩和するための家計支援措置

(一時的な所得減税、給付金還付など)

さらに、中長期的に消費税率の一段の引き上げが避けられない状況下、税率引き上げによる消費の失速を回避するため、①デフレからの早期脱却、②軽減税率の導入に向けたインボイス導入、③小刻みな税率引き上げを可能にする外税方式の慣習化、等を図っていく必要がある、などの提案がなされています。10%への増税時点で軽減税率を採用するのかという問題では、逆進性の緩和・縮小策等も含めて、き目の細かな、かといって執行での複雑さの回避も必要などといった、効率性と実行可能性を考慮に入れた合理的な判断が必要であり、圧力団体等の要望だけに左右されない透明性の高いものにする必要があるでしょう。

 

トピックス5は、消費税での軽減税率の導入についてとの関連で、アメリカにおける租税法の第一人者であるマイケル·J·グレーツ教授の、アメリカにおける累進税率の消費税のコラム記事を、引用してみました。安定した税収の確保と徴税コストの削減ないし税務執行の簡素化の観点からの思い切った提案です。先進国の中でわが国とともに、消費税への依存度が低いアメリカでの議論には興味があるところです。

 

トピックス6では、先の更新のトピックスで扱った、アメリカの法人税の実効税率に影響を与えているいわゆる税支出(税の特別措置)の我が国における実情をまとめた研究報告が日本総研からなされていましたので引用させていただきました。そのまとめにおいて、「租特透明化法は、租特の抜本的見直しに向けて大きな一歩になるものである。租特の公表・報告という面でわが国のこれまでの取り組みは、諸外国と比べやや見劣りする感が否めなかったが、租特透明化法に基づく報告書の作成・公表により、企業向け租特とその適用状況を網羅的かつ正確に把握することができ、企業向け租特に関して客観的データに基づいた議論ができるようになった。この意味で租特透明化法の意義は非常に大きい。他方、今後に向けてさらなる課題や改善点もみえてきた。」とされています。

税法が、経済・財政の歳入確保以外での政策に利用されることはどの国でも行われているが、其透明性の確保と、目的達成の評価分析の公表が必要であり、それらの特別措置が、税法の適正性、公平性、明確性、簡素性に反することは明らかなので、乱用されることは戒められなければなりません。

 

渋谷桜ケ丘「税の図書館」編集員 免出

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トピックスの本棚

標題

ウェブサイト

O 政府を縮小することの現実性

ワシントンポスト紙の記事

英文

Small Gov.和文

O わが国における「行政改革」の限界

(学習院大学法学部教授)

会計検査院のサイトPDF

 

 

和文

O 『社会保障における世代間問題を考える』

パネルディスカッション

日本総研のサイトPDF

 

 

和文

O 欧州の事例から読み解く消費増税の影響

日本総研のサイトPDF

 

 

和文

O 歳入確保をしない付加価値税か貧者への課税強化しない付加価値税か

 付加価値税はすべての側面を包含することができます

税制センター〔Tax   Voxのブログ〕より

 

gnom.esのサイトより

英文

 

英文

progressive vat和文

 

value-added-tax-plan-all-sid和文es

 

O 租税特別措置の実態と分析

租特による減収額は国・地方で最大1.2 兆円

 

日本総研のサイトよりPDF

 

和文

追加図書

トピックスに関連する文献等

消費税率引き上げを巡る5つの論点

日本総研の研究論文

消費税率引き上げを巡る5つの論点(PDF:603KB)                                                                         

【税・社会保障改革シリーズ No.14】社会保障制度改革国民会議報告書のポイントと評価

西沢和彦

【税・社会保障改革シリーズ No.14】社会保障制度改革国民会議報告書のポイントと評価(PDF:911KB)        

【次世代の国づくり】財政再建にどう取り組むか-河村小百合

【次世代の国づくり】財政再建にどう取り組むか-国内外の重債務国の歴史的経験を踏まえたわが国財政の立ち位置と、中期財政計画の課題(PDF:966KB)        

『社会保障における世代間問題を考える』

「世代間問題の視点」 西沢和彦

【一橋大学経済研究所・日本総研共催 記者勉強会 2013年2月19日開催】社会保障における世代間問題を考える

高齢化対応、国・都任せでは困難―住民に身近な市区町村の役割大

http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=1200

東京財団のサイトより

論文: 会計検査研究No.422010.9

給付つき税額控除による所得保障

http://www.jbaudit.go.jp/effort/study/mag/pdf/j42d02.pdf

 

 

 

 

 

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